レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

Zan! Zendegi! Azadi! Jin! Jiyan! Azadi! 女性! 命! 自由!

2022-10-15 23:08:09 | 日記
こんにちは/こんばんは。




マサ・アミニさん
Myndin er ue Cpt.org


十月半ばを迎えて、こちらでは冬支度が加速してきました。北部ではすでにかなりの降雪があったところもあります。レイキャビク界隈でも、木曜日の朝にかなりの路面の凍結が見られたこともあり、金曜日の早朝に「警察はスパイクタイヤの使用を許可した」とのニュースが流れました。

本来はスパイクタイヤの使用は十一月になってからとされていますが、天候は人為的にはコントロールできないので、多少の裁量の余地が警察に与えられています。

私も「いつ、替えるか?」と時期を伺っていたのですが、行きつけのガスステーションのネット予約を先日覗いたところ、まだ予約はガラガラ。「さすがに早すぎるかー?」と思ってのんびり構えてしまいました。

金曜のニュースを見て「よし」と思い、予約しようと思ったのですが、なんと... すでに向こう十日間はいっぱい。26日まで待たなくてはならなくなりました。やられた... 油断してしまいました。

さて、ここ一ヶ月間ほど結構忙しくしていました。その主な理由は「イラン」です。

日本での報道がどのくらいのものかよくわからないのですが、今、イランは大変なことになっています。




Woman! Life! Freedom!
Myndin er ur Thearabweekly.com


9月の13日にマサ・アミニさんという女性がイランの風紀警察(Morality police)に逮捕され連行されました。アミニさんが、イスラム法で女性に着用が義務付けられている「ヒジャブ」という頭を覆うスカーフをきちんと着用しておらず、僅かに髪の毛が露呈していた、というのが逮捕の理由でした。

その後、アミニさんは警察に拘束中に昏睡状態になり、後に死亡が確認されました。警察は「病死」と発表しましたが、遺体には頭部等への殴打の跡が確認され、警察の暴力によって死亡したものと推測されました。

このニュースを発端として首都テヘランで抗議デモが持たれるようになると、またたく間に抗議活動がイラン全土に飛び火していきました。実際にはイラン全土というよりは、北米やヨーロッパにまで飛び火したのです。

なぜ、そんなに急速に、かつ世界的な規模で抗議が活性化したかというと、それまでの抑圧と暴力、支配等の溜まりに溜まった怒りがイランの一般人の人たちの中にあるからなのです。

アミニさんの事件は、もちろんそれだけでも十分に深刻な事件です。ですが、今回の場合、それは火をつけたスパークのようなもので、より大きな「油」に引火したのです。

アイスランドでも、これのニュースは報道されています。ですが、ネット等で周囲の様子を伺ってみると、やはり英国や、ドイツ、カナダ、アメリカのような国よりは控えめな印象を受けます。

当然でしょうが、カナダのようにイラン系の住民が多い国では、より大きなニュースとなりますし、また抗議活動も盛んになります。




BBC Japanのニュース 犠牲者の人たち
Myndin er ur bbc.com


アイスランドには2021年1月1日の時点で、176人のイラン人が在住しています。ここには、すでにアイスランド国籍を取得した人は含まれていません。純粋な「イラン人」だけです。

振り返って2015年の時点では在住したイラン人総数はわずか29人でした。七年間で約八倍ですか。かなり急な増加だといって良いでしょう。2015年という年を挙げてみたのは、この年が私が「難民の人と共にする祈りの会」を始めた時であり、この会を通して私自身多くのイランの人と知り合うようになったからです。

以前にも何回か触れたことがありますが、現在私と同僚のアニー牧師が責任を持っている英語の礼拝には多くのイラン人が参加しています。全体の半数強がイランからの人たちなのです。そして、そのほとんどが難民としてやってきた人たちで、私とのお付き合いは、彼らが難民認定を受ける以前から始まっています。

その事実からも推測されるように、ここで増えているイラン人の相当数が「国を逃れて」やってきた人たちであるわけです。つまり、もとより現在のイラン政権と摩擦(あるいはそれ以上の衝突)があった人たちであるわけです。

ですから、今回のような報を受けてこの人たちの怒り、憂に火がつくのは自然なことで、こちらでも抗議集会が何度か開かれました。これからも開かれるでしょう。

ちょっと話しがズレますが、個人的には「抗議集会」というよりは「連帯のための集会」「アピール集会」と呼んだ方が正しいような気がします。だって、抗議している相手がここにいないのですから。

政府の難民への不当な扱いを抗議する時は法務省前で集まりますし、ロシアのウクライナ侵略に反対する時にはロシア大使館前に出向きます。だからそれらは「抗議」なんでしょうが、ここにはイラン大使館も領事館もないのです。




9月23日夕方の集会より


まあ、それは些細なこと。マサ・アミニさんの事件を機にしての初めての集会は9月の24日に持たれました。首相府の100メートル横並び先にあるMR:レイキャビク高校 (*実際は高校と短大の中間)前に、午後4時に参集。

あまり上手に告知されていなかったので、集まったのはイランの人たちを主体にして40人くらいだったでしょうか。50人いたかな?集まった人たちの三分の一くらいは見知った顔でした。

三、四十分シュプレヒコールとかを繰り返したり、いくつかの短いスピーチ。Zan! Zendegi! Azadi! ザーン! ゼンダギ! アジディ! 「女性! 命! 自由!」というフレーズと、Say her name! Mahsa Amini! 「彼女の名前は?マサ・アミニ!」というシュプレヒコールが、この抗議活動では世界的に使われています。

ちなみに、Zan, Zendagi, Azadiはペルシャ語(Farsi)。亡くなったアミニさんは実際はクルド人だったので、クルド語でのJin! Jiyan! Azadi! もよく使われます。




Jin! Jiyan! Azadi!
Myndin er ur Wikipedia.org


その後、高校前を出発して、ダウンタウンの目貫通りをマーチングして国会前のオイストゥルヴァットゥラー「東広場」という国会正面の広場へ。ここは「抗議集会の聖地」です。

歩いていて驚いたのは、普段はどちらかというとシャイであまり大声でモノを言わないような人たちが、大声でシュプレヒコールを「自発的に」始めたり、物怖じしない態度を見せたことです。通りをいく人たちの目線も気にしない。人って奥深い...

この日は土曜日だったのですが、日曜を挟んで、月曜日の午前中と夜にも東広場で集会が持たれました。夜の集会は、亡くなったアミニさんを偲ぶために多くのキャンドル(外用の仕様のもの)が灯され、しんみりとしたムード。

あいにく、風と雨が強まってきて、ものすごく寒くなってしまい、ちょっと早めに一時間強で散会となりました。




9月26日夜の集会より


で、これらの集会の準備・アナウンスの様子から実際に運営する様を側から見ていました。イラン人主体でやっているわけですが、あまり慣れていないというか、まとまりきれていないところが多々見受けらたのです。

これがNO Borders(アクティブな難民支援団体)のような「抗議のプロ」だったら、もっと手際良くできたのでしょうが、ある意味「アマチュア」の集まりのようで仕方ありません。

さらに新聞やニュースでの報道の中で「私たち(在アのイラン人)は、アイスランドのオソリティともっと話し合いたい」とか語られていました。集会をオルガナイズしているイラン人の多くが、まだそれほど長くここに住んではいない人たちなので、ここでの「人脈」ができ上がっていないのでしょう。

「だったら、その点ではサポートできるかもしれない」と思い、彼らの希望を確認した上で、いくつかの政党の国会議員の人たちと話し合いの場をセッティングしてあげることにしました。

それやこれやで、結構忙しくなったわけですが、ちょっと長くなってきたので今回はここまでとしておきます。次回、もう少しシェアさせていただきたいと思います。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki

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2 コメント

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Unknown (kuwasan)
2022-10-19 19:51:12
ヒジャブの話、東京でも抗議が広がっているという話を新聞で見ましたが、まだ実感はありません。私の参加している日本語学習会にはイラン・アフガニスタン・インドネシア・マレーシアやエジプトの人が来ていますがヒジャブを付けた人が多いです。強制かどうかがこの問題のポイントかなとも思うのですが。いずれにせよ、続報、気になって待っています。
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ブログ当事者 (Toshiki Toma)
2022-10-22 02:10:17
kuwasanさん、

いつもコメントありがとうございます。
イランの場合は、ヒジャブだけの問題ではなく、ずっと根の深い問題につながっています。そのことを巡って、新しい回を更新しました。
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