レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド・日本 シンポジウム 完結編

2014-03-09 05:00:00 | 日記
先月の二十五日にアイスランド大学で開催された「アイスランド・日本 シンポジウム」の完結編です。

前にも書きましたように、このシンポジウムはアイスランド留学の経験がある四人の日本の大学院生が自主的なイニシアティブを取って企画運営されました。

今回はその四人組のプレゼンテーションの中で最後に残っていたA子さんの発表を元ネタにして書いてみたいと思います。

A子さんの扱ったトピックは「バイリンガルの言葉に関する自意識」と言うようなものでした。ここでは主に英語・日本語のバイリンガルの人についてのリサーチを基にした考察でした。

実はA子さん自身もバイリンガルで、英語を母国語のように操ります。そして現在も東京のあるインターナショナル・スクールで教えていますので、まさしくバイリンガル関係はライフワークなんだろうな、という感があります。

A子さんは以前自身が行ったリサーチからふたり分のサンプルを紹介してくれました。ひとりは二十八歳の女性(花子さんとしましょう)で両親とも日本人で日本育ちなのですが、インターナショナル・スクールで英語を学んだ方。もうひとりはやはり二十八歳の男性(太郎さんとしましょう)でこれも両親とも日本人ですが、現在は米国に住んでいる方。

花子さんは自分の言葉に関して「日本語が母国語。英語はツール」という考えを持っているのだそうです。が、周囲から見る目は本人の意識とは少しズレがあります。英語が優れている分、花子さんは多少日本語でミスをすることがあるそうです。そうすると周囲の目は「英語は素晴らしい。でも日本語が劣る」というものになってしまうのだそうです。

それに対して米国在住の太郎さんに関しては「アメリカに住んでいるにも関わらず素晴らしい日本語をしゃべる」という評価になるのだそうです。おふたりの日本語力と英語力は同等と理解しましたので、いかに第三者が当人の能力ではなく、自分たちが納得するような評価を導き出すかが示されていると思います。

実はこのギャップ、深刻なアイデンティティ・クライシスにまで発展することもあります。いわゆる「ハーフ」の人や移民の第二世代などはバイリンガルなことが多いわけですが、ふたつの言語を甲乙つけがたくネイティブ並みに取得することはそう容易くはありません。

バイリンガル教育の苦労話しブログはこちら


A子さんのレクチャーでもバイリンガルを代表するふたつのタイプは「バランス良いバイリンガル」と「一方が優越的なバイリンガル」なのだそうです。まあ普通に考えれば「一方が優越的なバイリンガル」というのが多いのだろうな、という感じはしますよね。

私の子供たちふたりもバイリンガルですが、やはりアイスランド語の方が勝っていると思います。(日本語は漢字の読み書きという壁がかなり高いです)

私の見てきた範囲では母国語の能力とその国に帰属する意識とはかなり強く結びついています。ですがもちろん外国暮らしで母国語の能力がそこそこくらいであっても帰属意識は強く持っていることだってあります。

それなのに周囲から例えば「日本人なんだったら日本語をちゃんと話しなさい」的な要求を突きつけられ、結果「あなたは日本人度が低いですね」みたいな評価を受ける人も実際に多くいるのです。

A子さんの示してくれたバイリンガルのパターンの中には「双方の言葉が不完全」というものもありました。残念ながらこのパターンの例もアイスランドには存在しています。それはまた機会を改めて書いてみたいと思います。

A子さんのプレゼンテーションでは触れられませんでしたが、話す言葉によって性格が変わることもあるような気がします。神学校時代の同級生に英語がものすごく達者な人がいましたが、彼が「英語で話していると性格が変わるのが分かる」と言っていました。英語の場合にはジェスチャーが大きくなって普段より積極的になる、というようなことだったと思います。

このA子さんも普段はどちらかというとシャイであまり前に出てくるタイプには見えないのですが、英語でのシンポジウムの最中はがらりと変わって「できる女性」に変身していた気がします。いや、「変身」というのは偏見だな。どちらも本当のA子さんなのでしょう。

さてアイスランド・日本 シンポジウムですが、この一回で終わりにしようとわけではなく、二回目、三回目と続けたい、というのが四人組の希望のようです。しかもアイスランド、日本と開催地を相互にしたいとか。それを実現するには後に続く人が必要となるでしょう。

是非ともこのような、単なる趣味の延長でない「相互関係」が日本とアイスランドの若い世代の間で盛んになって欲しいものです。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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