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レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド人と移民、ヨーロッパ市民

2021-04-18 00:00:00 | 日記
こんにちは/こんばんは。




これはNOTマグマ 清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Alexander_Milo@Unsplash


まず、書く方も飽きてきたマグマの続報を一言。先週、新たに四カ所かそれ以上の噴出口ができました。写真で見ると、もう、そこら中からマグマが噴き出している様相となりました。

噴出以前より「この地域がマグマが地表近くまで上昇しているエリア」というものが示されていたのですが、その中のいたるところでマグマが噴き出している、ということのようです。

観光に来る人たちが多かったことから、レスキュー隊が常時駐在するようになっていたのですが、さすがに24/7というのは難しいので、有毒ガスの濃淡や風向きによっての規制とは別に、レスキュー隊らの休息のために「今日は入山禁止」という日が設けられていました。

ですが、この週末前にルールとして「午前零時から正午まではレスキュー隊は駐在しない」ということになったようです。つまり、この間の時間に行く人はすべて自己責任となります。

毒ガスの燻製になっても、マグマに落ちて溶けてしまっても、誰も助けには来ないよ、ということですね。まあ、マグマの流れに落ちたら、どのみち助かる可能性はないでしょうが。

このマグマ活動、「年単位の活動となる可能性が高い」ということですので、焦らずとも、皆さんも直にご覧になれる可能性はあると思います。コロナ次第ですね。




最近のマグマ地帯 多少「地獄」感アップ?
Myndin er ur Visir.is/VILHELM


さて、この辺でマグマは切り上げ、中途半端になってしまっていたアイスランド語と移民のお話しを再開したいと思います。

アイスランド語についてもう一度考える - 就活の必須事項?

アイスランドではアイスランド語を話す「原則」


今回は自分の考えを少し書いてみたいと思います。私自身、この国での生活が来年で満三十年になる「外国人」ですので、アイスランド語というものを考える機会は嫌というほど与えられてきました。

読み書きはわりと得意になっていたのですが、苦手だった会話も、今ではそんなに構えなくともアイスランド語でできるようになりました。それでもペラペラからは程遠いですね。おそらく「ペラペラ」になることは一生ないだろう、と感じています。

で、このトピックに関しましては何度も触れてきましたので、ある程度、前に書いたことと重複する部分は出てきますがご容赦ください。

アイスランドは「超」小国ですので、非常に強い自意識を持っています。それは逆にいうとコンプレックスでもあります。アイスランド語という言語は、その自意識を保つためのキーポイントになっています。

アイスランド語というものが、この国から消えてしまえば、ここは単に「ヨーロッパにいくつもある島の中の、やや大き目のヤツ」になってしまいます。デンマークの属国となった1814年以降も、アイスランド語は維持され、1918年の主権回復、さらに44年の独立に向けては、アイスランド語への執着がアイスランド人の士気を鼓舞したと聞いています。

ですから、アイスランド人がアイスランド語に特別の愛着を持ち、「アイスランドがこの言語を維持していける社会」であることを強く望んでいることは理解できますし、私自身、特に反する気持ちがないどころか、むしろ賛同しています。

問題は、それが他者に対してのアイスランド語の強制や、アイスランド語が人の価値を測るメジャーと化してしまうことが多々あることなのです。

これはクラッシックな現象。この現象がスローガン化したのが「アイスランドではアイスランド語を話しなさい」というものといって良いと思います。このスローガンはアイスランドの移民に対するスローガンです。

実際には、英語で仕事をするアイスランド人や、英語で授業をする大学などもあるのですが、ここにはそういった状況は含まれていません。このスローガンは移民に対してだけのものなのです。




アイスランド語とは...? このように見えます
Efni myndarinnar er ur bok ,,Helkold sol" eftir Lilju Sigurdardottur


「あなたがこの国で暮らしたいのであれば、この国の言葉と文化を学びなさい。それがこの国と国民に対する尊敬の念ですよ」というようなことが、このスローガンに続くことが多いです。

「アイスランドではアイスランド語を話す『原則』」の回にご紹介した、アイスランド語教師の方の意見もこの線に沿っています。

私も、原則的はこの意見にも同調します。「原則的には」というのは、それが強制や差別の基にならないという限りで、ということです。

ですが、ここで顕著な時代の変化というものが存在しています。それは「移民とは誰か?」ということです。

私は移民です。きた当初から日本へ戻る予定はありませんでした。同じような理由で、ペルーや、あるいは南アフリカから移ってきた人も、自分自身を「移民」として自覚していることでしょう。

私のようなものは、古典的な意味での「移民」であり、そのような移民に対しては「アイスランド語を学んだほうがいいよ」というのは正しいアドバイスだと思います。

「皆が」というつもりはありませんが、古典的な意味での移民の意識のある人の多くは、成果はともかくとして、アイスランド語の学習には取り組んでいると推察しています。移住するからには、ここに住むつもりできているのですから。

ところがです。2005年くらいだったと思うのですが、ヨーロッパ経済領域の「加盟国間での労働者の往来の自由」のルールが、アイスランドでも発効しました。多くの労働者が欧州の他の国々からやってくるようになり、移民労働者数が急増したのです。

その直後の2008年に経済恐慌があり混乱したのですが、経済が持ち直し始めた2012年くらい以降、また欧州からの労働者の流れが加速します。

問題はですねえ、これらの欧州からの労働者は古典的な意味での「移民」ではないということなのです。彼らは仕事をして、お金を稼ぐために来ているのであり、仕事がなくなれば他の場所へ移っていかなければなりません。アイスランドに住むことが目的ではないのです。




ヨーロッパ経済領域 アイスランドとノルウェーはEU外からの加盟国
Myndin er ur en.wikipedia.org


ホワイトカラーの人たちについても同じことがいえます。彼らの中には「欧州人」としての意識が高い人が多く、アイスランドも、譬えていうなら、欧州鉄道沿線の中の単なるひとつの「駅」のように考えています。(譬えですよ。アイスランドには鉄道はありません) 面白いものがあれば滞在するし、嫌になれば移っていく。

もともと、EU自体が「欧州共同国家」の方針を持っていますので、これは当然のことといえば、当然のことです。

これらの、古典的な移民ではない外国人居住者の存在は、移民・外国人居住者とアイスランド語の関係についても変化をもたらしました。いつまで滞在するのかはっきりしない労働者の人に、時間を割いてアイスランド語の勉強をする気にならない人が多くなるのは当然でしょう。

また、アイスランドという国より、ヨーロッパという地域(共同体)への意識が強い人に、「アイスランド語なんて必要ないじゃない。英語やフランス語で十分。EUには公用語がありますから」という人が多くても不思議ではありません。さらに、ちょっと言い過ぎであることを承知して付け加えますと、アイスランドへの尊敬よりは「(ヨーロッパ)大陸の水準はもっと高いのよ」的な上から目線もあるように思われます。

こういう変化の中で、「アイスランドではアイスランド語を話しなさい」というスローガンそのものが「時代にそぐわなくなった」と言うつもりはありませんが、現在アイスランドで生活する外国籍者全員に一律に適用されうる原則ではなくなっていると考えます。

これは、この国に暮らしている「人間」という、言語の利用者にスポットを当てた際に指摘できることなのですが、最近のアイスランド語についての議論を見ても、(私の見た範囲では)ほとんど触れられていません。現地人であるアイスランド人一般は、いまだに昔の概念でしか外国人居住者を見ていないように、私には思われます。

ツーリズムやPCやスマホのアプリなど、まだまだアイスランド語の将来に影響を与えている他の要因もあります。が、長くなり過ぎますので、今回はこの辺でオシマイです。m(_ _)m


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Home Page: www.toma.is
Facebook: Toma Toshiki
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