レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

憎しみが勝つ.....ユーロビジョン?

2019-05-19 00:00:00 | 日記
レイキャビクでは、ここのところ暑い(暖かい)のか寒いのかよくわからないような天気が続いています。ドン曇り、または雨がぱらつく毎日なのですが、それでも気温的には10度11度あるようです。

問題はワタシの個人的な感覚では「寒い」感じてしまうことです。太陽が出ていないからだとは思いますが。それでも木曜日は午後になると急に「体感温度」も上昇し、庭でのバーベキュー(こちらではグリラGlillaといいます)が恋しくなりました。

さて、これを書いているのは5月17日の金曜日の夜なのですが、今のアイスランドには「ユーロビジョン」コンテスト「しか」ありません。ユーロビジョンは今週行われており、火曜日と木曜日に予選が持たれました。土曜日が本戦です。

「今回はいける!」という気持ちをアイスランド人は持っているようで、ニュースやラジオのトークなどもユーロビジョン一色の感があります。ただ、そこに至るまでには、多少の前史があります。




ユーロビジョン アイスランド代表ハータリ


今年の開催国はイスラエルです。テルアビブでの大会になります。昨年イスラエルのNettaという女性シンガーがToyという歌で優勝したのですが、その際に彼女が「来年はエルサレムで会いましょう」と発言。

それより半年ほど前、トランプ大統領が「エルサレムをイスラエルの首都と認め、米国大使館をエルサレムに移す」と発言して物議をかもしました。

その建国の経緯から、イスラエルは当地のパレスチナ人と周囲のイスラム教諸国との問題があります。現在も政治的には「東エルサレムはパレスチナ人の都市。そこをユダヤ人が占領している」とされ、そのため首都はテルアビブとなっています。

多くの国が大使館をエルサレムではなく、テルアビブに置いているのですが、「やりたい放題」のトランプ氏は、実際に昨年のユーロビジョンの予選が始まった5月14日に、米大使館をエルサレムに移しました。

その直後、5月18日に優勝したNettaさんが「来年はエルサレムで...」と言ったものですから、非常に多くの人たちの反感を買ってしまったわけです。「来年はエルサレムで」というのは、実際にはユダヤ人の間では合言葉のようなものであり、離散の民としての自分史の中から生まれてきたものです。

私はNettaさんが、この言葉を普通に挨拶言葉として言ったのか、政治的な意味を込めて言ったのかは知りません。

ここで、もうひとつ理解していただきたいことがあります。スカンジナヴィアでは、マスコミも一般人もパレスチナ人に対する同情心が強く、それがそのまま反イスラエル感情になっています。

確かにイスラエルの対パレスチナ政策や武力行使の中にはひどいものもあるのですが、建国以来周辺諸国は「イスラエル国家を破滅させる」と宣言し、さらに実際に行動を起こしてきたことも事実です。

一方的に「イスラエルは悪」とする考え方には私はついていけません。

それはともかく、昨年のNettaさんの優勝が決まり「来年はエルサレムで」の言葉が出てきた瞬間から、アイスランドではイスラエル批判の大洪水となりました。

「来年はアイスランドは参加を辞退すべきだ」「ユーロビジョンをボイコットしろ!」というような意見が非常に多かったと記憶しています。

そういう背景で出てきたのがHatariハータリという男の子三人のグループでした。パフォーマンスには女の子も加わっているようですが。Hatriとは英語のHater「憎む者」という意味です。

このバンドは「テクノ・パンクロック」に分類されるのだそうですが、バンド名から想像できるように、エキセントリックな連中でSMBDの衣装と小道具を使ってのパフォーマンスを披露します。




そして派手なパフォーマンス
Myndin er ur Visir.is


歌うのはHatrid mun sigraハートリズ・ムン・シグラ「憎しみが勝つ」というオリジナル。「憎しみが勝つ。喜びは終わる。そんなものは幻想に過ぎない」とかいう内容の歌です。

で、このハータリがアイスランド国内予選でこの歌のパフォーマンスをした時には多くの人がショックを受けたようです。「茶の間の子供達に悪い影響を与える」とか「歌詞が公序良俗に反する」だとか批判的な声がずいぶん聞かれました。が、すぐにものすごい賞賛へと変わりました。

私はユーロビジョンにはまったく関心がない人ですので、横目で見ていただけなのですが、国内予選は「ブッチギリ」で突破したと記憶しています。

で、どこかの時点でハータリはこの歌をイスラエルに対する批判として作った、とかなんとか言ったらしいのです。すみません、フォロアーでないので絶対とは言えませんが、なにかしら歌を政治的メッセージと結びつけることをしたようです。

ハータリは14日の火曜日の予選に出場、これを無事に突破しました。やはり相当各国の注目を浴びたようなのですが、同時にかなり高い評価を「各国の音楽批評家」から得ているようです。

というような流れの中で、アイスランドでは一挙に「憎しみが勝つ」ムードになってきました。多分明日の夜は路上から人影は消えることでしょう。

一年前「ユーロビジョン、ボイコット」を叫んでいた連中が、今、夢中になっている人たちです。すっごくアイスランド。

ちなみに、このハータリですがインタビュー等では「憎しみが勝ってはいけないんだ。愛が勝たなくては。だから連帯しなくては」とか語っていて「マトモ」です。「閣下」のようにキャラを貫いた方がいいんじゃないか、と思うんですけどね。

まあ、明日(土曜日)どうなりますやら。このブログは日本時間に合わせて、日曜日の午前零時にアップされます。こちらの時間ではまだ午後3時なので、ユーロビジョンはまだ始まっていない時間ですので、結果はまた改めて。




ユーロビジョンになぜイスラエルが...?


先に書きましたが、私はユーロビジョンには「まったく」興味がありませんので、ここ数年間見たことがありません。イスラエルのNettaさんが去年勝ったことを伝えましたが、名前もネットで調べなければ知りませんでしたし、その優勝した歌も一度も聞いたことがありません。

正直言いますと、ハータリの歌も今の今まで聞いたことがありませんでした。さすがにそれでブログを書くのは不道徳だろう、と思い、書きながら初めて聞いた次第です。

聞くに耐えないということはないけど、そんなにいい曲とも思いません。だから、そういうもんなんだよなー、ユーロビジョンは。

最後になりますが、ユーロビジョンEurovisionなのになぜイスラエルが参加しているのか?という至極当然の疑問を持たれる方もありましょう。その部分はご自分でグーグルで答えを探してみてくださいますよう。m(_ _)m


ユーロビジョン デンマーク優勝


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

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コメント (2)
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