レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

ランボーになりたい? アイスランド警察

2014-10-25 05:00:00 | 日記
現在アイスランドはちょっとした「ポリス・ショック」に見舞われています。ショックというよりは「スキャンダル」と言った方が正しいかもしれません。DV紙がこの21日に警察の銃器購入に関するスッパ抜き記事を掲載したのです。

このDV紙(ちなみにこの新聞の名前は家庭内暴力とは関係ありません)、かつては低級なスッパ抜きだけが売りの三流紙でしたが、最近では権力に物怖じしないで迫っていき、かつ自分の足で調べる、という優秀な記者を有するようになりました。私個人の評価では「プロのジャーナリズム精神を持つ唯一のアイスランドメディア」と呼ぶに価すると思っています。

さて、今回のスッパ抜きというのは「警察が『秘密裏に』150丁のマシンガンを含む銃器をノルウェー軍から購入している」というものでした。そして「アイスランドの警察の基本方針が1982年にSWATが設立されて以来の、大変換を目論んでいる」というものでした。

この銃器はMP5というドイツ製の短機関銃とオーストリア製のGlock17というセミオートマチックの短銃のようです。よく映画とかで見るやつですね。

このニュースにみんなビックリして、すぐさま国会の質疑にも取り上げられました。ポイントはみっつあるようです。

1:購入のためのお金はどこから出るのか? 2:なぜこれまでどこにも発表されない「秘密」だったのか? 3:この150丁の銃器をどのように使うつもりなのか?

お金に関してですが、予算法案の中では銃器の購入は「警察一般業務の支援」という項目に分類されるのだそうです。この項目は2013年度には約2億1千万クローナでしたが、翌年には5億2千万に飛び上がっています。来年度の予算案でも5億2千万をキープしています。

この増加は「一般機器の増補と警察官の訓練」という名目で説明されてきたようです。問題はここから150丁の代金が捻出される事になっているのか?それならなぜそうときちんと示されていなかったのか?ということになると思います。




アイスランド警察の新装備 MP5 撃たれませんように!
Myndin er ur Visir.is


アイスランドでは警察官も警察車両も普段は銃器を装備していません。SWATだけが出動する際に銃器を携帯していきます。もっともアイスランドのSWATはテロリストに対峙するのが役目ではなく、非武装の難民申請者のアパートのドアを蹴破って、わけがわからなくて怯える彼らの腕をネジあげていますが。

銃器による殺傷事件などはほとんどない国ですので、日常の警察業務で銃器が必要不可欠のようには思われません。実際に全国警察官協会の副代表のフリーマン・バルドゥルスソン氏の話によると、「武器にすぐ手が届くのは警察官としては安心なことだが、我々の協会が要求してきたのはスタンガン(電気銃)で、そちらの方が実際性があると思う」というような主旨のコメントをしています。これはうなずける気がします。

使い方に関しては警察関係者の間でも意見がまちまちなようです。一説では「警察車両の全部にこの短機関銃を装備する」とか、あるいは「いや、田舎の警察車両の全部だ」というものがあります。「田舎」を強調するのは田舎では、少ない警察官が散弾銃などを持った容疑者にすみやかに接触する必要があるからだそうです。これもわからなくはないですね。

さてスッパ抜きのあと、警察からはなんの公式の発表もありませんでしたが、翌日の晩に警察省の主任警察官ヨウン・ビャルマルツ氏がニュース後のインタビュー番組に登場し述べました。「150丁の銃器はノルウェー軍からの贈り物です。従って『警察業務一般の支援』から経費が捻出されたような書き方をしているDV紙の報道は全くの誤りです」

贈り物とはまたまたビックリです。さすがノルウェーは金持ちだ、と変な関心。

ところがです。翌日の国営放送のニュースでさらにビックリ。それはノルウェー軍のスポークスマンがアイスランド国営放送の質問に答えたもの。「ノルウェー軍は、アイスランドの国境警備隊に250丁の銃器を売却しました。売却代は約1千200万クローネ。契約は昨年12月17日にサインされました」

今度は国境警備隊です。どうやらくだんの150丁はこの250丁の中の「150」であるようです。しかしこの国境警備隊の銃器購入も全くの寝耳に水のニュース。なんか、アイスランドの警察関連がそのまんま「武器密売」カルテルになったかのような印象を与えています。

このニュース、多分これが集結ではなく、まだまだいろいろな「ヒミツ」が暴かれるような気がしています。

でも、こうなってくると何となく全体のイメージが湧いてきますね。テロ活動に対抗する武力を身につけようとしているのは明らかだと思います。おそらく予定されている警察官の訓練も対テロ用の訓練なのでしょう。

私自身は、別に警察や国境警備隊が火器を増強しても悪いことではないと考えます。これだけ周囲が物騒になっているのですから、最悪に備える、ということも必要なことだと思います。もちろん管理と使用については徹底した監督がないと困りますが。

それはそれ。問題は「秘密裏」にそういうことをしようとする態度です。この火器増強はDV紙が言うように「重大な警察ポリシーの変換」と呼んで間違いないでしょう。それなら、そうものとしてきちんと議論がなされてしかるべきです。議論なしで「オレたちは正しいんだ」という態度を警察権力が持ち始めること、これは良くないですね。ここはそういう国ではないはずです。


まだまだ凄い。国営放送の火山の英語情報はこちら。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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