レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランド・日本 シンポジウム 続編

2014-03-03 05:00:00 | 日記
二月二十五日にアイスランド大学で開催された「アイスランド・日本 シンポジウム」の続きです。学生主体のシンポジウムで、日本からは昨春までこちらに留学していた四人の日本人大学院生が中心となって企画運営されました。

それぞれの専攻が違いますので、当然のことながらひとつのテーマを巡ってのシンポジウムではなく、トピックは様々なものになりました。「アイスランドと日本の類似性と違い」のようなものがざっくりとしたテーマだったといえます。それがむしろ良い意味での多様性になって面白かったと思います。

さて三人目はオタクのようなオーラを発しているけど実は熱血塾教師もしているY君です。彼の専攻は北欧語で、その中でも特にスウェーデン語とアイスランド語のようです。

彼の選んだテーマは北欧語に共通して見られる「クンナ」Kunnaという言葉の用法でした。これは平たく言ってしまうと英語のCanと同じで「―できる」という話法の助動詞です。

で、スェーデン語、ノルウェー語またはデンマーク語ではこのkunnaはほとんど英語のcanと同じように使われます。Kunnaには直後に本動詞の不定形が続き「することができる」「見れる」のように可能の意味を与えるわけです。

ところがです。なぜかアイスランド語ではこのkuuna君の用法は非常に限られており、「英語ができる」「車の修理ができる」のように学んで習得した知識や技能を使って「何かをすることができる」という意味合いに限られています。また後続する本動詞も不定形ではなく、不定詞(つまり英語のtoに当たるad付き)になります。

その他一般の意味での可能を示す場合にはアイスランド語では「ゲータ」Getaという言葉を用います。この言葉はですから年がら年中でてきます。このgetaの特徴は本動詞の不定形ではなくて完了形が続くことです。ですから不規則動詞の場合などはきちんとその完了形を覚えていなくてはならず、これはかなり面倒くさいことがあります。

Y君が示してくれた用例では例えば「ヨウンは車の運転ができる(kunna)が、今は足を怪我しているのでできない(geta ekki: ekki=not)」というようなものがありました。これは分かりやすい例文ですよね。やり方は習得している(kunna)のだが、今は事実としてでき(geta)ない、ということです。

これ、ワタシ的にはとても面白いトピックでした。アイスランド語は北欧語の原型を一番そのままの形で残している言語です。スェーデン語やデンマーク語はそこからどんどん現代的な形へ発展していっています。

ですから、getaという言葉ももともと北欧語の中に存在したのだろうと思うのですが(ただ確証はありません)、それではスウェーデン語やノルウェー語ではgetaはどこへ行ってしまったのでしょうか?それになんでgetaは後ろに完了形を伴うという面倒くさい道を選んだのでしょうか?

ウーン、答えが分かっても大勢には影響ないのですがなんか気になる。熱血Y君がY教授になる頃までにはきっと答えを見つけてくれていることだろうと期待しています。(自分で調べろ!...か?(^-^; )

Y君の発表を聴いていて思ったのですが、彼はわざわざ日本からやって来てアイスランド語の勉強をしていました。帰国してからもまだしています。おそらくY君にとってはアイスランド滞在中の日々は非常に貴重なものだったのでしょう。研究の素材が限りなくあるわけですから。

それに比べるとこちらに在留組の私たちはどうも学習の機会をむざむざと見逃しているというか、敬遠しているというか...毎日接している言葉について日本からのゲストに教えてもらうのはチョト カッコワリー!かな?(恥)

オタクだの熱血塾教師だのいろいろ書きましたが、Y君気を悪くしないでください。m(_ _)m 何年か後にはちゃんと「先生」と呼ばせていただきますので。しっかりと研究を続けられることを願っていますよ。

最後のひとりはバイリンガルの意識について扱ったA子さんなのですが、これも関心のあるトピックだったので、続けて書くと長くなり過ぎそうです。次々回に改めて書かせていただきたいと思います。よろしく。


応援します、若い力。Meet Iceland


藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
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コメント
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