注文しておいた本が届いた。
ギュスタブ・モローを特集した美術本だ。
モローは、神秘主義を貫いた画家で、謎も多い。
人と関わらず、生涯独身で過ごした。
今回、どうしても手に取って見たかったのが、「妖精とグリフォン」だ(下)。
この美しい女性像の顔をしっかり見たかった。
手に黄金の木を持ち、類まれなる努力によって道を究めた人間を祝福する妖精で、
その彼女を、幾匹ものグリフォンが守っているという絵である。
モローは、この作品をどこにも出展せず、生涯、手放すことがなかった。
画家が道を究めようとすると、どうしても孤独になりがちで、
先に載せた江戸時代の絵師、伊藤若冲も、妻を娶らなかった。
モローに関しては、結婚こそしなかったが、ちゃんと愛する女性がいたようで、
そのまなざしが、この「妖精とグリフォン」の女性像と似ているとも言われる。
どの世界においても、道を究めるには困難や苦難を伴うが、
生涯を通じて、一つの道に精進するというのは、並大抵ではできないと思う。
ギュスタブ・モローの魂の半分は、すでに向こうの世界にあったのかもしれない。
「火星シリーズ」の武部本一郎さんなどが、モローの影響を受けたのではないだろうかと思った。