疾風の如く!

美人画と弓道に生きる日々。

月夜の尺八。

2012年07月03日 | Weblog



昨日、夜7時半ごろ、多摩川に弓を持って行き、

「素引き」をしていたら、なにやら、凄くいい音色が聴こえてきた。

(素引きとは、矢をつがえずに引くことである)



なんという澄み切った美しい音色だろうか・・。

それでいて、どこか物悲しく、心の琴線に触れる冴えわたった音色だ。





横笛だろうか・・?

いや、これは・・・もしかしたら・・


そっと、音のする方向へ歩いていくと、川べりで尺八を吹いてる人がいた。


この音色は、尺八だったのか!!!

この美しく冴えた、幽玄さえ感じる音色は・・・!!!!



その音に耳を澄ませながら、俺は「素引き」をゆっくり繰り返した。

月が、雲間に朧(おぼろ)に輝き、とても不思議な気持ちで素引きをした。



たまたま散歩に来た人がいたら、この光景をいったいどう思っただろう?

一人が尺八を、いくらか離れたところで、一人が弓を引いているのだ(笑)。






そういえば、俺に初めて弓道を指導してくださったY先生は、

その庵に、尺八がたくさんあって、目の前で演奏してくださった。

当時、まだ青年だった俺は、「なんか不思議な楽器だなあ~」くらいに思っていたが、

上京してから、指導を受けたT先生が、しばらくすると、これまた、尺八を習い始めた。




なんでか知らないが、俺の弓の師匠は、皆「尺八」を奏でる。

まったく奇遇というか、不思議な縁がある楽器というか・・。


弓も、竹で出来ているが、尺八も竹で出来ている。

なにか、日本人の心に共鳴するものがあるのかもしれない。




昨日の夜は、月明かりの中で、その音色の美しさに、心が安らいでいた。

遠くはるかに過ぎ去り、いつしか失ってしまった世界が、また見えてきそうな感じ・・。

はるかに失ってしまったもの・・・・捉えきることのできないもの。

尺八の音色から感じとれるあの不思議な感覚はなんだろうか・・・・。




俺は、弓を引くときに、弦音を非常に重視しているが、

尺八のあの音色も、なかなかに俺の心をゆさぶるものがあるのだった。








コメント (2)
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