“昼寝”って本当は体に(頭にも)良いそうですが、怠け者の代名詞みたいにも言われますよね。“三食昼寝付き” なんてよく聞きますが…、あこがれませんか(笑)。
ゴールデンウィーク、何も高級リゾート地のビーチじゃなくても良いから、のんびり寝転がって好きな本でも読んでいたい、と思ったりしますね。しませんか(笑)。
本書の筆者は1935年生まれ、中央大学文学部の教授で、本書は、“熊本日日新聞” に連載された随筆集ですが、書名が表わすように、午睡のあとのふんわりした雰囲気で書かれています。
あとがきによると本を読みながら午睡、午睡の合間に読書という生活にあこがれてきたそうです。やっぱり(笑)。そういう時の読書に求めているのは束の間のタイムスリップだと。そうかもしれませんね。
というわけで、エッセイなのですが、そのほとんどが本を題材にしており、書評集というとちょっとイメージが違うのですが、なかなかおもいろい一冊です。
例えば、「カフカと荷風」 というところでは…、カフカの『 変身 』を取り上げて、まとめると以下のようなことです。
ドイツ文学を教えている立場上、退潮著しいドイツ文学でカフカのみが20世紀ベストテンの小説に選ばれたりするのは、ありがたい気がするし、『変身』 は生徒必読だけれども、“おもしろいから読め” とはどうしても言えない。
カフカを読んだあとは口直しに永井荷風を読むように薦めたりする。突飛な組み合わせのようだが、両方とも成功した実業家の父がいて、それに疎まれた息子で、孤独な人生を送っているし、同年代であり、荷風は5年もフランス、アメリカにいた。
近代人としての意識もあっただろうから、似たような物を書いても良さそうだけど、読後感はまったく違う。『変身』をおもしろく読める人というのはその人自身が不幸かもしれない、
などと勝手なことをおっしゃっております(笑)。つまり、書評というより話のタネ(ネタ)にしているのですね。他にも、このブログで取り上げたものでは、夏目漱石の『こころ』 『三四郎』、 また『大江戸シリーズ』 そしてカミュの『異邦人』などについて。
老子、平家物語、などの古典から、千と千尋の神隠し、イチローインタビュー、武田邦彦というようなものまでたくさんの本が取り上げられています。
帯にもあるように豊穣なる書物の世界が、ゆっくりとしたリズムで語られています。本を読んで感じたことが、同じだと思ったものもあり、そのことも親しみがわいた一因でしょう。また、本書の中から気になって読んでみたものも数冊あります。
一つのコラムがたった2ページで、最初は寝る前に2,3個ずつコラムを読んでいましたが、半分くらいからは続きが読みたくて一気に読んでしまいました。その優しい語り口の中にも、日本や日本の教育に対する危機感もにじみ出ています。
以前にご紹介した 『この言葉』 も、本書に似た形で、すばらしい一冊でした。こういった、書物を紹介しながら自分の人生をかみ締めるように、本音でポツリポツリと語るような一冊は、繰り返し読みたくなります。
休日に読む最適の一冊ではないかと思っています(笑)。
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