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『三四郎』 夏目漱石

2007年01月05日 | 小説

 

三四郎.jpg

 

1月5日(旧暦)は夏目漱石の誕生日です。そこで、生徒たち特に高校生に読んでもらいたい一冊 『三四郎』 を取り上げます。


坊ちゃん』では、都会育ちの若者が田舎の学校へ移動しますが、それとは反対に、本書『三四郎』では、田舎の高校生が大都市東京の大学へ出てくる話です。

漱石自身は生まれも育ちも東京のエリートですから、“坊ちゃん”の方が自分にずっと近いはずで、自身の体験を元に軽快に表現した印象がありますが、三四郎は正岡子規 など、地方の出身者との交流の中で、想像力豊かに捕らえた世界なのでしょう。


そういえば 『「大人」がいない(清水義範)』に“坊ちゃん”のおもしろい読み方があります。よろしければご覧下さい。坊ちゃんも本書もどちらも私は好きですが、“田舎→都会”派の一人としては、三四郎の方が共感する部分がずっと多くあります。


主人公、小川三四郎は熊本から東京の大学に出てきたあと、自分とまわりを見渡して、非常に明確に自分の世界が三つにわかれていることを悟ります。

まず、自分が生まれ育ち、今もことあるごとに金を無心できる故郷の世界、二つ目はまさに学生の本分であるはずの学問の世界、そして最後に三四郎が最も惹かれてしまう、女性や大人たちの一見はなやかな世界。


本当は、きれいに三つに分けられるほど、人のかかわりは単純ではないし、実際にそれぞれの世界のどの典型的な登場人物も別の世界のできごとで重要な役割を果たしているわけですから、実はその三つがさらに複雑に絡み合って世の中というものができている。それが生きていくのを難しくしているところだという気がします。


1908年、今から100年も前、日露戦争が終わった頃に書かれたこの小説ですが、現代に至るまで、その間に信じがたいほどの技術革新や大きな戦争を経ていながらも、生活スタイルはまったく変わってしまったにもかかわらず、こと大学進学となると、日本のこの、田舎から都会に出るという構図、その者の心情はほとんど変わっていないことに気づかされ妙な驚きを感じます。


昨年のベストセラーの一冊、リリーフランキーの『東京タワー』でも、時代もストーリーもまったく異なりますが、東京にいて同じような、故郷、学問(仕事)、そして娯楽という3つの構図の統一されたシンボルが東京タワーのように感じます。


そういう意味ではあらすじだけを取れば、ありふれた小説だということもできるでしょうが、そもそも自分の人生も考え方も100年前とかわらぬ、ありふれたものだという認識から、もう一度、自分が何ができるか考えたい、そんな気にさせる作品だと思います。





P.S. 最近、本書に登場する野々宮のモデルが、あの寺田寅彦氏で、しかも寺田氏は漱石の弟子であったとはじめて知って意外に思い、正月に改めて読み直してみました。



P.S. 『こころ』 を取り上げた時にも申し上げたとおり、優れた専門家の書評が多数ありますので、それらをぜひ参考にしてみて下さい。また、『こころ』『三四郎』に限らず、漱石作品のほとんどが青空文庫で、無料で読めます。→ 『三四郎』 
    (少し読んでみてから判断してもいいですね)


 

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入試が目前に迫っている今年の受験生に、大学に入ることより、入った後が大切だと言っても、そんなことを考える余裕はないでしょうが、真実には違いありません。入試が終わって見事合格したあと、読んでみて下さい。で、年に一回しか使えないお願いですが、実は今日1月5日は私の誕生日。つたない文ですが、それに免じて、下のテキストバナーをクリックしていただけるとありがたいです(笑)。ずるい?

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『三四郎』夏目漱石
岩波書店:325P:420円

三四郎

岩波書店

詳細



私が持っているのはこちら。柄谷行人氏が解説を書いていますが、岩波の方が手に入りやすいようです。
『三四郎』夏目漱石
新潮社:P298:350円
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三四郎1.jpg

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おめでとうございます(^-^) (キムタツ)
2007-01-05 10:22:28
VIVAさん
Happy Birthday!最初のコメントが僕みたいなおっさんで恐縮ですが、夜は予定があるので1番に書き込ませていただきました。僕も月末に1つ年を取りますが、この暮れに「あと何回除夜の鐘を聞けるかなぁ」とポソっと呟くと、娘が「30回ぐらいちゃう?」と素で返事をしたので、頑張って生きようと思った木村です。お互い頑張りましょうや
Happy Birthday! (bucky)
2007-01-05 10:28:54
あれ、キムタツ先生に先を越された。まあ、おっさん(失礼!)でも、おばはんでも似たようなもんですが。
年頭から、きちんと記事が書かれていて相変わらず頭が下がります。こちらは、今年度のブログの方向性も熟考することなく、ナシクズシ的に継続して・・・コレダカライカンノデス。
今日から仕事です。
そちらは、まだ冬の講習最中ですね。頑張ってください。
VIVAさん (ysbee)
2007-01-05 11:14:19
30才おめでとうございまーす!(^_+)V
って何才でしたっけ、数段下に下がって確認しなくては。でも漱石という大文豪と同じ誕生日というのは、なにか運命を感じませんか?海外の文豪もこの日に多く生まれていたら、きっとアテナの星の元に生まれたんでしょうね。

実は三四郎には深い思い入れがあります。私の父はいわき市の漁村で生まれ家業は網元だったらしいのですが、たまたま成績が良かったので旧制水戸高、帝大と進み、その間水田三喜男とずーっと同じ下宿で親友だったそうです。
ま、そんなことはどうでもいいのですが、不肖の娘の私が北大を見事落っこちて某国立二期に入学する直前、落胆している私を旅行に連れ出し(当時父の赴任先の青森にいたので)東大界隈を案内してくれました。赤門前の絶品のカレー屋や、三四郎池、そして東大図書館の壮大な構内。卒業生だったから入れたと思うのですが、あの大伽藍のような建物から押し寄せてくるアカデミックな霊気 (?) は、それ以来「知」の力を最上位におくようになった私の価値観の土台になったと思います。父子で旅したのはあのときたった一回だけです。だいぶ後になってから、なんで父があの時私を連れ出してくれたのかがわかりました。

本から霊気を感じるのは私だけでしょうか?今でもどんな本でも捨てられない体質です。漱石からずいぶん横道にそれてしまいましたが、なぜかいつも過去の貴重な思い出をたどる糸口を差し出してくださるVIVAさんに合掌して感謝です。
(明治生まれの父はとうに亡き人ですが、年をとる毎にありがたみが増して行きます。「有り・難し」とはよく言ったものですね。)
キムタツ先生 (VIVA)
2007-01-05 12:13:15
先生恐縮です。メッセージありがとうございます。

まじで、あと30回くらいちゃう、ですね(笑)。もうちょっと欲しいか?でも、「30でも35でも変わらへん」なんて言われそうですが…。

それにしても…、クールな娘さん、親ごさんの教育でしょう、たくましく育っていらっしゃる。すばらしい。

そうですね、歳をとるたびに何かしようという気が沸いてきます。先生、きっこさん抜きましょう。

おっと、良い機会ですから…

ご覧になっている方、キムタツ先生のエッセー『頑張ってるから悩むねん』が今月発売されます。と同時にサイン会も開催されます。どうぞお出かけ下さい。VIVAのブログ見たと言えばきっと灘高ボールペンくらい…(笑)

http://juken.alc.co.jp/kimutatsu/archives/2007/01/post_453.html

↑ご覧下さい。

ありがとうございました。生徒たちのためにがんばりましょう。
buckyさん (VIVA)
2007-01-05 12:25:49
ちょっと、あ~た、いくら何でも“おばはん”って、それはやめましょうよ(笑)。つい噴出してしまいました。

そうですか、今日から仕事頑張って下さい!

Bucky Juniorが二日から、うちの息子は三日から、ボクが四日で、buckyさんが五日。みんな微妙にずれて動き出して、一年が始まったんだなぁ~と感じますね。

VIVAおじさんはですね(笑)、これから冬期講習を8日までやってそのまま3学期の授業に突入です。もう中学入試が始まりますし、センターもすぐそこ、気が抜けません。またゆっくりおじゃまします。

友情メッセージありがとうございました。今年もよろしくお願いします!
ysbeeさん (VIVA)
2007-01-05 12:45:23
あ・あ・ありがとうございます。30でいいか(笑)。

それにしても、帝大とか水田三喜男とか、ものすごい世界、激動の時代を生き抜いたお父上ですね。まさに三四郎で描かれているような世界の中に身を置いていらした…、いや~お会いしてお話を聞きたい!!!

ysbeeさんの記憶にもしっかり残っている、そのアカデミックで荘厳な雰囲気、今の大学にあるんでしょうかね。またいろいろ教えて下さいね。

私も本は捨てられないし、特に“三四郎”は好きなんですが、正直、ひょっとしたら、ちょっと古臭い本だという印象を与えないか心配だったのです。でも、良かった。こうして共感していただいたようなコメントをいただけて、飛び上がるほど喜んでいます。

こちらこそいつも貴重なメッセージと興味深い情報に感謝のしようもないほどです。ありがとうございました。

Unknown (milesta)
2007-01-05 15:52:06
私は『坊ちゃん』派です。東大やエリートからはほど遠く「親ゆずりのむてっぽう」だからだと思っていましたが、VIVAさんの記事を読んで、東京育ち・女性ということも大きいと気づきました。三四郎が感動したり驚いたりすることに、今ひとつ共感できないところがありました。・・・ということは、それぞれの立場の人の心理が良く書けているということですね。それから『坊ちゃん』の方は人物がデフォルメされている感がありますが、『三四郎』は現実的ですね。そこは『三四郎』の方が好きです。

野々宮さん=寺田寅彦なんですか!初めて知りました。それを踏まえてもう一度読んでみたくなりました。

それからVIVAさん、お誕生日なんですか?おめでとうございます。Hip,hip,hooray!!!
三四郎 (風)
2007-01-05 19:21:13
明けまして、おめでとうございます。
今年も、興味深く読ませていただきたいと思います。

私は昨年、思い立って何十年ぶりかで漱石を読み始めました。まずは「こころ」でした。前半が長くてつまらなかったなぁ、という印象しか残っていませんでしたが、Kに対する負い目(悔恨)が先生の心をここまで蝕んでいたのだなぁ、と改めて気づきました。
次は「三四郎」でした。続いて「それから」「門」と一気に読んでいくと、あんなに若々しく都会にデビュー(?)した三四郎が、だんだん意気消沈し、市井にまみれひっそりと暮らす(一連の続き物として読みました)様子に胸を打たれました。
ついでに石原千秋氏の漱石に関する評論も何冊か読んでみました。こちらも、とても興味深く読めました。研究者の仕事って凄い!と驚きました。

また『明暗』も読みましたが、その後水村美苗さんの『続明暗』も読んでみました。なるほど、漱石が生きていたらきっとこういう展開になったのだろう、と納得できました。

長くなりましたが、漱石、大いに広めてくださいね。
milestaさん (VIVA)
2007-01-05 20:26:32
そうですか、やっぱり坊ちゃんファンも多いですよね。私も好きですよ、生き生きした書き出しもいいですね。さすが都会派、むてっぽう?あれ、やっぱり、おて…あっいやいや。今年も早くもこの話題になってしまいました(笑)。

そうなんです。Birthdayです。もういらないんですが、こればっかりは…。ありがとうございます。

風さん (VIVA)
2007-01-05 20:31:15
おめでとうございます。仕事がご無事だったようで、何よりです。

そうですか、風さんもまとめて読まれたんですか。ボクも学校に行っている頃は、こころは読みましたが、他はそれほど読んだ記憶がありません。こんな大作家に対して、お恥ずかしいほどの書評しか書けないので、本当は避けたいのですが(笑)、生徒にはやっぱり読んで欲しいので、取り上げました。

今後も何か口実を見つけては、アップしてみようと思います。風さんが書いてTBして下さい!お願いします。
本当に・・・ (キムタツ)
2007-01-05 21:40:21
VIVAさん
いつもありがとうございます!1人でも多くの方に
読んでいただきたいのと、サイン会にも来ていただければ
嬉しいです。

よろしくお願いいたしますm(__)m

めでたい! (キャンキャン)
2007-01-05 22:12:17
お誕生日おめでとうございます。
いくつになってもお誕生日ってうれしいですよね。
健康に産んで育ててくださったお父様・お母様に感謝してくださいね。
漱石先生には良くお世話になりました。やっぱり「坊ちゃん」かな?愛媛に遊びに行ったときこんなに街全体が「坊ちゃん一色」とは…。ビックリしました。
はて、漱石先生が見たらなんておっしゃるかしら?
コメントありがとうございました (緑雨)
2007-01-06 00:09:10
TBさせていただいた緑雨です。
コメントまでいただいて、ありがとうございました。
でも、実は「はじめまして」では無いのです。
以前、三浦展の「下流社会」にTBいただき、こちらもカズオ・イシグロの記事にコメントさせていただいたことがあります(一年くらい前?)。
それ以来、時々訪問させていただいております。
精力的なエントリに感心しておる次第です。
また、寄らせていただきます。
緑雨さん (VIVA)
2007-01-06 07:32:13
こんにちは、あっそうでした。確認しました。
大変な失礼を申し上げました。お許し下さい。これに懲りず、時折お付き合いいただければ幸いです。本当に申し訳ありませんでした。
キムタツ先生 (VIVA)
2007-01-06 07:38:23
キムタツ先生はもちろん、履修漏れ問題にしても、テキスト・本作りにしても、まじめにやっておられる方が報われるためなら、喜んで協力させていただきます。

残念ながらいつも申し上げるように、本物の微力ですが…(笑)。サイン会のポスターかチラシか何かあれば送ってくださいね。
キャンキャンさん (VIVA)
2007-01-06 07:41:26
ありがとうございます。正直、ハッとしました。歳をとるから誕生日なんて…、っていうのは傲慢なんですね。また一年ここまで生きられたって感謝しなくちゃいけないんですね。

大切なことに気付かせていただきました。ありがとうございます。今年もいろいろ勉強させていただきます。

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