UTA.47「忘却の海から」
忘れものや失くしものを一面に浮かべた
僕の忘却の海が
周囲を覆ってゆくような気がする
気づけない間に海域は拡大を続け
少しづつ海面は競り上がって
何時しかに
全てを呑み込む怪物になる
始末が悪いのは、手に負えないのは
大切なものや愛しいものや
優しいものや切ないものや
柔らかなものや・・
無くしては哀しいものから連れ去ってゆくことだ
そうして気味が悪いのは
そのことが
僕の承認なしに
秘密裏に実行されてゆくことだ
軈て身の内に
誰でもが抱くしかない海原かも知れないけれど
umiに還る約束の身には
それは仕方がないと、薄々は感じているけれど
日毎夜毎に誘いの漣は寄せて来るけど
波音が優し過ぎて、忘却の使徒などとは
とても思えないのだけれど
吸引の唄のように
忘却の海からの
騒めく海潮音が絶え間なく聴こえる・・
01/27 06:48 万甫