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ポーラ美術館コレクション  モネからピカソ、シャガールへ展

2016-06-17 22:58:16 | Weblog
        
モネからピカソ、シャガールへ展が4月15日(金)-6月20日(日)まで島根県立美術館で開催されています。 
2002年に自然豊かな箱根仙石原に開館したポーラ美術館は国内屈指の充実した西洋絵画コレクションを誇る美術館です。
印象派のモネ、ルノワールをはじめ、ポスト印象派のセザンヌ、ゴッホ、そして20世紀絵画を代表するピカソ、シャガールまで
選りすぐりの作品71点が展示されています。箱根のポーラ美術館は訪れたことがあり親しみを感じ、県立美術館には
1回目は知人と2回目は図録を読んで気にいった作品をじっくりと鑑賞してきました。

展示作品

1.印象派の誕生:モネとルノワール
クロード・モネ(1840年―1926年)
《ジヴェルニーの積みわら》1884年 油彩/カンヴァス 66,1×81,3㎝
モネの「積みわら」の連作は人気がありますが、この作品はその前に積みわら風景を8点描いているうちの一つです。
日常の風景を観たままに描かれて積みわらは山型です。明るい色彩や強いコントラストによる光が印象的です。

《睡蓮》1907年 油彩/カンヴァス93,3×89,2㎝
印象派のモネは、パリの生活の後、郊外の村ジヴェルニーに居を構え、壮麗な庭園を造りあげていきました。
造成した池に浮かぶ睡蓮を描いた作品は200点を超え、彼の後半生の最も重要なモチーフになりました。
この作品は睡蓮が浮かぶ池の片隅をクローズアップで捉えています。
場所がどこであるかという指標が示されていませんが、断片的な場面をもたらした光の効果です。
水面に反映した画面の外側の世界、空や雲、そして周囲の木々のざわめきの陰景が良く分かります。
昨秋、東京でマルモッタン・モネ美術館のモネコレクッションを鑑賞しましたので、また違った睡蓮を見ることができて幸せです。

ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841年―1919年) 
《水の中の裸婦》1888年 油彩/カンヴァス81,3×65,4㎝
モネと並ぶ印象派の画家ルノワールのモチーフは人物でした。中でも女性を明るい色彩と柔らかいタッチで数多く描きました。
この作品は裸婦の背景を水面が覆い尽くすといった大胆な画面構成がとられています。
陰景とハイライトにより量感が作り出された女性の身体とは対照的に、水面には光のきらめきや反映を表す黄や
赤、白の筆触が並置されています。恥じらいのポーズの裸婦に魅力を感じましす。

アルフレッド・シスレー1839年―1899年)
《ロワン河畔、朝》1891年 油彩/カンヴァス
晩年の10年間を過ごしたフランス・モレ= シュル=ロワンの風景です。
初期には暗い色彩を使う風景画が多かったそうですが、この頃には明るい色彩を用いて青い空、朝のすがすがしい光に
照らされて輝くロワン河畔の水面と湖畔に建つ家々を柔らかな色調で描いています。

2.印象派を超えて:セザンヌとゴッホ、ゴーガン
ポール・セザンヌ(1839年―1906年)
《プロヴァンスの風景》1879-1882年 油彩/カンヴァス54,7×65,5㎝
セザンヌの故郷は自然が豊かな南仏プロヴァンスです。陽光に満ちた青い空、山の斜面に建つ家、緑の木々などが
鮮やかな色彩で描かれています。画面中央の家には、プロヴァンスで「マス」と呼ばれるモルタル塗りの壁と
赤く平たな瓦葺き屋根はこの地域に見られる農家です。家の周りには、強風を防ぐための木々が植えられていて
木々全体を統一的な構築を長方形のタッチで積み重ねて描いています。
ポーラ美術館で買ったときの図録はこの作品が表紙でした。子供と出かけたので懐かしい想い出です。

フィセット・ファン・ゴッホ(1853年―1890年)
《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》1888年 油彩/カンヴァス46,8×51,3㎝
ローヌ河畔のアルルにはローマ時代以来の歴史を有するこの町を理想郷と見なしたゴッホは、陽光の降り注ぐこの地で
新たに発見した色彩の効果を探究して日々を過ごしました。この作品は画面大半を占める空と運河の青に対して橋と
土手には部分的に黄色が使われています。土手に生い茂る草に始まり、橋上の低木林の緑の中にはアクセントして
赤で描いてあり、鮮やかな色彩が浮かび上がっています。
今まで鑑賞したゴッホの作品のうちで好きな作品になりました。

ポール・ゴーガン(1848年-1903年)
《小屋の前の犬、タヒチ》1892年 油彩/カンヴァス41,2×67,1㎝
文明社会に背を向けて、南洋の原始的で野性的な環境で絵画を制作したゴーガンは現地の風景や風俗、
そして宗教を主題とした作品を数多く残しました。この作品は植物だけを材料として組み立てられた
タヒチの伝統的な小屋を中心に馬や犬、そして現地に暮らす人々といった牧歌的な生活の様子が描かれています。
細やかな筆触の連なりによって生み出されるれた赤、緑、そして黄色といった色面が画面を構成しており
平面的なゴーガン特有の作風が生み出されいます。


3.象徴主義と新印象派:ルドン、シニャック、クロス
ポール・シニャック(1863年-1935年)
《オーセールの橋》1902年 油彩/カンヴァス73,2×92,2㎝
点描技法の創始者であるスーラが急逝した後、新印象派の牽引役なった彼は、はじめは細かな点描技法を用いていましたが
この作品は比較的大きな筆触を連ね、モザイク壁画を思わせる装飾性のあふれる技法を取り入れています。
フランスのブルゴーニュ地方の港町オーセールで制作。
町の中心を流れるヨンヌ川の左岸に当たる橋の向こう側にそびえるのは、荘厳なゴシック様式の塔を持つサン=テティエンヌ大聖堂と
尖塔型の鐘楼を持つサン=ジェルマン修道院です。人々が行き会う前景の護岸に用いられた青や紫など寒色の筆触が輝く水面や
陽の光を受ける後景の建築群の明るい色彩を際立たせています。


4.20世紀の前衛芸術:ヴラマンク、マティス、マルケ
アルベール・マルケ(1875年―1947年)
《パリ、カルーゼル広場》1910年 油彩/カンヴァス65,1×81,1㎝
画面の中景奥、および延長上にカーゼール門とエトワール広場の凱旋門が見えることからこの作品はルーヴル宮殿から
テュイルリー公園に向かって描いているそうです。立ち並ぶ木々が緑の階調を作り出しつつ、地面にくっきりとした影を
作り出しており、午後の強い光を浴びた庭園の様子を描き、色彩を巧みに駆使する画家の特徴だそうですが
構図が珍しいと思いました。

ピエール・ポナール(1867年―1947年)
《ミモザのある階段》1946年頃 油彩 カンヴァス80,8×68,8㎝
ポナールが晩年に暮らした地中海岸の町ル・カネ自邸の庭が描かれています。
中央の階段は、邸宅のある敷地から上方に咲くミモザが咲き誇り、ミモザのほうにゆるやかな弧を描きながら数々の植物に
取り囲まれています。濃い黄で描かれた花、緑の葉が鮮やかな高い樹木や、階段のの脇に丸い茂みを形成する灌木もあれば
紺碧の空を背景に枝を垂れた植物も見られます。
さらに複数の種類の花が何色も合わせた色面が、隙間なく庭の斜面を覆い尽くしています。起伏にとんだこの色彩の庭は
地中海の光の下に萌え出る自然の生命力を豊かに表現している作品です。

5.色彩と造形への挑戦:ピカソ、ブラック、シャガール
パプロ・ピカソ(1881年―1973年)
《花束を持つピエロに扮するパウロ》1929年 油彩/カンヴァス130,4×97,3㎝
この肖像画はピカソの息子パウロです。8歳になっていた息子は大人びた表情を見せ、堂々とした姿で描かれています。
色とりどりの花束や、同じ色の花飾りのついた杖と帽子を身に着け、可愛らしい幼年時代の面影も残しています。
前期の作品ですが巧みの筆致を用いて描かれ、親しみ深い作品です。

マルク・シャガール(1887年―1985年)
《オペラ座の人々》1968-1971年 油彩/カンヴァス129,8×97,0㎝
シャガールの80歳代前半の作品です。その頃は世界的な巨匠としての栄誉を浴していました。
パリのオペラ座を背景にした抱き合う男女、弦楽器を持つ音楽家、幸福のシンボルを宿り木を男女に捧げる鳥
自分の頭部投げる軽業師が空中の輪舞を華麗に繰り広げています。画面下で微笑む男はシャガールだと言われています。
彼はカラー・リトグラフや水彩画の制作により追求した瑞々しい色彩表現をフラスコ画のような重厚感のある大画面に
実現する卓越した技を披露しています。
シャガールのリトルグラフは見かけることがありますので誰でも親しみやすいと思います。

    《町の上ので、ヴィテブスク》1915年 油彩/カンヴァス129,8×97,0㎝
知人はこの作品が好きと言いましたので、2回目にじっくりと鑑賞すると確かに良さが理解できました。
この作品はシャガールの故郷の上を抱き合う一組の恋人たちが浮遊している幻想的な場面を描いています。
分割された色面から恋人たちと輪郭線で囲まれたヴィテブスクの家並み、異なった木の柵などには
キュビスムの影響を感じさせる幾何学的な表現がみられます。
画面には結婚直後のシャガールとベラの喜びと幸福感や穏やかで優しい情感に満ちています。

魅力ある作品は多数あってまだまだ選びたい気持ちです。 開催日の残りは後3日です。

        写真はロービーの垂れ幕から撮影
  
ムール貝採り(ピエール・オーギュスト・ルノワール)の一部です。右側には子供を見つめる母親が描かれています。
セーヌ河の日没、冬(クロード・モネ )光と影の対比が印象的で冬の日没ですので色彩は濃く中央の一部です。