自然を愛して

田舎暮らし

東京藝術大学クローン文化財(北朝鮮 高句麗古墳群江西大墓 中国 敦煌莫高窟第57窟 キジル石窟第212窟) 

2018-09-19 17:13:13 | Weblog
北朝鮮・(平壌
●高句麗古墳群江西大墓《四神図》 南壁「朱雀」再現 
●高句麗古墳群江西大墓《四神図》 北壁「玄武」再現
●高句麗古墳群江西大墓《四神図》 西壁「白虎」再現
●高句麗古墳群江西大墓《四神図》 東壁「青龍」再現

高句麗古墳群のうち江西大墓の四神図は世界遺産(2004年)に登録され高句麗古墳群の中でも最高傑作と言われ
描かれた年代は4世紀末から7世紀初めとされています。
海を渡り、日本のキトラ古墳や高松塚の古墳の四神図へ影響を与えたことが指摘されています。
現地では南側に位置する入口から玄室に入り正面に玄武、右側に青龍、左側に白虎、左右には一対の朱雀(しゅじゃく)が
描かれています。
江西大墓を複製するには漆喰などの下地がなく花崗岩に直接描かれているため壁画の質感を再現するため
裏打ちして補強した和紙に白色顔料と花崗岩の粉末を混合した絵具で下塗りされ、スクリーン印刷で凸凹をつけたそうです。
色材は緑青,朱、鉛白、黄土を用いて彩色し、玄室全体の雰囲気を見ながら描き手の審美眼と感覚で描かれているそうです。
開発した印刷技術を導入し、岩の質感を失うことがなく、力強く流麗な線や美しい彩色を再現に成功して
東京芸大の初の特許の取得へ繋がったそうです。線の美しさ流れに目を見張りました。

中国甘粛省 クローン文化財
●敦煌莫高窟 第57窟南壁、北壁、西壁、東壁 再現
●敦煌莫高窟 第57窟 如来坐像 再現
●敦煌莫高窟 第57窟 菩薩立像 再現

古代シルクロード交通要衝と知られる敦煌は中国甘粛省の西端に位置し、東西貿易の中継地であり、
宗教・文化などが融合し合う合流点でありました。中でも敦煌莫高窟と呼ばれる一帯には今でも492個もの仏教石窟寺院が残り、
内部には天井まで覆うほどの華麗な仏教壁画が描かれていました。
ひときわ優美・華麗な作風はで抜群の人気を誇る通称「美人窟」と呼ばれている第57窟を東京芸大は
敦煌研究院との共同研究により、初唐の石窟と四方に配された壁画の再現と,塑像を制作当初の姿まで復元しました。
石窟内部は同じ形状で3D計測データと高精細画像を元に実寸サイズで再現することに成功したそうです。
1997年に世界遺産に登録。今は保存の観点から常設公開はされていません。
莫高窟第57窟は一辺が5mに満たない正方形プランの中型窟で、天井は斗(ます)を伏せたような形状の伏斗式です。
正面の西壁には二重の龕(腹式龕)を開き、本尊坐像は、釈迦如来像と見られます。
中心に計七尊を塑造していたと思われます(現在、外龕右一体が失われています)。
両側壁(南北壁)は中央に正方形の画面を設けて仏浄土の場景を描き、その周囲を千仏で埋め尽くしてありました。
千仏が描かれた壁画を見たのは初めですのでとてもめずらしく興味を持ちました。
主室西壁(現状) 塑像は後世の修復が多く、また脇侍一体が欠損しております。
このため、復元は現在の模刻ではなく制作当初の形状を考慮したそうです。一番はっきりした色彩でした。
莫高窟第57窟主室南壁(現状)、壁画様式の特徴はこの窟の白眉です。
南壁浄土図は、中央の如来と二脇侍菩薩の三尊像を主として、その間を埋めるように二比丘(出家して正式な僧なった男子)
八菩薩・二力士・二飛天を左右対称に配したにぎやかな群像形式です。
中尊如来は本来、肌に金箔が施されていましたが、現在は金箔の残るのは左手と右手指先のみで、
顔面から胸、右腕にかけては金箔が剥ぎ取られていて痛々しいです。
右脇侍は敦煌一の「美人菩薩」と言われ、切れ長の目を伏し、左手で長い首飾りに軽く触れ、
細身の腰をしなやかに曲げて立つ姿は魅力を感じます。

法隆寺金堂壁画によく似ていました。一つ一つの仏像と比べて見たいです。
平山郁夫画伯のシルクロードの絵画を鑑賞したとき敦煌に行きたいと思っていましたが、今はクローン文化財の作品で満足できました。
もう一度展覧会に行き、じっくり鑑賞したいです。

中国新疆ウイグル自治省 クローン文化財
●キジル石窟 第212窟 再現 
●キジル石窟 第212窟 復元
ギジル石窟群の中で長いトンネルの形状をした航海者窟第212の壁面には航海と海の宝探しをモチーフとして壁面が描かれていました。
現在、壁面に残っている壁画は天井の断片と両側壁の下部など全体の3分の1に満たないそうです。
20世紀初頭にドイツの探検隊が壁画を切り取って持ち帰り、さらにその一部は第二次大戦の戦火により一部が失われました。
クローン壁画は残っていた図版資料を基に復元されました。


東京藝術大学クローン文化財展 《法隆寺釈迦三尊・法隆寺金堂壁画》

2018-09-11 09:41:04 | Weblog
甦る世界の文化財 ~法隆寺から~バーミヤンへの旅~島根県立美術館で7月13日~8月26日まで開催されました。
破壊からの再生芸術と科学の融合によって出来上がった作品77点が展示。門外不出の仏像や失われたしまった壁画など再現。
作品名を知っていてもほとんど見てない作品のクローン文化財を島根で観ることができて感激しました。

日本
●法隆寺釈迦三尊(奈良)
法隆寺の釈迦三尊は日本仏教彫刻を代表する国宝です。門外不出の国宝で法隆寺に行かないと拝めません。
東京藝術大学COI拠点が最新のデジタル技術と高度の専門的なアナログで技術を駆使して製作。
文化庁の特別許可で習得した3D計測データや蛍光エックス線分析データを解析、デジタル技術で3D復元
出力した原型をもとに富山県高岡市で鋳造し、最後の仕上げは東京芸大に戻って、彫刻や日本画の分野のスタッフが
手作業により1400年の歴史の中で実物の色の変化や着いた傷を像に忠実に彩色されていました。
そして、中尊鎮座する台座と頭上の天蓋も忠実に飛鳥時代の姿に試み、現在失われてしまった中尊の螺髪(らはつ)や
大光背飛天も復元し、さらに実物では欠落したままになっている眉間の「白豪(はくごう)」も水晶で作り取り付けてありました。
脇侍(きょうじ)は左右を現状と入れ替えて配置されていました。(右脇侍は金色)

●法隆寺金堂壁画(奈良県斑鳩町)

現存する世界最古の木造建築である法隆寺金堂で1949年(昭和24年)火災が起き壁画が焼損しました。
現在の金堂には60年代後半に製作された再現模写が置かれています。
焼損前の壁画が同素材同質感のクローン文化財に再現されました。
「釈迦説法図」「菩薩像」など3m余り、幅約 1,5m~約2,6mの壁画12面展示。
世界的な仏教芸術の傑作に魅了しました。
6号壁の阿弥陀仏浄土図は大壁浄土を中心に菩薩、羅漢、飛天で構成。
気品を満ち、しとやかさを備えています。
会場はお香の香りと声明が流れ、お寺の雰囲気も味合い、作品説明も分かりやすく丁寧に説明されました。
次のコーナでは3Dプリンタで出力し、立体された樹脂仏像を初めて見ました。
また鋳物の制作工程などはビデオでゆっくり鑑賞もでき、写真撮影、作品を触ることもできました。

法隆寺の思い出
今回の展覧会で一番見たかったのは法隆寺金堂壁画でした。
美術の先生が授業のとき、壁画が火災で損焼したときのことを悲しそうにお話されたお顔を今も心に残っています。
授業では夢殿、観音菩薩像(夢違観音)、玉虫厨子なども習いました。
そして、友人と東京国立博物館の国宝展に行ったとき、玉虫厨子をじっくり観て玉虫翅鞘の色の美しさに感動しました。
夢違観音菩薩はみずみずしく、はつらつとした凛々しさに好きになりました。
今回公開されました法隆寺のご本尊の釈迦三尊は記憶がなく、非仏だそうですから金堂の外から拝んだ仏様だったのかしら?
法隆寺は静かなところで再度行きたくなる場所です。