自然を愛して

田舎暮らし

ヒガンバナ(彼岸花/曼珠沙華)

2018-10-27 14:15:12 | Weblog
 
夏の終わりから秋にかけて、道端や土手に真っ赤な彼岸花が咲き始めると秋の訪れを感じます。
点々と咲く姿や情熱的に咲いて群生している花は田舎の素晴らしい秋の風景です。
写真の花は我が家の庭で撮影したものです。義母が生きているときは彼岸花が増えないように球根を掘っていましたが
今年は猛暑で庭の手入れをあまりしませんでしたので、樹の間から彼岸花が自然に増えてきました。
老人は球根に有毒があることを知って植えなかったのですね。


彼岸花について
全草有毒な多年生の球根性植物。散形花序で6枚の花弁が放射状につき。9月中旬に赤い花をつけます。
彼岸花の高さは30㎝~50㎝の枝も葉も節もない花茎が地上に突出し、その先端に苞が敗れると5~7個前後の花が顔を出します。
花は短い柄があって横を向いた開き、全体としてはすべての花が輪生状に外向きに並びます。
花弁は長さ40mm、幅約5mmと細長く大きく返ります。
開花終了の後、晩秋に長さ30㎝~50㎝の線形の細い葉をロゼット状にだし、葉は深緑でつやがあります。
葉は冬中に姿が見られますが、翌春になると枯れてしまい、秋が近づくまで地表にはなにも生えてきません。

 

東京藝術大学クローン文化財(オルセー美術館所蔵)油性画  (ボストン美術館スポルディグ・コレクション)浮世絵

2018-10-06 14:08:18 | Weblog
オルセー美術館所蔵(フランス
油性画
東京芸術大学ではオルセー美術館の油彩画39点の高精細デジタル撮影を実施し、取得したデータを用いて高精細複製制作を続けておられます。
その中から気に入った作品。

●エドゥアール・マネ《笛を吹く少年
上野の国立西洋美術館で開催された「ジャポニスム展」を鑑賞していましたので、この作品を楽しみにしていました。
展示作品はそのとき鑑賞した作品にそっくりでクローン作品の素晴らしさを改めて感心しました。
そして、描かれた少年を絵画と同じ大きさで立体化して、油絵の具で彩色した立像も制作されていました。
モデルの少年は笛を吹く近衛軍鼓笛隊員です。緊張気味にポーズをとり、大きな瞳を開いたあどけなさを残す表情が
生き生きと描かれています。
ジャポニスムの影響を受けて遠近法を使わずコントラストの強い色を平面的に用いている様は浮世絵の技法を感じる作品として有名です。

●フィンセント・ファン・ゴッホ《渦巻く青い背景の中の自画像》複製
ゴッホは生涯に40点余りの自画像を残しています。
この作品は耳切り事件後、サン・レミのカトリック精神科病院「サン・ポール」に入院していた1889年9月頃描かれた晩年の作品です。
東京芸大学COI拠点が忠実に再現したクローン文化財(高精細複製画)です。
オルセー美術館で、オリジナル作品の詳細な調査と高精細デジタル画像の撮影を行いそれに基づきオリジナルな作品と
同素材である油絵の絵具を使用して、キャンパスに手作業でゴッホの独特な筆致を厳密に画写し、その上に画像編集ソフトで
色合わせを施した高精細デジタル画像を印刷して、オリジナルと遜色がない絵肌を再現したそうです。
そして人間の錯覚を利用して、光の加減で自画像が動いて見える作品を展示されていました。
絵画が動いているのは「変幻灯」を使って名画が持つ躍動感を補って鑑賞者に伝える効果があります。
ゴッホ展で自画像は何点か鑑賞していますが、ゴッホの自画像作品の中では明るい色彩です。

※変幻灯について
止まっていると思っていた絵画の写真が変幻灯に照らされることで、突然ゆれます。
コンピュータの中で静止対象が動く映像を作成し、そこからモノクロの動き、情報を取り出したものを投影します。(NTTが開発した技術)

浮世絵(ボストン美術館スポルディング・コレクション)
米国ボストン美術館には、木版浮世絵の中でも貴重な初摺りを中心として収集され、一般に公開しないことを条件に
1921年に寄付されたことから世界でも最も美しい浮世絵と言われている作品があります。
その作品から高精細デジタル画像を元に再現したクローン文化財作品を展示。

◆歌川広重《名所江戸百景 猿わか町よるの景》
「猿わか町よるの景」は夜空に木目が摺り込まれ、満月にかかる雲は「当てなしぼかし」という偶然性を利用した表現によるため
版木による複製では同じ表現はすることができません。
浮世絵クローンは和紙に高精細印刷を行い版木の凸凹をつける方法で作られているので美しい摺りを和紙の質感とともに鑑賞できます。

◆歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
版画は島根県立美術館で鑑賞していましたので親しみやすく特に《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》は好きな作品です。
雨が動いていましたのでAdobe Flashを使用されたのかしらと思ったりしましたが「変幻灯」ではどんな風に使って制作された
のかしらと考えました。
会場では美しい浮世絵を和紙の質感を手で触れ、その絵にちなんだ香りを楽しんでいた人が多かったです。
クローン文化財の展示は子供も大人も一緒になって楽しむ工夫がされていましたので家族で良い夏休みを過ごされた人も多かったことでしょう。
                    
 
「素心伝心」の本を購入しましたので知識をつけて島根県立美術館にもう一度行き、作品をじっくり鑑賞したいと思いましたが、
あっという間に夏も終わり残念なことに再び鑑賞できませんでした。
今回、立派なクローン文化財を鑑賞して、制作に携わった方々に感服しました。
松江市出身の日本画家、宮廻正明氏(東京芸術大名誉教授)は文化財複製技術が評価され、2018年度の文部科学大臣表彰技術賞に輝きました。


東京藝術大学クローン文化財(タギスタン ペンジケント遺跡発掘区) アフガニスタン(バーミヤン東大仏天井壁画) 並河萬里写真作品

2018-10-01 17:28:02 | Weblog
タジキスタン クローン文化財
●ペンジケント遺跡発掘区 ⅤⅠ広間Ⅰ壁画《ハーブを奏でる女性像》
ペンジケントは3世紀から8世紀にかけてタジキスタン北西部のザラフシャン川上流域に、ソグド人によって営まれた古代都市です。
遺跡から出土した色鮮やか壁画群は、シルクロード交易の中心的役割を担ったソグド人の思想や美的感覚を知る貴重な資料です。
この作品はタジキスタンの国立古代博物館が所蔵するペンジケント遺跡の壁画を復元したものです。
壁画は3枚に分かれており、一つの額縁に収まって展示されているそうですが、クローン文化財の作品は二つに分けて展示されていました。
左にハーブを奏でる女性像、中央に弓を構える戦士、右に槍を構える戦士が描かれていました。英雄抒情詩を表現したものと思われます。
        

アフガニスタン
●バーミヤン東大仏天井壁画《天翔る太陽神》復元クローン文化財

シルクロードの中継点として栄えたアフガニスタンのバーミヤンに6世紀に建立された高さ38mの東大仏は、
切り立った崖をくりぬいて造られて、大仏の頭上には天井部分の穴に《天翔る太陽神》が描かれていましたが、
2001年旧タリバン政権に爆破され、壁画も失われました。
東京藝術大学は実物が存在しないクローン文化財の資料を集め、京都大学調査団が1970年代に撮影された写真を
パソコンで詳細なデータにして、解像度はそれぞれの画像をつないで合成したそうです。
大仏が破壊された後にバーミヤンを訪れたアーヘン工科大学(ドイツ)の調査団から壁画に描かれた曲面の3D計測データを入手して、
合成していた平面画像を張り付け、画像のゆがみを修正したり、写真と見比べて位置を確認したりして整え、出来上がったそうです。
破壊前の東大仏の頭上の壁画には仏教では描かれない馬車に乗った太陽神や翼のある天使が描かれ、当時は異なる文化が混在した
平和な国家であったことが伺われます。
印象に残ったのは壁画に使われた彩色です。特に青色はアフガニスタンで採れた鉱石を細かく砕いた顔料「ラピスラズリ」を使用したそうです。
そして、頭上の位置から実際に見えるアフガニスタンの風景が巨大スクリーンに映し出されて、渓谷の映像美は美しい風景で感動しました。

並河萬里写真作品
写真家・故並河萬里(1931~2006年)シルクロードなどを巡って文化財を撮影し続けました。
両親が島根出身で少年時代は松江で過ごし、大学卒業後テレビ局に就職。その後退社して、雑誌フィガロの写真部となり、
ロイター通信社と契約してモロッコの内戦、アルジェリア解放戦争など取材し、報道写真を撮ることに没頭されました。
1962年31歳のとき訪れたシリアのバルミラ遺跡が道路整備のために破壊されるのを見て、文化財を撮影し、
記録することをライフワークにされて、50年で46カ国を巡り、残した文化財の写真は20万カットに及び、
ほとんど「島根文化振興財団」が保管しておられます。

●心に残った写真
◆パルミラ列柱廊(2077年に撮影)
 列柱廊の並びが美しく世界一最も美しい廃墟の一つと言われています。
◆パーミャン石窟東大仏とその天井画
◆パーミャン石窟38メートルの大仏(東の大仏)
◆崑崙(こんろん)山脈
◆ホータンへの道 中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区ホータン
◆朝もやのバーミヤン渓谷
◆バーミヤン断崖に掘られた石窟
◆バーミヤン石窟 西大仏
◆バーミヤン石窟 仏龕壁画
アフガニスタンのバーミヤン遺跡は東西1キロ以上にわたって続く大摩崖に高さ38mと55メートルという東西二大石仏と
無数の石窟が掘り出されています。7世紀に玄奘法師が訪れたときには二つの大仏は装飾が施され金色に輝き
伽藍は数十数カ所あり僧徒は数千人いたと記録にあるそうです。並河氏がシルクロードで撮り続けられた数々の写真は
破壊される前の遺跡の姿や人々の暮らしを写されており、文明の歴史の偉大さを知り、作品に圧倒しました。