自然を愛して

田舎暮らし

小倉遊亀と院展画家たち展 

2019-09-08 15:42:20 | Weblog

ロビーにて撮影

滋賀県立近代美術館所蔵作品よる展覧会が島根県立美術館で6月28日~8月26日まで開催されました。
展示替えは前期:後期に分かれていましたので2回鑑賞しました。

小倉遊亀について
滋賀県大津市出身(1895-2000年)
奈良女子大卒業後は教師になり、大正9年安田靫彦に入門
禅の精神修養を重ね昭和13年小倉鉄樹と結婚
昭和7年、女性初の日本美術院同人、昭和53年より日本美術院理事、
昭和55年文化勲章を受章しました。
家族や子供、裸婦を含めた人物画、そして静物画も描き、多くの作品があります。
どの作品も対象の本質を捉え理知的造形が魅力的で、個々の持つぬくもりを感じさせる独自の視点を確立された
人だそうです。

好きな作品
姉妹(あね、いもうと)1970年
七夕の日に折り紙をして遊ぶ姿を描いた作品。
妹が二羽の折鶴を膝の上のせて満足そうに笑い、姉は次に折る準備をしながら妹の方を見守り姉の愛情が出ています。
真正面に向いて並んで座る二人は洋服の色数を抑えていますが、色紙の赤や黄色が引きしめています。
背景はプラチナ箔に胡粉の白色が美しく贅沢な余白が広がっています。
姉妹の愛らしいさや、遊びに興じる双方が生み出す気配を感じました。
子供のころ毎年姉妹で七夕飾りを楽しんいましたので、懐かしくじっくり鑑賞しました。

●観自在(1968年)仏画
観自在とは観世音菩薩のことで作者が一番好きな仏様だそうです。
観音様はどんな姿にも変化できるのですが、この作品は救いのために蓮台に舞い立ち凛々しい姿に描かれています。
衣紋や体軀の描線は力強く張があります。右手には水瓶、左手には蓮のつぼみを持ち内面の核心を造形化していますが
女性画家らしい仏画作品です。

●家族達(1958年)
戦後小倉作品は西洋絵画の影響を受け作風が変化しました。
戦前は流麗な描線で描かれた人物もラフな線で描く作風に徐々に変わっていきました。
戦後は大胆な太い線で人物の輪郭を縁取り、ごく省略した形態で対象を捉えています。
家族シリーズは身近な対象を温かい眼差しを注いで描き続けられました。
この作品の「家族達」は新婚間もない様子が描かれています。

●葡萄(1959年)
静物画は美術館ではあまり鑑賞する機会にめぐまれていませんでしたが、今回の多くの作品を見て、
同じモチーフで描かれても器と果物の位置関係や空間の中の配置によって、
緊張感のある構図を考えると両者を落ち着くところに探し当てることが出来るそうです。
よく観ていると確かに同じ位置の作品はなく並んで展示された作品の「佳器」(1956年)と
「葡萄」を比べると良く判りました。

●半夏生(はんげしょう)(1990年」)
半夏生とは季節の移り変わりの「雑節」の一つで、毎年7月2日頃に当たります。
植物は、アジアに広く分布するドクダミ科の植物で葉の下半分が白くなり、白い穂状の花が咲きます。
画面の中央に古九谷の大徳利と並べて描かれ半夏生と徳利の距離感や背景の余白などさりげないように計算されており、
熟練の画家の技量が発揮されているそうです。

●盛花(2000年)
小倉画家は平成12年7月に、105歳の生涯を閉じました。
咲きこぼれる椿の花を描いた「盛花」が絶筆となり、没後、家族の手によってその年の秋の院展に出品されました。
作品は枯淡な灰色の鉢に活けられた椿の花がこぼれるように咲いています。
「蜀江の錦」(しょっこうのにしき)という品種の椿の花びらは白と赤が混じっている大きな花です。
一緒に活けてある優しいピンク色の椿は流れるように活けてあって好きな図です。

思い出
小倉作品を最初に観たのは1999年に開催された「芸大美術館名品展」の《径》(こみち)でした。
日傘をさした婦人の後に傘をかかげて子供が一心について行き、その後から犬が1匹ついて行く様子は
婦人から子供、犬の次へと大中小とだんだんに小さくなっていくシルエットや脚の動きといった
リズミカルな動きが心よくて清潔で健康的な光景が好きになりました。
今回も様々の人物画を楽しみましたがやはり子供を描いた作品が一番目に留まりました。