自然を愛して

田舎暮らし

石見小説集

2011-02-08 21:03:52 | Weblog

今年の冬は出雲地方に大雪が降りましたが、石見地方の我が家は庭の雪もあまり積もらず、
力強く咲く水仙の花を見つめ、まだ小さな樹の蝋梅の香りを楽しみながら静かに読書して過ごしました。
 

    水仙の花                  蝋梅      

最初に読んだ本は最近発行された(山陰中央新報社)難波利三作「石見小説集」です。
作品は石見を題材にした三編です。直木賞候補にもなった「天を突く喇叭(らっぱ)」
「イルティシュ号の来た日」の二編と「夏の谺(こだま)」です。
その中で一番関心を持って読んだのは「天を突く喇叭(らっぱ)」です。
木挽きの主人公が歩兵第21連隊(浜田市)に入隊するところから戦後の様子が書かれ登場人物も多く
当時の歴史も分ります。
21連隊は日清戦争のとき突撃の際に敵の弾丸が当たり、血をほとばしながらも最後まで突撃喇叭を
吹き続けて知らせたという有名な木口小平が所属した連隊です。(銅像は殿町の護国神社に設置)
そこで主人公は喇叭手に選ばれて、その後、東京・中野の陸軍士官学校へ一年間内地留学して、
東條英樹の配下に組み込まれました。
その当時、明治天皇の大葬がありその様子も書かれています。
太平洋戦争の前後は元の上司東條英樹を思う心や、村人の会話、住職のお話などが石見弁を使い
よく表現してあり、読んでいて一番面白いところです。
最後は東條英樹が処刑になった日、供養のため小山で喇叭を吹き続けるシーンや暗闇に村人が
いくつもの灯りを持って近づく場面などふっと映画にすると良い作品になるのではないかと思いました。
田舎の風景に軍歌の“海ゆかば”“安城の渡”を流しながら・・・
兵隊映画の「二等兵物語」「私は貝になりたい」「ビルマの竪琴」はそれぞれ特徴があります。
「天を突く喇叭(らっぱ)」も違った観点から捉えていると思います。

難波利三について
平成17年島根県大田市名誉市民になる
「てんのじ村」で第91回直木賞を受賞
「地虫」で第40回オール読物新人賞受賞
「地虫」「雑魚の棲む路地」「イルティシュ号の来た日」
「天を突く喇叭(らっぱ)」「大阪希望館」がそれぞれ直木賞候補になる


大田市では毎年“難波利三・ふるさと文芸賞”が創設されています。
昨年は11回目で募集期間は7月1日から8月31日まででした。
エッセイで小学生の部、中学生の部、高校生以上の部に分かれています。