カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

イノダコーヒ 本店

2013年09月04日 | 京都
「コレデ、イイノダ。」

此の、せせこましい京極繁華街、一方通行の網目の真っ只中に在りながら、其れでもしっかりと専用駐車場が在るというところに、重鎮の重鎮たる趣がある、駐車場、其れ如きの件でそう言い切ってしまっていいものなのかと思われがちではあるのかも知れないけれど、其の建物、其の存在の其処此処に在る、期待を裏切らない、其れどころか少なからず予想を裏切るであろう其の佇まいによって、そんな前言も更に強固な事実と成る、訪れる者は、先ず其の店先で少したじろぎ、一歩足を踏み入れて、ちょっと混乱し、翻弄されつつある己の感性、其処に俄かに喜びを見出だすこととなるであろう。

先ず通される、開けたラウンジのさらに奥、夢見る乙女の眠りの中、まるで少女漫画の世界のような様式美に満ち満ちた其の部屋には、やはりお姫様のような衣装を身に纏う異形の者ばかりが犇いているのかといえば、そうでもなく、草臥れた風情の常連客も勿論のこと遠慮なく寛いでいる、むしろ煙草を嗜まぬ者は、否応なく其の部屋へと導かれる、そのような仕組みな訳である。

一概に派手がましいばかりとは言い切れない、厳かで非現実的なお姫様空間から一旦離れ、ちょっと心持ちを落ち着けようと、気持ち薄暗いように感じられる、奇妙に中途半端な幅の廊下を渡り、石畳を踏み締めながらお手洗いに行く途中、ふと何か耳に届いた、其のような気がして振り向くと、壁に沿って幾つかの鳥篭が吊り下げられ、其の中の鸚鵡、もしくは大きなインコが、あらぬ方向に頸を傾げているではないか、ただでさえ脈絡のない此の光景に、頸を傾げたくなるのは実際こちらの方なのに。

其の頸も傾げたままに用を済ませ、あえて鳥篭の存在を無視しつつ席へと戻ってみると、注文を済ませ、期待していたものとは、ちょっと違う、思わずそう思わせられる代物がテーブルに置かれている、白く透明感のある粉が隅々までたっぷりと振り掛けられた其の四角い食べ物は、なるほど此れも、概念的にはフレンチ・トーストと言えるのかも知れない、だがやはり、此れまで他では見たことのないフレンチ・トーストで、以前に戴いたことのある、銀食器に装われたケチャップ風味べっとりのスパゲッティといい、やはり此の店の料理というのは、其の装いからして一筋縄では行かない、其のようである。

不条理な漫画のような其の世界の中で、あまり経験することのない、ざりざりとした砂糖そのものの食感にて其のフレンチ・トーストを咀嚼する、其れはまた、食べることに関するひとつの根源的な欲求を、あえて満たさんが為のラジカルな在り様である、そうであるのかも知れない、だが実生活的な面から案ずるに、このように大量の砂糖を直に口にしてしまっていて、行く行く身体は大丈夫なのだろうか、いや、一般的な食塩、化学物質である塩化ナトリウムとは違い、砂糖というのは、あくまでサトウキビが原料なのであるから、先ず自然の一部として大丈夫な筈である、などと自らに言い聞かせ、傾いだ頸は其のままに、しかし結局は其の全てを腹に納めてしまうのであった。

イノダコーヒ 本店コーヒー専門店 / 烏丸御池駅烏丸駅京都市役所前駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5