カゲロウの、ショクジ風景。

この店、で、料理、ガ、食べてみたいナ!
と、その程度、に、思っていただければ・・・。

ビストロ ダ アンジュ

2012年12月02日 | 大阪
「愛され続ける、其の理由。」

安易な話、ただ受け入れて貰いたいというだけなら、徹底的に自分を殺してその人に尽くせば、其れで大概は事足りてしまう、其れが実際である。

ひたすら自分の為に何かをしてくれるというような稀有な人物を、其れでもあえて距離を置いて遠ざけようという人など世の中にはおよそおらず、だがしかし、そう言いながらも追々自己を押し付けようとする気配が感じられるような場合には、やはり徐々にその親切が少々疎ましく感じられてくることになる、其れがよくある成り行きであり、其れは人情であり、例えばその末に痴情のもつれがあったりもするのだろう。

で、其れがいったい何の話なのかといえば、そういう押し付けがましい自己というものをおよそ感じさせない、其れがこのアンジュという老舗ビストロであったという話なのである。

其れは、その料理に限らず、店内に漂う雰囲気に限らず、店員の接遇に限らず、其処に在る何もかもに気に障るようなところがおよそない、この店の長い歴史を思えば、其の不在にちょっと気味が悪くなる、其れくらいに、在って然りである筈の押し付けがましさがまるで感じられないのである。

手間隙かかった凝った料理、その風味というのは、口に運んで実際咀嚼してみると意外な程にストンとしていて、勿論ある面においては充分に満足させられはするのだけれど、其れでも何処か心の片隅では拍子抜けさせられてしまっているような自分を確かに感じる。

繁華街の地下にある穴蔵のようなその店内には、多くは若い女性がみっしりと詰め込まれ、立って手洗いに行く隙間すらないその席で、しかし、ゆっくりじっくりと料理を味わい、其れらしく、大人しく会話を交わしている、そんな風情である。

そんな彼女らの肥えた舌に見合うクオリティはしっかりと内包しつつ、しかしその料理とはおよそ関係のない会話を微塵も邪魔するようなことはない、そんな味わい、勿論彼女らは其れこそを求め、行列を厭わず足繁く此処に通うのであろうけれども、長い長い年月、只ひたすらにどのような自己をも主張せず、これらの料理が彼女らの味覚に尽くしてきたのであろうことに思いを馳せると、正直、何だか少し寂しい、そんなような気がするのは、その日その時、偶々自分が数少ない男性客であったから、もしかすると其のせいだったのだろうか。

ビストロ ダ アンジュフレンチ / 大阪難波駅心斎橋駅なんば駅(大阪市営)
昼総合点★★★★ 4.0