ザ☆シュビドゥヴァーズの日記

中都会の片隅で活動する8~10人組コーラスグループ、ザ☆シュビドゥヴァーズの日常。
あと告知とか色々。

サトシとピカチュウの間に愛はあるのか?

2018-05-06 22:00:03 | ヨン様
こんばんは、ヨン様です。


本日は先週に引き続き練習を行いました。
毎回練習の話をするとあまり変わり映えのしない展開になり、面白くありませんよね。
というわけで、今日はポケモンにおける呼称の話をしたいと思います。

ポケモンの世界で一般的にポケモンがどう呼ばれるのかを考えてみましょう。


「ゆけっ! 〇〇〇!」


というときの「〇〇〇」に入る部分です。
アニメだと、これに続いて「キミにきめた!」とか言っちゃうかもしれません。

この「〇〇〇」の部分に、多くの人は「ピカチュウ」とか「トランセル」とか「シザリガー」といったような、ポケモンの名前が入るのではないでしょうか。
つまり、種族の名前です。
これについては、一部の例外があるものの、アニメもゲームもそんなに変わらないことだと思われます。

しかし、例えば、私たちは飼っている犬の名前のことを「ほれほれ!イヌ!」などと種族名で呼ぶことがあるでしょうか?
犬種で分けても同じことです。
そこらへんにいるポメラニアンやらコーギーやらを「へいポメラニアン!水に沈められたいのかい?」とか、「へいコーギー!カルピスほしいのかい?」などと呼んだりすることはありません。
野良犬は特定の呼称を持たないので呼びかけることができませんし、飼い犬とじゃれつくときは、基本的に「なんて名前ですか?」と飼い主に尋ねることになります(飼い主がいない場合、呼称に関しては野良と同じです)。

つまり、我々が生きる現実世界において、呼びかけに使えるのは特定の呼称を指すような固有名詞が基本なのです。
それに次いで「パパ/ママ」などの親族呼称、まれに「へいカノジョ!」とか「ベイビー」とかいったものが位置づけられます。

すると、ポケモンの世界での呼称方略は、現実世界に照らして極めて奇妙なことをしていることに気が付きます。
テレビアニメ「ポケットモンスター」には、サトシという主人公がいて、サトシはピカチュウという深い絆で結ばれたポケモンを使役しています。
ところが、こともあろうにサトシはそのピカチュウを「ピカチュウ」と呼んでいるのです。
一見するとピカチュウという種に属する個体を「ピカチュウ」と呼ぶという呼称方略がポケモンの世界では通用しているようですが、これは苦楽を共にしてきた愛犬を「イヌ」と呼ぶことと同じなのです。
これが現実世界でのことだったら、「そんなに大切にしてるなら名前くらい付けてあげろや!」という気持ちになるというものです。
無印時代のアニメに登場したライバルキャラヒロシのほうが、よっぽどポケモンを大事にしているように思えます(もちろん、ヒロシのポケモンに名前がついているのは、重複するサトシの手持ちポケモンとの混同を避けるためなのでしょうが)。

そもそもペットに対する命名行為というのは、他の個体からその個体を特別に取り出すという行為であり、ある種の親愛の情の表れでもあります。
命名という行為や名前そのものが神聖視されたりすることがあるのは、呪術的な信仰の影響はもちろんのこと、種から個を取り出すという人間的な世界観と無関係ではないでしょう。

一方で、ポケモンの世界ではそのような価値観が完全に抜け落ちているようです。
「ピカチュウ」や「トランセル」、「シザリガー」といった呼称が、そのまま呼びかけ表現になるのです。
このような方略が可能であることは、言語学的にも極めて興味深いのですが、残念ながらポケモン世界の生きたインフォーマントがいないので、内省に基づいた調査は極めて困難であると言わざるをえません。
今後ポケモン世界の言語資料を博捜して、言語事実を詳らかにしてくれる研究者が現れることを祈ります。


以上の検証の結果、相棒ピカチュウを種族名で呼ぶサトシには、実は手持ちポケモンを愛していないのではないかという嫌疑がかけられることとなりました。
大切にしている人や動物は、ちゃんと名前で呼んであげましょうね。

それでは!