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ワタリガニ戦争

2009-05-30 18:51:10 | Weblog
 1970年代に北欧のアイスランドと英国の間で“タラ戦争”というのがあった。タラの漁場をめぐる紛争で、双方が海軍の艦艇まで出して対立した。漁獲をめぐる国際間の争いはしばしばある。カナダと米国などのほか、領土紛争がらみの日本とロシアは周知の通りだ。

 朝鮮半島でも近年それがあり、ワタリガニの好漁場になっている西海岸沖がその現場だ。南北軍事境界線あたりで、南北双方の漁船のほか近年は中国漁船まで加わってお互いケンカ腰だ。とくに南北で軍事緊張が高まり南北の漁船が操業を見合わせたりすると、そのスキに中国漁船が文字通り“漁夫の利”をねらって入り込む。


 1990年代以降、南北間で2回、大規模な海戦があり、筆者は勝手に“ワタリガニ戦争”と名付けてきた。しかしこの“戦争”はカニの奪い合いが目的ではなく、政治的対立からカニ漁が犠牲になるという話だ。ワタリガニ漁は5、6月が最盛期でそのころが味も最高である。


 ワタリガニは殻が相当固い。蒸したり湯がいたり断ち割って鍋にし、身をほじくって食べるが、珍味は生の醤油漬けで「カンジャンケジャン」という。手足のトロッとした肉をかみしだくように食べる。


 しかし「カンジャンケジャン」は頭の殻にご飯を入れ、漬け汁で食べるのが最高にうまい。食通はみんなこれをやる。旬に“ワタリガニ戦争”が起きると値段が暴騰する。グルメには頭が痛い。

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