高校3年生の少年が、勉強ばかり強要する母親を殺害し、遺体を部屋に8カ月間放置したまま学校に通っていたというニュースは衝撃的だった。犯人の少年Jは、部屋の戸の隙間を接着剤で固め、遺体が腐敗するにおいが漏れないようにし、友人を自宅に呼んで遊んでいたという。少年Jは警察の調べに対し「母親が『全国1位にならなければいけないのに、意志が弱い』として、ご飯を食べさせてくれなかったり、夜も寝させてくれなかったりした。事件前日の夜から当日朝にかけ、腹ばいにさせられ、バットやゴルフクラブで数百発も殴られた」と供述した。少年Jは、自分の学力が全国で4000-5000位だったと話したが、通っていた学校は「そんなに勉強ができる生徒ではなかった」と否定した。少年Jはまた「母親が保護者総会に出席すれば、模擬試験の成績を改ざんし、全国62-67位と書き換えたことがばれるのではないかと不安になり、犯行に及んだ」と供述した。しかし、高校3年の息子が母親に「腹ばいになれ」と言われてそのまま従ったということ自体、信じられないものがある。
今回の事件のニュースに接し、多くの親たちは、成績以外の話題で子どもと対話し、心を共有したのはいつのことだったか、子どもが一人で悩みを抱えているのではないかと考え、自分の子どもを見つめ直すことだろう。最近の親たちは、学校の成績通りに幸福が与えられるのではないということを、経験を通じて認識している。だが、親たちの中に、学校で勉強ばかりしていた人たちが人生の脱落者になることが多いという事実を子どもに教えたことがあるのか、自信を持って答えられる人はそう多くないだろう。
少年Jの父親は5年前に家を出て、毎月120万ウォン(約8万円)の生活費を送ってくるだけだった。少年Jの犯行が8カ月も発覚しなかったのは、親戚や隣人を含め、母親の行方を尋ねる人が誰もいなかったからだ。少年Jは夏休みも、秋夕(チュソク=中秋節)のときも、親戚たちと共に集まることがなかった。家族が崩壊し、共同住宅の扉を閉めれば親戚や隣人とのコミュニケーションからも遮断される「社会的な孤立」の中で生きてきたのだ。
韓国の世帯の中で最も多いのは「2人の世帯」(24.3%)で、以下、単身世帯(23.9%)、4人の世帯(22.5%)、3人の世帯(21.3%)の順となっている。昔のような大家族の中では、親に叱られても祖父母やおじ、おばが慰めたり、兄弟姉妹やいとこに悩みを打ち明けたりする過程で感情を鎮めることができた。だが、誰とも交わることがなかった少年Jの家族の人間関係は、母子のゆがんだ関係を正常化するどころか、悲劇的な状況に追い込んでしまった。
2006年現在、健康保険で精神疾患の治療を受けた人は180万人に上り、また09年の自殺による死亡率は人口10万人当たり28.4人と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均(11.4人)の2.5倍に達した。特に深刻なのは青少年だ。OECD加盟国(30カ国)のうち、韓国の青少年の自殺率は1位、幸福指数は25位だった。家族が次第に崩壊し、親戚や隣人とのコミュニケーションからも孤立する状況の中、青少年の精神衛生をめぐる状況はどうなっているのか、しっかり把握するべきときだ。
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