「南シナ海の航海の自由は、米国の国益にかなう」「欧州連合(EU)としては難しいことだが、喜んでバランサーの役割を果たす」―。南シナ海問題が中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の一部との局地的な領有権争いから世界的問題へと急浮上している。
「アジアへの復帰」を宣言した米国は、オーストラリアに海兵隊を駐屯させるなど、南シナ海での制海権を強化しており、欧州連合(EU)も紛争が激化した場合、介入も辞さない姿勢を示している。インドや日本もベトナム、フィリピンとの軍事・経済面での協力を拡大し、中国に対するけん制に乗り出している。ロシアとオーストラリアは、東アジア・サミット参加、米軍への基地提供という形で問題に関与し始めた。
専門家の間では、南シナ海が今後、世界の列強の争う場となるとの見方が示されている。ロバート・カプラン米国防総省国防政策委員は最近、外交専門誌『フォーリンポリシー』への寄稿で「21世紀の戦争は海から起きる。南シナ海が冷戦時代のドイツのように、数十年間にわたり最前線になる」と指摘した。
■資源をめぐる数十年の紛争
台湾海峡からマラッカ海峡に至る南シナ海は、面積が350万平方キロに及ぶ広大な海域だ。ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア、ブルネイのASEAN5カ国は、1970年代から中国と同海域の西沙諸島(パラセル諸島)、南沙諸島(スプラトリー諸島)の領有権をめぐり、対立を繰り広げてきた。74年には中国とベトナムの軍事衝突も起きた。
中国は、歴史的にこの海域は中国の領海だと、主張している。その範囲は南シナ海の面積の86%に相当する300万平方キロに達する。これに対し、ASEAN5カ国は国際海洋法に基づき、200カイリの排他的経済水域(EEZ)を主張している。西沙諸島と南沙諸島の島と岩礁に対する所有権の主張も入り乱れている。紛争の背景には、海底に眠る膨大な資源がある。中国は南シナ海に230億トンの石油、7500立方キロの天然ガスが埋蔵されていると推定している。
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