毎日居間でゴロゴロしている、一日中パジャマ姿で妻の電話の会話に耳をそばだてる、どこにでもついて来ようとする。毎日三食きっちり準備しないといけない…。
定年を迎え、自宅でほとんどの時間を過ごす夫をめぐるエピソードは、急速に高齢化が進む韓国社会では、笑ってばかりもいられない深刻な問題となっている。
韓国保健社会研究院が16日に発表した「少子高齢化社会の国民意識調査」によると、女性の71.8%が「年老いた夫の面倒を見るのが大変だ」と答えた。同じ質問に男性の66.4%も同意した。韓国の男性自らが「年を取れば妻にとって迷惑な存在になる」と認めた形だ。
■高齢化がもたらした試練
それでもこのような調査結果に男性はショックを受け、怒りを覚える。「これまでずっと苦労し、家族の生計を支えてきたのに、引退後に稼ぎがなくなると、妻に見下されるようになった」と嘆く声もある。
大韓家庭法律福祉相談院によると、過去1年間に相談を求めてきた男性の44%が60代以上の高齢者だった。夫婦間の対立や離婚問題で悩むケースが大半で、結婚25年以上の男性相談者が昨年に比べ25%増えたという。
このような現象は30年前には考えられないことだった。1980年には韓国の国民の平均寿命は65.7歳で、安定した職場で65歳の定年まで勤め続ける時代だった。定年後に夫婦が共に暮らす期間は、長くても10年を超えることはまれだった。
しかし近年、高齢化が進み、「寿命100歳時代」が目前に迫っている。50歳前後で早期退職した場合、定年後の夫婦生活は30-40年の長期にわたる。このため、高齢夫婦間の「平和的共存」「トラブル管理」が非常に重要な問題として浮上している。
■適応できない男性
専門家はこうした現象について、どちらか一方が悪いのではなく、定年後30-40年を共に暮らす夫婦が、適応法を知らないことが原因だと指摘する。高麗大の成瓔信(ソン・ヨンシン)教授(心理学)は「年老いた夫が負担になる」という表現は、『嫌だ』とか『憎い』という意味ではなく、『困る』という意味で、『目が覚めると会社に出勤し、夜中に帰宅していた夫が突然24時間ずっと家にいるようになって、何をどうすればよいのか分からないいことが困る』ということだ」と説明する。成教授は「妻は引退した夫の相手をしなければならない上、昼食、夕食まで準備し、気を使わなければなくなる。さらには、定年で落ち込んだ夫の気持ちも慰めなければならない。こうした状況で困らない方がおかしい」と指摘した。
定年を迎えた夫も戸惑っている。経済発展の主役として社会の第一線で働いてきたものの、一人では何もできず、家事といえば、スプーンがどこにあるのかさえも知らなかったからだ。
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