田中雄二の「映画の王様」

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『高瀬舟』日本映画専門チャンネル

2023-03-05 22:50:10 | 映画いろいろ

『高瀬舟』(88)

 罪人を遠島に送るため、京の高瀬川を下る舟に、喜助(岡田吉弘)という男が乗せられた。護送役の同心である羽田庄兵衛(前田吟)は、喜助に屈託がないことを不審に思い、訳を尋ねる。すると喜助は、極貧の生い立ちを語り、体が不自由になった弟が自殺に失敗し、苦しむ姿を見かねて殺したことを打ち明ける。果たして喜助の行為は殺人なのか…。

 安楽死と貧困の問題を問う、森鴎外の原作を中編映画化。監督は工藤栄一、脚本は松山善三、製作・音楽は木下忠司。ナレーションは市原悦子。

 どういう経緯で作られたものなのかは分からないが、必殺シリーズを手掛けたスタッフが参加し、東映京都撮影所で撮られたのだという。それ故、今の時代劇とは違って格調が高く、セットも立派。高校時代に読んだ原作をもう一度読んでみようかという気になった。

 

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『銀河鉄道の父』

2023-03-05 22:14:53 | 新作映画を見てみた

『銀河鉄道の父』(2023.2.16.キノフィルムズ試写室)(3.4.オンライン試写)

 門井慶喜が宮沢賢治の父・政次郎を主人公に究極の家族愛をつづった直木賞受賞作を、成島出監督、脚本・坂口理子で映画化。

 岩手県で質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)の長男・賢治(菅田将暉)は、家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。

 中学卒業後は農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒とわが道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。やがて、妹・トシ(森七菜)の病気をきっかけに、賢治は筆を執るが…。

 これまで賢治を理解しない敵役のように語られることが多かった政次郎を、実は息子を愛し過ぎた庇護者であり、最大の理解者であったという新たな視点で描いてイメージを一新。

 そこから、父と子の愛と相克を軸に、とかく聖人、人格者、理想家として語られることの多い賢治像を、父へのコンプレックスを持った駄目男、ドラ息子としての側面から浮き彫りにしていくところが面白い。

 役所の持つコミカルな味と菅田の持つ狂気性とピュアな感覚が相まって、なかなかユニークな父子像を現出させていた。また、政次郎と賢治、トシに加えて、母・イチ(坂井真紀)、祖父・喜助(田中泯)、弟・清六(豊田裕大)も交えた家族劇として仕上げている。

 ただ、政次郎や賢治の心の揺れを反映させたかったのかもしれないが、無理に画面を揺らしたり、角度を変えて撮る必要はなかったと思う。

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