TAMO2ちんのお気持ち

リベラルもすなるお気持ち表明を、激派のおいらもしてみむとてするなり。

読書メモ:『白蓮れんれん』

2014-11-18 20:53:00 | 読書
 『白蓮れんれん』(林真理子著、集英社文庫)

 貴族というものは不自由だとは昔から言われる。家柄が良いというのも不自由だ。ましてやそこに生まれた女性は。花嫁御寮は金で買われるようにして嫁がされる。ささやかな幸せを願いながらも踏みにじられる。白蓮が宮崎龍介に出会ったのは三六歳の時。「女」であることを諦めているような描写から、お互いに惹かれてセックス付きの逢瀬を重ねるまでになる心の描写に引き込まれる。まるで「黒鳥」のようだ。

 そして、それが当時にあっては「絶対にあってはならないこと」が特に強調されるのが、義妹の初枝の心理描写である。


 「まさか、まさか……」
 初枝の心臓が早鐘をうつ。そんなことがあり得るはずはない。あき子は龍介よりもはるかに年上で、そして夫がいる身ではないか。なのにどうして龍介はそんな目をしてあき子を見るのか。おまけに初枝の位置からだとよくわかる。彼の肘は不自然に張られ、あき子の体に少しでも強く触れようとしているようだ。(中略)
 ついに初枝が負けた。もう何も見るまいと脚本につっぷすように体を唐オたのである。
(p263)(文字化けのため「あき子」と表記)

 社会主義者の赤松らの協力(策略)もあり、世紀のスキャンダルは一応の成功を収めるが、皇室を大事に思う人々からの迫害も含め、凄まじいことがあったんだなあ。フェミニズムやアカが嫌いだった白蓮の味方は彼らになった。白蓮を守るために大本教も関わっていたのか。一方、寝取られ男の伊藤伝右衛門もお見事。白蓮と間男を叩ききってやると息巻く家族や従業員に対して以下のように言って止める。


 「馬鹿もん、何を考えちょる。いったんは俺の女房で、お前らも奥さん、姐さんと読んじょった女じゃなかか。その女に手出ししょうちゅうは何ごとか。いいか、もし何かお前らがしたらな、目ん玉くり抜いて切り刻んでやるぞ。わかったか」
(p393)


 何にせよおなか一杯になる小説だった。林真理子の情念があればこその小説。で、BGMはこれで決まりだな。
https://www.youtube.com/watch?v=Ble4f2e3qXM
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