高校球児 ザワさん 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)三島 衛里子小学館このアイテムの詳細を見る |
……俺は、大学に入ってから酒の席じゃないと人とうまく絡めなくなった。酔っ払わないと、皆のノリに合わせられなくなってた。
無言のままでいられる仲間なんて、俺にはもういないのかなあ。
「高校球児ザワさん(2)」三島衛理子
右投げ左打ち。授業中はメガネを着用。愛読書は横山光輝の「三国志」。日践学院高校1年都澤理紗・通称ザワさんは、野球部唯一の「女子選手」だ。同級生の女の子が男だ化粧だ買い物だと青春にうつつを抜かしている間にも、野球の腕を磨くことに余念がない変人だ。
早朝練習、自主トレ、プロテインを愛飲、筋肉自慢、と偏ったスキルしかないザワさんは、女子なので当然の如く公式大会には出られない。にも関わらず、彼女は努力を続ける。野球が好きだから、そんなシンプルな理由だけで、彼女は周囲の好奇の視線にも、女性蔑視にも耐えられる。夢の舞台には立てなくても、わたしはただ、野球が好きだから。
そんな純粋なザワさんを見て、しかし男どもは不埒な妄想ばかり。無防備かつ天然な彼女の一挙一動に悶えながら、彼らの季節も過ぎていく。
甲子園のシーズンですね。残念ながら我が郷土の代表は負けてしまいましたが、試合はまだまだ続いています。
僕は昔から、野球を見るのが好きでした。自分自身でやろうとはまったく思わないけど、キレのあるストレートや変化球がミットにおさまる姿が好きで、野球の試合となると、テレビ画面に釘付けになってしまいます。社会人になって、休憩の合間ぐらいしか見れなくなったのがすごく悔しい。
冒頭に掲げたのは、作中に登場するとある大学生のつぶやき。徹夜の飲み会明け。始発に乗った彼が見たザワさんたちの有り様が印象深い。皆てんでばらばらにシートに座って、喋るわけでもなく勝手に寝て、駅に着いたら言葉少なに降りて、同じ目的地を目指す。おそらく朝練に行くとこなのでしょうが、その姿がうらやましいって気持ちはよくわかります。彼が失ったものも。事は野球だけに関わらず。
本書の特徴として、試合や勝ち負けをまったくといっていいほど描きません。野球漫画なのに。それはもちろん、作者が勝敗以外のところに価値を見出しているから。ザワさんと共に過ごした高校生活の、なんでもない1シーン1シーンが、それ自体が強烈なメッセージとなって、読者の心におさまるから。
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