はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

3月のライオン

2008-12-05 09:29:39 | マンガ
3月のライオン 2 (2) (ジェッツコミックス)
羽海野 チカ
白泉社

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「3月のライオン」羽海野チカ

 早くに両親を亡くし、親類の間をたらい回しになる寸前を父の友人に拾われ、桐山家の一員となった零。家長が棋士である桐山家には義姉と義弟が1人ずついて、どちらも棋士への道を歩んでいた。才能があったか努力のせいか、それしかすがるとろこのない零はめきめきと棋力を上げ、瞬く間に姉弟を抜き去った。実力の差を見せ付けられた2人はあっさりと将棋を捨て、結果、零1人きりがプロ棋士となった。
 崩壊した家庭への負い目から家を出て1人暮らしをする零。そのあまりにも孤独な横顔を見かねた川本家の3女が、様々な形で零の心の澱をすくい、浄化していく。長女あかりの手料理やかゆい所に手の届く気遣い。次女ヒナ子の抱くある慕情やたわいない会話。三女モモの天真爛漫。だがそうして人の心の中の綺麗なものに触れるたび、逆に零は考える。自分には幸せになる資格があるのだろうか……。
 なるべく傷つかないような距離に身を置こうとする零に接してくるのは三女だけではない。三女の爺ちゃんや勝手にライバル・二海堂、棋士の先輩方、そして次女ヒナ子の思い人・高橋勇介。偶然から行き会った高橋勇介との会話の中で、初めて彼は、人と意識を共有しあえたという感触を得る。優しさにしろ冷たさにしろ、今まで人との対話が一方通行だった零にとって、それは革命的な出来事だった。
 そんな浮かれた気持ちの零に、しかし過去からの使者は前触れなく訪れる。桐山家の長女・香子。かつてプロ棋士を目指しながら、目障りな零の存在のせいで駒を捨てた彼女が、零の前に姿を現した理由とは?

「ハチミツとクローバー」の作者が描く異色作・将棋ベースの青春ストーリー・第2巻。
 かわいらしくて繊細なキャラのタッチは相変わらず。優しさを中心に描いた物語もほこほこと読者の気持ちまで暖めてくれるようで心地よい。将棋シーンはコミカルでいながらもひたすら熱い。将棋を打つことそれこそが人と対話することなのだといわんばかりに、様々な対戦者が登場し去っていく。繰り返す勝敗の中残るのは、成績だけではない心の経験値。
「月下の棋士」しかり「ハチワンダイバー」しかり、将棋漫画ってジャンルのわりに激しいものが多いのだが、本作は少女漫画家らしい独特の解釈の仕方が目新しく面白い。早く続きをとは思うが、このペースではまだまだ先かな……。