はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

金田一少年の事件簿~雪霊伝説殺人事件~

2007-07-20 22:19:32 | マンガ
「金田一少年の事件簿~雪霊伝説殺人事件~」原作:天樹征丸 漫画:さとうふみや
 
 推理漫画のさきがけ。「金田一少年の事件簿」シリーズ最新巻は上下巻同時発売。今回のテーマはもはや古典といってもいい「閉ざされた雪の山荘」。
 シリーズの第一部が終了した時に、チャリンコで全国を放浪していたという設定になっているはじめ。そのはじめがかつて命を助けたことのある資産家・氷垣岳史が死に至る中、ひとつの遺言が残された。それは氷垣の遺産の一部(といっても8億)を彼が山に関して世話になった人たちに提供しようというものだった。
 もちろん条件はある。北アルプスの氷壁岳5合目に建つ山小屋・雪稜山荘に相続資格者8人を集め、3日間共に過ごすこと。ただしひとりでも欠ければ欠けた分の遺産は残りの人数分に再分配される、ときてはきな臭い香りがぷんぷん。幼なじみの七瀬美雪が心配する中、はじめは天にも昇る気持ちで山へと向かった。
「雪よ山よ我らが宿り~♪」なんて盛り上がるはじめたち。目付け役として美雪が呼んだ警視庁捜査一課の剣持警部とともにたどり着いた雪稜山荘には、一癖も二癖もありそうな連中が集っていた。
 陰気な管理人。仮面をかぶった弁護士。仲の悪い双子。元(?)カップル。雪稜伝説を語る中年登山家。陽気な女子大生。地元の高校生。ささやかな晩餐を共にした相続人たちはそれなりに打ち解け、3日後の相続日を楽しみに一夜を過ご……せるわけもない。相続人のうちひとりがいなくなったと思ったら、なんと密室状況の部屋の中で氷漬けになっているところを発見された。しかもその胸にはピッケルが突き立っていて……。
 古典的なテーマをもとに天樹征丸が味付けしたストーリーラインは、とくに目新しいところもないが、この手の作品は「シチュエーションだけで読める」ものだし、どっしりと落ち着いた安定感は悪くない。豪雪の中のウエットなエンディングも後味のよい余韻を残す。
 はじめと美雪の仲は相変わらず進展しないが、キャラそのものの動きがちょこまかとしていて楽しい。そのへんはさとうふみやの成長だろうか。シリアスパートとのメリハリがきいている。
 佐木1号やはじめのママ。下巻のおまけでは速水玲香やいつき陽介も元気に登場するし、シリーズ通してのファンも納得のボリュームで、これは素直に「買い」だろう。