はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

惑星のさみだれ③

2007-07-02 22:36:50 | マンガ
 東雲三日月が姫に惚れた。
 東雲三日月に姫が惚れられた。
 明るく爽やかな人気者三日月。
 無様に立ち尽くす根暗メガネ夕日。
 三人の運命や如何に?

「惑星のさみだれ③」水上悟志
 
 地球破壊を目論む姫と下僕のハードボイルド第三巻は、やっぱりそんな軟弱なストーリーではない。より正確には、そういうラブコメパーツも含むことは含むのだが、構成成分の10%も占めてはいない。今回の主軸は獣の騎士団勢ぞろいと魔法使いアニムスの登場。そして何より夕日のトラウマの昇華。克服ではなく、一歩踏み込んでの昇華。

 自分のために命を落とした犬の騎士ルド/東雲半月。その瞬間を目撃した恐怖のあまり、泥人形を目前にショック状態に陥る夕日。そんな彼を守るために、今度は蛇の騎士シア/白道八宵が犠牲になりかけている。
 このままじゃいけない。また、自分のために誰かが死ぬ。さみだれに助けられ、半月に助けられ、今度は白道まで……? 冗談じゃない。そんなのダメだ。もう絶対、誰も死なせるもんか。
「姫に何度助けられたか……。東雲さんにも助けられ、挙句死なせた……。ぼくは確かに無力で臆病な役立たずの貧弱根暗メガネだよ。でも……でもヒーローになりたいんだっ!! 誰かに助けられっぱなしじゃ駄目なんだっ!!」
 彼が欲したのは勢い。誰かのヒーローになること。
「ノイ!! お前もそうなんだろ!? シアや……ルドに助けられ、ずっと自分の無力を噛み締めてきたんだろ!? わかるぞ、お前の望み。言えよ。ぼくを頼れよ。友達だろ!?」
 先の戦いで命を救われた蛇の騎士・シアの窮地を目前に、夕日はノイに語りかける。ぼくがなんとかしてやる。ぼくがお前のヒーローになってやる。その勢いをバネに、戦意を刃に、彼は自力で鎖を断ち切り、泥人形へ突撃を敢行した……。 

 熱さは、このシリーズの一番いいところだろう。怒涛の展開と戦況に振り回されながらも飲み込まれることなく自分の立ち位置を確保し、体当たりで突破口を切り開いていく夕日の姿は、まるで少年漫画のヒーローを見ているようで微笑ましい。もちろん、それだけじゃないところがいいとこなんだけど。