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はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

ランド・オブ・ザ・デッド

2007-06-25 23:31:00 | 映画
 川を見ていた。
 水面には電気の光りに輝く高層ビルが映っていた。
 彼はしばらくその光景に見とれたあと、やがて無造作に一歩を踏み出した。

「ランド・オブ・ザ・デッド」監督:ジョージ・A・ロメロ

 近未来、地上のほとんどをゾンビに支配された人類は、要塞化した都市を築きそこに立て篭もるように生活していた。元はピッツバーグと呼ばれていたその街も、そうした多くの例に倣い、三方を川に囲まれた土地を防護フェンスで覆っていた。高層ビルに住む富裕層とその周りに這い蹲うようにして住まう貧困層。カウフマン(デニス・ホッパー)の指導のもと、厳格なる身分制が敷かれていた。
 ライリー(サイモン・ベイカー)は、武装した傭兵隊を率いて外界を探索するのを生業としていた。廃墟と化した街や店を物色しては食料や薬品、衣類に燃料などの生活物資を調達し、貧困層と富裕層に分け隔てなく供給していた。幾多の修羅場を潜り抜け、何千体ものゾンビを観察してきた彼は、ある疑問を抱いた。
 ゾンビが知恵をつけ始めているのではないか。
 未熟な会話(奇声)。道具の使用。生きていた頃に戻ることを追求したゾンビたちが、そのために成長している。それは身の毛もよだつような恐怖だった。
 厭世観を感じ、傭兵を辞めて車を手に入れ、北はカナダを目指そうと思い立ったライリーは、しかし車の入手のトラブルから人を殺してしまい、牢にぶち込まれることになる。だが、カウフマンに反旗を翻し武装蜂起したライリーの部下チョロ(ジョン・レグイザモ)を討つことを条件に釈放される。
 お供は顔面に大火傷を負って傍目にはゾンビにしか見えないガンマンのチャーリー(ロバート・ジョイ)と、見世物でゾンビと戦わせられていたところを助けたスラック(アーシア・アルジェント)、カウフマンの部下にして目付け役のマノレッティ、モニカ、ビルズベリーの3人衆。合わせて6人の混成部隊。彼らはピッツバーグへの大規模侵攻を開始したゾンビ軍団と擦れ違う形で街を出た。チョロの持つ装甲車を奪還し街へ戻るのが早いか、街がゾンビ軍団の猛攻の前に沈むのが早いか、多くの人の命を賭けたレースが始まった……。
 お見事、の一言に尽きる。20年ぶりにメガホンを持ったジョージ・A・ロメロ。まったく腕は衰えていない。彼独特の、人間っぽさの残ったゾンビや、ゾンビのいる世界で過ごすということの表現にむしろ磨きがかかっている。質感や空気すらもリアルに感じられるゾンビ映画なんて、滅多にお目にかかれるものではない。
 題名のランド・オブ・ザ・デッド(ゾンビの国)も、意味合いが深く作品に染みこんでいい味を出している。自分達の居場所を求めてさすらう死者の軍団と、楽園を夢想して北を目指すライリー。二つのさ迷える魂の彷徨の行く末を描いたラストは、斬新で、叙情的で、尾を引くような寂しさを湛えている。ファースト・ワンは、同時にグレート・ワンでもあるのだと、しきりに感動させられた。

ボアVSパイソン

2007-06-25 12:21:49 | 映画
「ボアVSパイソン」監督:デヴィッド・フローレス

 現代は「BOA VS PYTHON」とそのまま。「異生物同士の対決も飽きたから、そろそろ同種やってく?」、「いいねー」みたいな軽いノリを感じるバカ映画。
 巨大パイソンを密輸して狩猟しようとしていた若きカジノ王ブロディック(アダム・ケンドリック)。ボアという名のプロレスラーとパイソンという名のプロレスラーの対戦を見ながら美女とのひと時を楽しんでいた。しかしその頃パイソンを輸送していたトラックに問題が発生する。眠りから覚めたパイソンに鎮静剤を打ち込もうとした運び屋たちが全滅し、解放されたパイソンは洲の浄水場へ侵入する。
 場所が場所だけあって薬剤を流し込むことはできない。FBI捜査官シャープ(カーク・B・R・ウォーラー)は軍の展開と一帯の封鎖を施しつつ、二人の人間に協力を依頼した。ヘビの研究者エメット博士(デヴィッド・ヒューレット)と、イルカの研究者モニカ(ジェイミー・バーグマン)だ。エメット博士の飼育した巨大ボアにモニカの製作したAIチップGPSその他の機器を装着し、パイソンを追わせることにした。
 当初、追跡は上手くいっていたのだが、GPSからの情報をキャッチできなくなり、勇み足の軍人たちやブロディックの仲間の金持ちハンターなどの勢力が入り乱れ、浄水場は混沌と悲鳴の坩堝と化した……。
「エイリアンVSプレデター」、「フレディVSジェイソン」、「ゴジラVSメカゴジラ」……最後のは近いかもしれないが、異生物対決ものは世に多い。しかしまさか巨大ヘビと巨大ヘビを戦わせようとした人はこの人以外にいないだろう。しかもボアとパイソンじゃ生物学的にもそれほど大差ないし。戦う方法も基本噛み付き、巻きつきのみ。絵になるんだかならないんだかわからんじゃないかと思いながら借りてみたら、やはりB級。装備の貧弱すぎる金持ちハンター連中。装甲車からバズーカまで装備は充実してるが前線の部隊は小銃しか持っていないちぐはぐな軍など、つっこみどころ満載。縄張り争いの習性を生かして戦わせようとしたらオス(パイソン)とメス(ボア)だったから交尾しちゃったりするし、ほんとおバカな映画。ピット(赤外線感知器官)を眩ませて逃亡しようとするところなどは「おっ」と思ったものの、まあそのくらい。フルCGのヘビもあんまり迫力あるとはいえない。影のテーマがエメット博士やモニカの持つヘビへの愛情なので、ヘビ同士の激しい戦いを思い描いた人にはおすすめできない。

しゃべれどもしゃべれども

2007-06-02 23:15:20 | 映画
「しゃべれどもしゃべれども」監督:平山秀幸

 今昔亭三つ葉(国分太一)は、古典落語に打ち込む若者。他の若者のように新作を作らず、普段着も着物で通す頑固一徹の若者。しかし情熱のわりに目は出ず、寄席の最中に客に席を立たれるなど屈辱に満ちた日々を送っていた。ある日師匠の小三文(伊東四朗)の仕事で同行したカルチャースクールの話し方セミナーで、最後まで話を聞かずに教室を出る女・十河(香里奈)を目にする。自分の話を聞いてくれない観客と十河の姿をだぶらせた三つ葉は、あとを追いかけ分のない説教をする。「俺の寄席を見に来い」とはいえず、小三文の落語を聞きに来るよういうが、当日三つ葉の目の前に座っていたのは来るはずのないと思っていた十河で、三つ葉は動揺のあまりボロボロの芸を披露してしまう。さぞや嘲笑われるだろうと思っていた三つ葉だが、案に相違して十河は話し方を教えてほしいといってくる。他に、関西弁をクラスでバカにされ、いまいち馴染めないでいる村林(森永悠希)。技術はあるが弁の立たない元野球選手で現役解説者の湯河原(松重豊)の二人を加えた三人の生徒が集まり、三つ葉の落語教室はスタートするのだった。
 根っから頑固で不器用な三つ葉と、わがまま放題の生徒達だ。流れのままにとりあえず開いただけの教室がうまくいくはずもない。言い争い、喧嘩、指導放棄。何度も崩壊の危機を迎えながらも、生徒ひとりひとりがひとつの落語をマスターするところまでなんとかこぎつけた。だが三つ葉が想いを寄せていた女性にフラれて自暴自棄になり、村林がクラスの番長との野球対決に敗れて家出し、十河が三つ葉と喧嘩して教室に来なくなり……。
「一瞬の風になれ」で有名な佐藤多佳子の原作をもとにした人情映画。個性豊かな登場人物たちがそれぞれに挫折の苦悩を味わいながら、落語と他人との濃い接触関係により自分を見出していく様が情感豊かに描かれている。下町の夏、というどこか郷愁を思い起こさせる背景も手伝い、ほのぼのと心に染みる佳作に仕上がっている。
 松重豊の落語はまったうまくならないものの(役回り上)、国分太一、香里奈のそれは上達のあとがうかがえる。お手本通りにやってるなー、という感は拭えないものの、見ていて不安がないのはすごい。しかしなにより森永悠希だ。この映画最大のめっけものは彼。関西弁を使い倒し、話すように落語をする彼の表情には、作り物か素か見分けのつかない天真爛漫な笑顔が浮かんでいる。「落語好き! むっちゃ楽しい!」全身からあふれる喜びのオーラが観客の笑いを誘う。関西オーディション上がりの新鋭が、素晴らしい演技を見せてくれた。

バタリアン5

2007-05-30 19:02:51 | 映画
「バタリアン5」監督:エロリー・エルカイェム

 うわー懐かしい、ひさしぶり! と思ってパッケージを手にとったらすでに「5」だったバタリアン(いつの間に……)。とくに愛着があるシリーズではないけれど、「Brain(脳みそ~)」というフレーズとともに人を襲うゾンビの姿が見たくなったのでそのままレジに向かった。
 前作バタリアン4(見てない)で、ハイブラテック社からゾンビ化の薬、トライオキシン5のドラム缶をこっそり家に持ち帰ったチャールズ(ピーター・コヨーテ)。怪しげな黒服の連中(実はインターポールの内偵者)に売りつけようとしたところ、隙をつかれてゾンビに後頭部をがぶりとやられて死んでしまう。
 チャールズの甥にして前作の生き残り組みの一人ジュリアン(ジョン・キーフ)は大学生活を満喫するおバカな学生に成り下がっていたが、叔父の遺品の整理中に見つけた隠し部屋でトライオキシン5を発見する。友人でこれまた生き残り組みの科学オタク・コーディー(コリー・ハドリクト)に分析を依頼するが、トライオキシン5のドラッグに似た薬効に気づいたコーディーは、ジュリアンに内緒で一儲けを企み、密売人のスキートと組んで新ドラッグZとして学内にばら撒いてしまう。折しもハロウィンのシーズンに差し掛かった学内はパーティー気分に浮かれていて、レイブパーティーの会場にもZが出回り、大混雑の中でゾンビ化が始まり、そして惨劇の幕が開くのだった……。
 彼氏のあそこに噛み付いたり、チアガールの尻にかぶりついたりとげらげら笑えるシーンが豊富にある。ゾンビ化したネズミというのは恐ろしい素材だし、復活したタールマン(ドラム缶の中に入っていた)などシリーズ通してのファンへの訴求も忘れない。B級とはこうあるべしという見本のような映画だ。
 一番面白かったのはインターポールの二人組。車1台分のゾンビを殺すのにいきなりバズーカ取り出してみたり、混乱の極みにある会場で流れ弾を気にすることなく銃を乱射してみたりとやりたい放題。最後は手に負えなくなったゾンビを始末するのに呼んだ軍のヘリにいいところをさらわれたけど(躊躇なく銃を掃射したあげくミサイル落とした)、非常に良いインパクトを残してくれてた。
 逆にがっかりだったのはタールマン。復活してまもなく二人組に銃撃され、そのまま逃亡。ヒッチハイクするも誰にも乗せてもらえず、そのままいずこへともなく歩いていった。ゾンビ化ネズミとともに大暴れを期待していただけに、肩透かしの寂しさは拭いがたい。
 ともあれよい映画だ。ストーリーは破綻してるし、ツッコミどころも満載だけど、B級らしい脱力感に満ちている。

ワイルドスピード×3 TOKYO DRIFT

2007-05-30 16:12:46 | 映画
 僕らはルールに縛られない。未来も過去も曖昧な、その瞬間の中でのみ走り、息をする。

「ワイルドスピード×3 TOKYO DRIFT」監督:ジャスティン・リン
 
 米国よりも日本で大ヒットを記録したカーアクション「ワイルドスピード」の3作目。そのことを意識してか、今度の舞台は日本となっている。
 車に情熱を傾ける米国の高校生ショーン(ルーカス・ブラック)は、たびたび問題を起こしては少年院に入れられないために引越しを繰り返していた。今回もアメフト選手とその女を巡ってのくだらないいざこざの末に愛車を廃車にし、少年院に入れられる寸前に引越しすることを決意した。今までと違うのは母親がついてきてくれないこと。あまりの息子の無軌道ぶりに愛想を尽かし、遥か昔に別れた夫のいる日本へ放逐した。
 在日米軍の父とのぎこちないコミュニケーションや慣れない日本の高校生活の中でストレスをためたショーンは、同級生のトゥインキー(バウ・ワウ)に誘われ、深夜の立体駐車場へ赴く。そこは若者達の溜まり場になっていて、夜な夜なレースをネタに盛り上がっていた。徹底的にチューニングされた中身、スポコン(スポーツコンパクト)風に飾り立てられた外見、まばゆい車の洪水の中にはこれまた輝くような美女たちが群れている。酔ったような幻惑されたような気分になったショーンは、学校の同級生であるニーラ(ナタリー・ケリー)と一緒にいるところをタカシ(ブライアン・ティー)に見つかる。タカシはDK(ドリフトキング)と呼ばれる走り屋たちの帝王で、ヤクザ(千葉真一)を叔父に持つこともあり、その界隈では誰もが一目置く顔だった。ドリフトのドの字も知らないショーンは、タカシとの戦いに成すすべなく惨敗する。
 ハン(サン・カン)の貸してくれたシルビアをぼこぼこに壊してしまったショーンは、ハンがやっていた借金の取立てを代行して負債を返すことにした。同時にドリフトを習い、タカシに一矢報いようと日々牙を磨いていく。
 最初は金によってのみ結びついていたショーンとハンだが、同じ時を過ごし友情を育み、やがて大切な友人となった。だが世の中何事もうまくはいかない。ハンがタカシに納めていたパチンコ屋のアガリを掠めていたことがバレたところから、一気に話は加速する。夜の渋谷でのカーチェイスの末にハンは事故死し、ショーンはタカシの叔父を調停役にしたタイマンレースに挑む。
 日本発祥のドリフトという技術をピックアップしたこと。スターター役の妻夫木聡や釣り人役(なぜ……)の土屋圭市のスポット出演など個人的にはどうでもいいのだがファンには嬉しい演出も散見されることなど、随所に日本びいきの見受けられる映画だ。しかしそれについては良い部分も悪い部分もあって……。
 前2作と異なる在日外国人の青春ムービー+ドリフトといった内容で、「ワイルドスピード」の名を冠することに疑問が残る。勘違い外国人の偏った日本感もバタ臭いを通り越してはっきりとくどいし、ストーリーも適当。とはいえ根幹を成す「走り」はさすがの出来だ。スピードとスタントだけだった前2作との最大の違いであるドリフトを使ったレースシーンがとにかく素晴らしい。ランエヴォ、フェアレディZ、RX-7にシルビアと、ぎりぎりにチューンされた日本車の奏でるスリップ音が耳に心地よい。見ているだけですっとするような映画なのだ。 

ハウス・オブ・ザ・デッド2

2007-05-26 11:50:13 | 映画
「ハウス・オブ・ザ・デッド2」監督;マイケル・ハースト

 ゾンビファンの持つ源流に対するオマージュ、というのは一般の視聴者が考えるよりも強く深い。「ジョージ・A・ロメロの作った砂場で遊んでいる」という製作者のコメントが、それを端的に表している。源流から生み出されたゾンビという強烈なキャラクターをどのように生かすのか、どのように脱却するのか、創意工夫のもとに生み出された数々の名作駄作の末に位置する作品のひとつがこの「ハウス・オブ・ザ・デッド2」だ。散々な結果に終わった前作のイメージを払拭するため、監督も方向性も随分と変わっている。
 息子ルディーが連れてきたアリシア(この辺は前作を見ていないと分からない)を復活させるため、キュリアン教授(シド・ヘイグ)は大学の科学実験ラボで秘密の研究を続けていた。それは遺体に特殊な薬品を注射するというものだった。遺体安置所から材料を運び込んだのが大学側にばれたため、やむなく「自ら」遺体を製造したキュリアン教授は、その日もいつものように注射をした。だがこの日に限って実験は成功し、遺体は超人類(ハイパーサピエンス)として復活する。深夜の科学実験ラボから惨劇は始まるのだった。
 超人類に占拠された大学に、対超人類の国際組織AMSと米軍の特殊部隊が乗り込んだ。目的は事の発端である0号ワクチンを採取し、抗ワクチンを作ること。AMS隊員であるアレックス(エマニュエル・ヴォージア)とエリス(エド・クイン)は、特殊部隊と仲違いしながらも徐々に源流に迫る。しかし0号ワクチンを製薬会社に売り渡そうと暗躍する特殊部隊員に裏切られる。すでに身に帯びる寸鉄もなく、途方に暮れたエリスは……。
 大学コメディのように始まったり、超人類の血を媒介する蚊(!)がいたり、超人類の血と臓物を身に帯びてなりすましを謀ったりと、源流に迫りかつ脱却する試みは買う。ストーリーもわりとまとまっているし、特殊メイクもなかなかの出来だ。特殊部隊の有り得ない無用心さや、なんだかんだで傷つかないアレックスとエリスのしぶとさも、B級映画として見る分には問題ない(それがB級)。だけどこれ、「ハウス・オブ・ザ・デッド」である意味がないのではないだろうか。記号や設定こそわずかに生かしているものの、ガンシューティングをもとにした意味をうかがわせるようなものが一切ない。最後の戦闘で使う武器が短剣と手斧なのを見て、ふと悲しい気持ちに襲われたのだった。

ハウス・オブ・ザ・デッド

2007-05-23 21:40:52 | 映画
「ハウス・オブ・ザ・デッド」監督:ウーヴェ・ボル

 音楽・ダンス・酒・ドラッグ。ハッピーでおバカな若者たちで埋め尽くされた会場は、惨劇の舞台と化した。孤島でのパーティーに向かう船に乗り遅れたサイモン(タイロン・レイツォ)ら一行は、港に居合わせたカーク船長(ユルゲン・ブロホノフ)に孤島までの送迎を頼む。しかしそこは狂った神父の住むと呼ばれる呪われた島だった。一行が着いた時にはすでに若者達の姿はなく、島中に不気味な生き物の気配が立ちこめていた……。
 詳しい説明はいらないだろう。平穏→突然の襲撃→混乱→死闘と典型的な流れを見せるゾンビ物だ。通常と異なるのは「アローン・イン・ザ・ダーク」で「やらかした」ウーヴェ・ボルが監督だということ。同じホラーゲームを題材としていても、もとがガンシューティングであるということだ。
 以前の失敗のことを思い出し、暗澹とした気分での鑑賞となった。たしかに悪い点はあったが、改善できそうな部分も見られた。ダメな部分は変わらない。人物描写も盛り上げ方も中途半端で、見るからに「無駄」が多い。良いところは原作に影響を受けたガンシューティングの部分。島に隠されていた大量の重火器を手にした一行が、ゲームさながらのドンパチを繰り広げるシーン。デザートイーグル、短機関銃、焼夷弾に手榴弾に古風なカトラスまで。多彩な武器を手にした一行が圧倒的な火力でもってゾンビの群れを駆逐する姿はなかなかに気持ちがいい。邦画「ヴァーサス」を思わせるような(あれよりは遥かにレベルが低いけれど)展開が見られたことが嬉しかった。
 しかし、さすがはウーヴェ・ボル。やっぱり最後は息切れする。ガンシューティングパートが終わったあとは「え? なにそれ?」と叫んでしまうほどの勢いでストーリーを畳んでしまう。申し訳程度にゲームへの繋がりを思わせるようなラストを付け足しはするものの、時すでに遅し。「バイオハザード」や「サイレントヒル」のような一線級には及びもつかぬB級ぶりをアピールしてしまったのだった。

サイレン

2007-05-18 21:51:53 | 映画
サイレンが鳴ったら家から出てはいけない。
サイレンのある丘の上の鉄塔に近づいてはならない。

「サイレン」監督:堤幸彦

かつて、たった一人の生存者を残し、島民全員が消息を絶ったという忌まわしき過去の残る夜美島。事件から29年経った今も、その傷跡は決して消えていない。島のそこここに点在する廃屋。惨劇の記憶を残す血の跡……。
天本由貴(市川由衣)は、病弱な弟・英夫(西山潤)の転地療養のため、夜美島を訪れた。何十年も人の住んでいなかった廃屋を住めるように掃除し、英夫の面倒を見、仕事以外に気の回らない父・真一(森本レオ)の身の回りの世話をし。気のいい青年医師南田(田中直樹)にも助けられ、どうにかこうにか島での暮らしに慣れてきた頃、事件は起こった。夜行性動物の撮影に出かけた父が帰ってこなかったのだ……。
島中に鳴り響くサイレンの音が印象的な本作は、そのあまりの怖さ、不気味さによってCM放映が中止されたという伝説のゲーム「サイレン」の第2作目を原作にしたホラームービーである。メガホンをとったのは「ケイゾク」、「トリック」、「IWGP」などで名を馳せた堤幸彦。キャスト陣も主演を除いてはクセ者揃いで、個人的にかなり期待していた作品だった。だった。過去形。打ち砕かれたというニュアンスをこめた。正直とてもつまらない作品だった。かつて「トイレの花子さん」で異彩を放った堤幸彦だから、きっとホラーも大丈夫だろうと油断していたらこの体たらく。非常に不愉快な気持ちにさせられた。
ひっぱりすぎた。由貴が島民に襲われるまで時間がかかりすぎ、だれてしまった。しかもいざ襲ってみてもあまり怖くない。画一的な「ゾンビアクション」は子供だましの域を越えていない。オチもひどい。ひと昔前のサイコスリラーのようだ。「視線の行方と小道具により暗示していた真相」で観客を驚かせるつもりだったのだろうが、驚くよりも先に唖然としてしまった。世の中にはつけていいオチと悪いオチがある。
森本レオや嶋田久作のゾンビアクションなんてこの先一生見られないだろうから、希少性という意味で見るのはよいかもしれない。すくなくとも話のタネにはなる。それ以外の目的での鑑賞はお勧めできない。

アローン・イン・ザ・ダーク

2007-05-11 20:47:55 | 映画
「アローン・イン・ザ・ダーク」監督:ウーヴェ・ボル

今からもう十年以上も昔のことになるのか。その頃俺が持っていたPCはPC-8801FEだった。価格こそ安いものの性能では遥かに98シリーズに劣った。当時隆盛を極めていたのは98シリーズで、クオリティの高いゲームソフトはほとんど98。88シリーズに移植されることはほとんどなかった。蚊帳の外にいながら、ログインなどのパソコンゲーム雑誌で定期的に情報だけは摂取していた。ゲームの攻略記事を読みながらプレイ感を妄想するという楽しみを見出した俺は、当然の如くこのゲームでも遊んだ。人里離れた古めかしい洋館。ランプでは照らしきれぬ暗闇の中からいつ飛び出してくるとも知れぬ異形の存在に怯えながら、サーベルを片手に探索を続ける主人公……。シックなバイオハザード、といったゲーム内容で多分間違いないように思う。雰囲気のある作品だった。クトゥルー神話を底流にした禍々しさは、今も肌が覚えている。
本作は、ゲーム「アローン・イン・ザ・ダーク」を映画化した作品だ。もちろん主人公はエドワード・カーンビー。シリーズ通して私立探偵という役回りだった彼の出自が、今回は明らかにされている。
超常現象の調査員カーンビー(クリスチャン・スレイター)は、古代アビカニ族の遺物を手に空港に降り立った。アビカニ族は、高度な文明を持ちながらも闇の世界への門を開けてしまったがために、門の向こうから現れた悪魔に滅ぼされてしまった悲劇の一族だ。同時に闇の世界との扉を開ける鍵を持った一族でもあるため、カーンビーはタクシーに乗るなり遺物を狙う謎の男の襲撃を受けてしまう。謎の男を操っていたのは気の触れた考古学者で、カーンビーはその考古学者に人体実験の被験者にされかけたという過去を持っていた。さらに謎の男は耐悪魔殲滅特殊部隊アーカム713の元一員で、カーンビーは同部隊の指揮官だったという過去も持つのだった。
再び闇をこの世に現出させようという気の触れた考古学者の野望に共に立ち向かうのは、カーンビーの元恋人にして人類学者のアリーン(タラ・リード)。現アーカム713指揮官バーク(スティーブン・ドーフ)と713部隊。人類の命運を賭けた戦いの行く末は……。
なんて。どういいつくろっても駄作なのだ。ゲームのファンも、映画から入った人も怒り出してしまうほどの適当な造り。蛇足の出自。無駄な濡れ場。舞台背景や細かな設定こそゲームのそれを流用しているものの、出来上がりはもろエイリアンかレイダース。暗闇の中で防御陣地を築く713部隊とジーノム(エイリアンもどき)との総力戦など、見せ場はそれなりに作ったものの、すべてを台無しにしてしまうような腰砕けのラストもあり……とにかく、あまりおすすめはできない作品なのだ。

トロイ

2007-05-01 09:15:29 | 映画
「トロイ」監督:ウォルフガング・ペーターゼン

古代ギリシアの都市トロイに対して、ギリシア諸都市を束ねるミュケナイ王アガメムノン(ブライアン・コックス)が攻め入った。総勢10万(映画内では5万)、1000隻にも及ぶ大軍勢の先頭に立つのは勇者アキレス(ブラッド・ピット)率いる1隻の船と僅かな手勢。「1000年後にも名の残る英雄になる」と鼻息荒く、アキレスはトロイの浜に降り立った。ファランクスで弓兵を蹴散らし、群がる歩兵を薙ぎ払い、切り倒し、アポロン神殿を落とすや否や、神像の首を切り落とす蛮行を働く。
一夜にして敵地上陸を果たしたミュケナイ軍は、その日一人の巫女を捕らえた。トロイ王プリアモス(ピーター・オトゥール)の娘ブリセイス(ローズ・バーン)だ。美しく勝気な彼女を奴隷にし、狼藉を働こうとしたアガメムノンに剣先を向けたのは、しかし味方であるはずのアキレスだった……。
ホメロスの英雄叙事詩『イリアス』、『オデュッセイア』などを元とする神話上の戦争を描いた本作は、人間ドラマを軸にすることで神話を違った角度から描写することに成功……した……。きっぱり断言できないのは映画の出来自体がそれほどよくないからだ。
問題点は二つある。ひとつは戦争の起こる理由が馬鹿げていること。トロイの王子パリス(オーランド・ブルーム)がスパルタの王妃ヘレン(ダイアン・クルーガー)を不倫の末に本国へ連れ帰り、そのことによってアガメムノンの弟であるスパルタ王メネラオスとの間に決定的な断絶が生まれたのが原因とされていること。神話上間違ってはいない解釈なのだ。なのだが、大真面目にそれをされてしまうと冷めた気持ちになってしまうのも事実。
もうひとつはひと月にも満たない期間でトロイア戦争を終結させてしまったこと。神話では10年にも及ぶ長きに渡る戦いの末に両軍に厭戦気分が満ち満ちたところで、例の木馬でカタをつけるオデュッセウス(ショーン・ビーン)の奇策が生まれたわけで、インスタントラーメンのような早仕掛けには呆れるばかりだ。もう少し落ち着いて作品を作りこんでほしかった。
散々な感想だが、いいところがないわけでは決してない。縦横無尽に戦場を飛び回るブラッド・ピットの活躍は爽快だし、ヘクトル(エリック・バナ)との一騎打ちもイケメン同士で見栄えがする。トロイ軍とミュケナイ軍の大激突はなかなかの迫力。弓矢を扱うオーランド・ブルームというちょっとしたギャグなども利いていて、映画館で見るのでなければ我慢できるレベル……なんだ、やっぱりいいところがほとんどない。