●
交渉相手、所有者の話についても補足的に書いておく。
4月に前所有者から物件を買い取って引き継いだ某社は
上場しており、有価証券報告書等のIR資料も公開されている。
それを見るまでもなく、HPには「権利調整ビジネス」等の言葉が
散見されるのだが、有報の事業内容を記載した箇所を確認してみた。
そこには、老朽化して収益を上げることの出来ない借家権付土地建物、
いわゆる「居抜き物件」を土地建物所有者から買い取り、借家権者に
退去を依頼、明け渡し交渉を経て賃貸借契約を合意解約、完全所有権とし、
空き物件となった土地建物(必要に応じて建物解体後の更地)を、不動産
仲介会社を通じて不動産会社や事業会社、個人に販売する、との記載がある。
●
だから、最初から普通に賃貸マンションの管理運営をするつもりなど
なく、入居者を合意退去させて転売することを目的に取得したのだろう。
にも関わらず、前所有者から買い取って老朽化診断を行ったところ初めて
老朽化の事実が判明したので退去してほしい、といった説明に終始している。
恐らく、入居者のうち有価証券報告書までチェックしたのは自分だけではない
だろうか、実態は立ち退き交渉と転売を手がけるニッチな専門業者だったのだ。
●
...という話を、第1回交渉で有報のコピーとともに所有者に突きつけた。
所有者側の交渉人は一瞬目を丸くしていたが、すぐに落ち着きを取り戻し、
「そんなことを入居者に対して説明する義務はない」とノーコメントを貫いた。
まあ、そこを認めたら交渉にならないし平行線なのだろうな、と思ったが
それを言うならこちらだって借地借家法の解釈に基づけば退去の義務はない。
相手の手の内は分かっているつもりだが、無駄なところで議論にエネルギーを
費やすのも交渉としては不毛だと思うので、それ以上の突っ込みは止めておいた。
●
大人の対応ですかね(-_-;