治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

「愛着障害は治りますか?」ができるまで その11・完 恩返しのフェーズへ

2016-10-28 05:32:15 | 日記
「治りたい」「治ってほしい」と思う人がいるのは当然のこと。
それがあたかもいけないように言われることに疑問を持ちながら仕事をしてきました。

なぜ「治りたい」という言動が忌み嫌われるか。
それは本質的に愛着障害を背負った人口の多いギョーカイでギョーカイ人たちのトラウマを刺激してしまうからでした。

なぜ自立させずに囲い込むような支援が行き渡っているのか。
それはギョーカイ人たちが心の傷を癒すのにはいつまでも弱者でいる存在が必要だったからでした。
当事者を対等な人間として扱わないのも
保護者に妄想接待するのも
結果として「健常者に人権なし」になってしまうのも説明がつきました。

なぜその中で私が「治そうよ」と言い続けたか。
「その支援、社会から切り離されているよ」と言い続けたか。
それを叩かれてもひるまなかったか。
それは私が育ちの中で他人の顔色を伺わずにすんできたからでした。


でもこれは、私自身の努力で得たものではありません。

しっかり愛された人間を一人生み出すには
たくさんの人がかかわっています。

両親。先祖たち。
そしてそれを支えた人たち。
空襲で焼け出された女の子を温かく迎え入れた渥美半島の人たちの親切心もまた、私に注ぎ込まれています。

私はこの資質を自力で得たのではないから
独り占めしてはいけないのです。

だから、たたかれようと悪口言われようと嫌われようと、自分にとって正しいと思った道をこれからも歩くでしょう。そして考え方がはっきり外からもわかるからこそ、また仲間と出会うのです。

私はこれからも「治ろうよ」っていうと思います。
そしてこれからもある場所では支持され、ある場所では叩かれて嫌われるでしょう。

それでも私の土台は揺るがない。

なぜなら

なぜなら

Because

Because I am a beloved daughter and wife.

I was born to be a beloved daughter and wife.

だから、私の立つ地面は揺らがないのです。

だから、へっちゃらなのです。

そして私のへっちゃらな性質ゆえに生み出した本たちが治る人を増やすとき

私は自分の愛情に恵まれた育ちを他者の幸せに還元できるのだと思っています。

(完)

=====
愛着障害は治りますか? 自分らしさの発達を促す 目次

まえがき 
巻頭マンガ 

第一部 愛着障害を知る  
 愛着障害が治るようになってきた理由 
「いつ背負った愛着障害か」のアセスメントが「治る」につながる 
 愛着障害を治すと、様々な生きづらさがなくなっていく
 愛着障害はどうとらえられてきたか
 愛着障害は、誰のせいでもない
 愛着障害が示す「症状」
 根っこに愛着の問題があるかもしれない諸症状・年齢別にどう現れるか
   乳幼児期の場合
   学童期の場合
   青年期・成人期の場合
 愛着障害は、二次障害ととらえないほうがいい

第二部 愛着関係を立て直す 

 胎児期の愛着障害の発見
 愛着関係の発達ピラミッド
 愛着関係の発達を保障する
 愛着関係の発達をたどり直す
   愛甲メモ よくなった例1 登校渋り
   愛甲メモ よくなった例2 家庭内暴力
   愛甲メモ よくなった例3 自傷行為
 愛着障害をわかってもらうことの難しさ
 愛着障害と「ありえない恐怖感」
「言葉以前」のアプローチが効果的
 胎児性の不安を取るためのアプローチを考案してみる
 胎内環境
 遊びによる発達のピラミッド
 遊戯療法の成否を決めるもの
「言葉」によるアプローチの必要性

第三部 愛着障害に手遅れはない 
 大人の愛着障害を治してほしいわけ
 愛着障害と発達障害の区別
「胎児性の愛着障害」という考え方がシンプルな乗り越え方に導く
「思春期のもがき」は自己治療である
 対象に支配されなくなると治療は完成する
 どのような治療法があるか
 愛着障害を治すための芋づるの端っこ 1~15
 現代ではなぜ愛着障害が問題となるのか?
 
第四部 なぜ愛着障害を治すべきか これからの時代を生きるために 

「愛着障害が当たり前だった時代」の終わり
 授かりもの

あとがき

こういう本を読んできました

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
新刊が待ち遠しいです! (大久保悠)
2016-10-28 13:44:21
「直言できる人は、本物の愛を知っている人」と私は考えています。
発信されるメッセージが厳しくなればなるほど、浅見さんの愛情の深さを感じていました。
そして今回の連載を読ませていただき、浅見さんの想いも感じることができました。

新刊「愛着障害は治りますか?」の中にも、たくさんの愛情、想いが詰まっていると思います。
しっかり読み、しっかり受け取り、しっかり活かすことが読者として感謝の気持ちを表すことになると思っています。
新刊の発売を心待ちにしています!
返信する
新刊待ち遠しいです (かわきた)
2016-10-31 00:43:00
浅見社長

渥美半島へ伺いました。
とても充実して楽しい一日でした、
ありがとうございました。
また、子どもの胎児期の愛着障害は神田橋先生にOK頂きました!
こちらも重ねて御礼申し上げます。
ありがとうございました。

たくさん講演会や勉強会に行きましたが、あんなに素敵な会は今までありませんでした。
花風社の会には、またぜひ出席させていただきたいです。

去年、私たち家族が花風社の本と出会ったころ、たまたま街中で旧友と再会しました。
話をしたら彼女のお子さんたちもわが子と同じく発達障害をお持ちなど共通点があり連絡を取り合うようになったのですが、その後のやり取りの中でニュースで見るようなネグレクトをしていた(している?)のを知り、恐ろしいことが余りにも身近で起きていること、彼女が昨日の夕食の献立を言うみたいにサラッと話してくれたことに私がショックを受けダウンしてしまいました。
話を聴けば聴くほど複雑なことになっていて、行政介入していますが、発達障害に加えて、家族、離婚、貧困、性、不登校引きこもり、病など問題がゴチャゴチャに絡み合いドミノ倒しのようになっています。

彼女は情報がほしいと言うけれど、私が何を話しても書いても彼女に届かなくて、自分の言葉の至らなさに強い不安感と虚しさ、悲しみや怒りが湧き出てきます。
こういうふうに心が揺れて体調に響いてしまうのは、私自身に胎児期の愛着障害(神田橋先生診断)があるのも無関係ではないと思います。

愛着障害は治りますか?楽しみにしています。
彼女にも手渡そうと思っています。
子どもは本当に良くなりましたので、これからは自分のことも構いつつ、
浅見社長や著者の先生方にいただいた御恩の恩送りをして行きたいと思います。
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大久保さんへ (浅見淳子)
2016-10-31 12:29:53
大久保さん、コメントありがとうございます。そしていつも応援をありがとうございます。直言に愛情を感じ取ることができるのもまた、愛着形成の発達の階段をある程度クリアできているからですよね。そしてそれができていない人を知ってるからこそギョーカイは、妄想接待するのでしょう。そして私たちが知ったのは、それが功を奏していないということです。社会との分断を生んでいるということです。新たなアプローチを考える時が来たのでしょうね。

今後ともよろしくお願いいたします。
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かわきたさんへ (浅見淳子)
2016-10-31 12:38:29
かわきたさん、ようこそ。
先日はご一家で遠路お越しいただき、お土産もいただき、ありがとうございました。楽しんでいただけたようで何よりです。主催者の方からアンケートの集計が送られてきたのですが、これは息子さんだな、と思われるコメントがすぐにわかりました。ありがたいことです。

さて、お友だちに話が通じなくて体調を崩すということ、たぶんですが、自他の区別の問題ではないかな。これも愛着形成の過程だと今回の仕事で愛甲さんに教えていただきました。この世界は自他の区別がついてない人も多く、大大大博士祭りなどもその一つだったわけですが、私はあの時五年後十年後を見ようと言って、その通りあの本を否定しなかった人たちの現在があるので、時間が経てば説得材料も増えます。お子さんの今のあり方が最高のエビデンスですね。

今後ともよろしくお願いいたします。
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