治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

奄美鹿児島の旅 その6 療育地獄(改題)

2018-09-22 09:00:00 | 日記



薩摩藩が奄美群島に砂糖での年貢を強いたのが黒糖地獄。
でも薩摩本土の民だって、年貢は強いられていたのです。
藩は藩でつらかった。徳川幕府は外様の薩摩に何かと金を使わせます。
参勤交代。大工事。自分のところの姫を島津家に輿入れさせ大金を使わせる。
島津家の姫を自分のところに娶る。
それやこれやで膨大な借金を負った藩はそれを貴重品であった黒糖で帳消しにしようとしたのですな。

今年三月に鹿児島に行ったときには、すでに早稻が植わっていました。関東はまだ田植えなんかしていない時期。
温暖な地だから米なんかとれ放題でしょ、と思うのは品種改良が進んだ今のことで、火山灰の影響もあり実は薩摩は米に恵まれなかった土地で石高も実際よりふかしていたようです。だから今も芋と縁のある土地ですよね。
つまり苦しかったのは奄美の民だけではなさそうです。
藩も苦しければ、鹿児島本土の民だって苦しかったはずです。

ではなぜ中でも黒糖地獄がとりわけ残酷だったのでしょう?
それは「何を作物とするか?」を支配されたからです。


「西郷どん 島編」の中では島役人が「もう米は作らんでよか」と言っていましたが、黒糖が大坂(当時)の相場で高く売れることに気づいた薩摩藩は、奄美の民が自分で食べるものを作らせず上納させるサトウキビだけを耕作するように強いていたのです。平地は全部サトウキビ畑。米など、奄美の民が生きていくのに必要なものは作らせない。私が空港と宿の間で見たたくさんのサトウキビ畑はその名残ですね。
そして大坂で買い入れた米や味噌を、奄美の民には薩摩の民より高い相場で売る。私の読んだ本によると、大坂で砂糖76斤と米一石が等価取引だったのを、奄美に持ってきて島民に507斤で売ったそうです。明らかに暴利ですが、島民としては、自分のところで作らせてもらえないのですから、どれだけふっかけられても言い値で買うしかない。そうやって二重に搾取していたのです。

自分で自分の食い扶持を作らせない。
これが黒糖地獄の残酷なところであり、このやり方は欧米列強のアフリカ支配と同じです。そもそもアフリカが飢えたのだって欧米列強が現地の人が食べるものを作らせず自分たちが売り買いしたい作物だけを作るよう強いたからです。
今の若い人の中には、アフリカが飢えているのは自業自得だと思っている人が多いらしいのを知ってショックですが、もっと歴史を学べと思います。そもそもあの温暖な地が飢えたのは欧米列強が現地の人に「何を作るか」を強制したところから始まっているのですよ。

このやり方が実にギョーカイに似ていると思うのです。
自分で自分の食い扶持を作らせない。
そしてよそから持ってきて高く売る。
持っている力を使わせない。
自力で作らせず、言い値で売る。

そもそも、親にとって一番の財産はなんでしょう?
親心です。
親としての本能です。
発達のヌケがあったらそれを埋めたい。遅れがあるのなら取り戻したい。障害があるのなら治ってほしい。他人に迷惑をかけない子に育てたい。生き物として当たり前のことです。自分で自分の食い扶持を作り、他人に迷惑をかけない子は共同体の中でのサバイバル率が高くなるのですから。

そういう親としての本質を「専門性」の名の下に否定する。「障害受容ができていない」としたり顔で、まるで悪い事のようにあざ笑う。「お母さんは頑張らなくていいのです」「本人はありのままでいい。社会が理解すればいい」と甘い顔で言う。その実これは、「もう米は作らんでよか」の世界です。

おまけに哀れなことに、この「米はもう作らんでよか」に洗脳されてしまう人たちもいるのですね。そして知らず知らずのうちに相場より高い米を買わされている。黒糖地獄と違うのは、制度のもとでその請求書が行政に回されて人々の血税を食んでいるだけ。生きる力を奪われているのは同じです。そして結局一生福祉の世話になるしかない。めんどりコースです。

そしてその「米はもう作らんでよか」のギョーカイ人たちが皆さんに提供するのはなんでしょう?
ただのアセスメント。自分たちが家元に座るための。
ただの対症療法。一次障害を治せもしないのに支援者として君臨するための。
ただの枝葉末節なのです。だって彼らは生き物としての土台に働きかける気などないのですから。

ギョーカイは親から親心を奪い、枝葉末節を提供する。血税をうんと使ったあげく、彼らが発達障害の診断を下されたお子を社会に送り出すわけではありません。将来にわたって自分たちが飼い殺すのに都合がいい人間に育て上げるだけです。
だからこそ
もう「生まれつきだから一生治らない」「障害を受容しよう」というギョーカイトークに騙されるのはやめませんか?

しかも、黒糖地獄は明治維新後も続いたのです。
つまり廃藩置県して、日本が中央集権の国になり、島津家は領地を取り上げられ他の大名同様東京に行って華族となったのに、まだ黒糖地獄は続いていたというのです。
なぜでしょう?
なんと薩摩のおえらいさんたちは、奄美の人々に明治維新があったことを知らせなかったというのです。

中央集権の国になったら、もう薩摩藩に徴税権はありません。
だけどそれを知らせなかった。
取り立てる権利のない年貢を取り立て、換金していたようです。

まるで、「発達障害=神経発達障害」と定義されたことを知らせず、相も変わらず「生まれつきの脳機能障害だから治らない」と人々を騙し続け、枝葉末節の療育を売り込み続けるギョーカイのようです。

写真の右は、ソテツです。
サトウキビばかり作らされ、米も芋も足りなかった奄美の人々は、ソテツを毒抜きして食べたそうです。
そして飢饉のときには、ソテツでさえ底をついたそうです。
ソテツって私たちにとっては、南国を演出する観葉植物でしかありません。
どうやって食べるのか謎でしたが、現地の博物館みたいなところでソテツを食用にするための手間について知りました。
どういう味なのだろうと思ったら、とってもしっかりした優秀なデンプン質でした。米よりも腹持ちが良さそうです。
ただ毒抜きにとても手がかかり、中毒を起こす人もたくさんいたそうです。

「自分の食い扶持は自分で確保する権利」
それは基本的人権だと思いませんか?
ギョーカイは皆さんからそれを奪っているのです。
「治ってほしい」という当たり前の親心を否定することによって。
当事者から自分で生きる力を療育によって奪い、福祉の中の人生へと、片道切符を渡すことによって。
それが「療育地獄」です。

続く

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2 コメント

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専門性について (ねてまて)
2018-09-22 09:54:13
子育てがはじまったとき、あるいは妊娠中から、様々な専門の方と話す機会が増えます。
私は高齢出産だったので、他にも、必死に本やネットでも情報を集めました。
集めて、子育てして、はたと気付きます。
あれ、この情報変じゃない?この情報、うちの子に必要ないけど?

情報を持っている側が、意図的に情報を遮断するのは、隠された方は悲劇です。

そして様々な専門家が自分の都合のいいことを言っていたら、何を信じていいのか。さらに、押し売りまであったら。
そっちの方がよっぽどトンデモです。

主体がこどもにあり、そのこどもにあったものでないと、専門性は役にたたないのだ、と花風社さんの読者になってはっきりわかりました。

ちなみにかなりの育児本は役にたたなかったので、そういう意味の勉強代になりました。
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初めてコメント致します。 (サイ)
2018-09-23 03:06:46
ここ最近浅見社長のブログを夜拝見していて毎晩止まらなくなり寝不足気味の者です…。

「親が子供を治したい、少しでも良くしたいと思うことは親の本能で、それを障害受容できていないと白い目で見るギョーカイ…」の辺りにもとても納得し、良くぞ言ってくれた!!!と胸のすく思いです。

私の子供は、強い症状が出ている乳幼児期に、「治る」と言っている先生出会うことができ、子供がかなり治ってきており、さらに治したいと花風社さんの本を読み勉強しているところです。

でも、浅見社長と同様に、「治る」と言っている先生は「インチキ」「トンデモ」など人格否定も含めネット上で叩かれまくっています。
なぜ治している人が叩かれて、治さない小児精神科医や療育担当者は批判されないのだろうと憤っていましたが、 花風社さんを知って治す系のアンチの人たちがいるということを知りました。

また、私が治る方法もあるとネットで発信することに対し、心理士、STなど「治るというのはおかしい」「先天性で生まれつきなんだから!!!」と堂々と断言してくる専門家がおり、

家庭療育でも治る方法があるよと言っても、なにより療育を受けさせることが一番の解決法だと信じている親御さんが少なくないこと。

なんで、みんながみんな生まれつきで治らないと思い込んでいるんだろう?世間の風潮だから?と思っていましたが、療育で思い込まされるんですね。
それって本当に罪なことだと思います。

浅見社長も対処療法と仰っていますが、我が子と同じような症状の子がまず行かされる親子教室、そして療育でどこまで良くなるんだろう?早期療育は有効と言われるくらいだからきっと普通と変わらないくらい良くなる子も中にはいるんじゃないか…と一時沢山ブログなどを読み漁りましたが、療育では多少伸びても根本的に治りはしないという現実を知りました。

親子教室に至っては多動などがあれば親も子も大変なだけ…というパターンも少なくないようでした。
それなのに、なぜ他の親御さんが療育を受けさせることにこそ望みを持っておられるのか…
親御さんはいいとしても、将来本当に苦しみを負うのはそのお子さんなのにと思うとはがゆいです。

浅見社長のように世間で当たり前とされていることに流されず確固とした意見を持って、「治る!」と正面を切って言ってくださる方がいらっしゃることはなによりの救いであり励みになります。
矢面に立って発信してくださって、本当にありがたいです。

長々とまとまらない文章になってしまいました。
すみません。
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