東京オリンピックの開幕が約2週間後に迫る中、東京都に4度目の緊急事態宣言が発令される見通しとなった。政府が目指してきた観客を入れる形での開催は、極めて難しくなった。「無観客は当然」「選手がかわいそう」――。都内の繁華街を行き交う人々からはさまざまな声が上がった。

 「えっ本当ですか」

 出版社などが集まる東京・神保町。仕事帰りだという東京都千代田区の事務員の女性(28)は、緊急事態宣言がまた発令されると聞き、驚いた表情で足を止めた。

 昼間の仕事に加え、夜は銀座でキャバクラに勤めている。6月下旬まで約2カ月続いた前回の宣言の際は、夜の仕事がなくなって収入が減ったという。「五輪には興味ないけど、宣言が出るとお客さんが来ないだろうし、困る」と仕事の方が気になる様子だった。

 一方、千葉県船橋市の会社員の男性(50)は「宣言はやむを得ない」と淡々と語った。4度目の宣言発令については、スマートフォンのニュースで知ったという。「ここまで来たら五輪は開催すればいいと思うが、無観客にするのは当然だ。感染を抑える方が大事」。こう言うと、家路を急ぐように駅へ向かっていった。

 多くのサラリーマンが行き交うJR新橋駅前でも、厳しい声が聞かれた。

 友人と飲んだ後に帰宅中だった会社員の男性(68)は、「オリンピックはもう中止でいいんじゃないの」とあきれた様子で話した。スポーツは好きだが、新型コロナウイルスの感染が拡大し、都民の活動が制限される中での開催には賛成できないという。「日本政府の対応はすべて後手後手。失望した」

 アルバイトを終え、友人たちと談笑していた都内の私立大3年の女子学生(20)は、「飲食店が自粛して頑張っている中、五輪だけお客さんを入れるのはどうかなと思う」と無観客開催に理解を示した。一方で、「会場が盛り上がらないので、選手はかわいそう」と気遣った。【春増翔太、小林遥】