県が、二〇一九年度に県内で殺処分された犬猫は「ゼロ」だったと発表した。担当課は「地道な啓発活動の効果が出た」と胸を張るが、「攻撃性がある」などの理由で「譲渡不適」と判断して殺処分した数は除外されている。「収容中死亡」も含めれば、実際の殺処分数は犬が百四十四匹、猫は四百二十四匹。動物愛護団体は「殺処分の実態が隠れてしまう」と県の姿勢を批判する。(鈴木学)

3区分で

 県が二十六日に公表した資料のタイトルは「本県における犬及び猫の殺処分ゼロの達成について」。「譲渡適性があると判断した犬猫の殺処分数がゼロとなり、県総合計画の目標を達成した」と宣言した。

 環境省は全国の自治体に対し、犬猫の殺処分について(1)攻撃性があったり、治療が難しい病気があったりするなどで譲渡不適(2)譲渡適性はあるが、適切な譲渡先が見つからないなど(3)病死や老衰を含む「収容中死亡」−の三区分に分類して報告するよう求めている。

 県は昨年六月、環境省の基準に沿う形で譲渡適性を判断する独自のガイドラインを作成し、「譲渡適性あり」の犬猫の殺処分ゼロを掲げた。これが一九年度に達成できたというわけだ。

ワースト

 環境省がまとめた都道府県別の殺処分数のワースト順位では、本県は犬が〇五年度から一二年度まで八年連続で一位、一三〜一五年度が二位。猫も一二〜一六年度は、ほぼ十五位以内に入っていた。

 危機感を抱いた県は、一六年に議員提案の犬猫殺処分ゼロを目指す条例を施行。実現に向けてポスターなどでの啓発や、飼い主のいない猫を不妊去勢して地域で管理する「地域猫」活動を推進。収容された犬や猫を譲り受ける団体などへの飼育管理費の支援も続ける。

 環境省の全国集計は、「譲渡不適」「収容中死亡」も含めた数だ。一八年度の本県のワースト順位は、犬は十位(二百三十五匹)、猫は四十一位(二百十一匹)で、前年度から順位、殺処分数ともに改善した。

 県生活衛生課は殺処分数が減っている要因として、県動物指導センター(笠間市)に入ってくる犬や猫の数が減っている▽殺処分の九割以上を占めていた乳のみ子猫を引き取ってくれる団体が出てきた−ことを挙げる。

独り歩き

 だが、「譲渡適性あり」の犬猫の殺処分「ゼロ」が独り歩きすれば、それ以外に分類された犬猫の殺処分が続いている実態などを覆い隠すのではないか。一九年度の全国ワースト順位(集計中)が再び上昇する可能性もある。

 動物愛護のNPO法人「しっぽのなかま」代表理事の佐藤陽子さん(77)は「センターに入る犬猫の数が減っているのではなく、センターが引き取っていないだけだ」と手厳しい。

 佐藤さんは、水戸市の団体がセンターから引き取っていた猫を虐待していた事件(一八年)が発覚したことも踏まえて「センターは収容犬や猫を引き取ってくれるなら、譲渡先はどこでもいいという考えだ。その団体などがどういう活動をしているかは調べていない」と指摘する。

 同じくNPO法人「いばらきの犬と猫」代表の倉持千恵子さん(66)は「県は条例施行の実績を上げようと必死なのだろうが、登録制度を徹底するなどで、飼い主にきちんと飼育させるようにしていかないと、不幸な犬や猫はいつまでも減らない」と訴える。

◆「密」を懸念 中止続く譲渡会

 新型コロナウイルスの影響が長期化する中、保護された犬猫などの新しい飼い主を探す取り組みも様変わりしている。希望者が集まる譲渡会は「密」になるため、中止を余儀なくされているからだ。

 「いばらきの犬と猫」は三月から譲渡会の開催中止が続く。新たな飼い主探しは、ネット上のサイト頼みだが、問い合わせはいつも以上に多い。

 代表の倉持さんは「問い合わせの数は感覚的には五割増ぐらい。うちでは今、成犬ばかりの募集なので、いつもなら月に一匹ぐらいのところだが、五匹ぐらいで話が進んでいる。そして、『暇だから犬がほしい』といった安易な人がいないのが救い」と明かす。

 引き取りの希望者とは、電話や無料通信アプリ「LINE(ライン)」でやりとりしている。倉持さんは「きちんと意思疎通をして細かいやりとりを重ねることで、譲渡会ができなくても何とかやれるものだと感じている」と話している。(鈴木学)