(28日NHK首都圏NEWSより)
訪問介護支える84歳のヘルパー
訪問介護支える84歳のヘルパー|NHK 首都圏のニュース
人手不足が深刻化する訪問介護で現場を支える戦力となっているのが「高齢者」です。 千葉県習志野市では、80代の現役ヘルパーがその現場を支えて…
NHK NEWS WEB
人手不足が深刻化する訪問介護で現場を支える戦力となっているのが「高齢者」です。
千葉県習志野市では、80代の現役ヘルパーがその現場を支えています。
山岸操さん(84)は千葉県習志野市の訪問介護事業所で、ヘルパーとして週5日フルタイムで勤務しています。
20年あまり前に資格を取得してこの世界に入りました。
自転車やバスで移動しながら、高齢者の家を訪れ、家事などの身の回りの世話や、食事や排せつの介助など「身体介護」もこなします。
私たちは、緊急事態宣言の前の先月、山岸さんの仕事を取材しました。
この日、訪れたのは、88歳の要介護1の男性の自宅。
週に1回の買い物同行の支援です。
歩行器を使う男性の横に寄り添いながら、近所のスーパーまでの道のりを支えます。
足の筋力が弱り、家に閉じこもりがちの男性にとって、週1回の山岸さんの訪問は、筋力維持のための運動であるとともに、会話を楽しむ時間でもあるといいます。
男性は「同世代ということもあって会話が楽しい。毎週楽しみにしています」と話していました。
山岸さんは「人に携わり、喜んでもらえるこの仕事が好きです。高齢になっても働いていると世の中から置いてきぼりになりません。利用者との会話の話題になるように本や新聞を読んだり、人気の映画『鬼滅の刃』も2回見ました」と笑顔で話していました。
この日は、あわせて4人の利用者の自宅を訪問しました。
多い時は5人6人と掛け持ちするということで、去年の年末はおおみそかまで休み無く働きました。
緊急事態宣言後の今も、サービスの継続が求められる現場で引き続き業務にあたっているということです。
この事業所で活躍しているのは、ほとんどが65歳以上の高齢のヘルパーで多くが20年以上働き続けています。
ヘルパーの高齢化の背景にあるのは深刻な人手不足です。
去年9月時点の訪問介護職の有効求人倍率は15倍あまり。
新しい人材が獲得できない中、高齢ヘルパーに頼らざるを得ない状況が続いているのです。
事業所の責任者の岡松純子さんは「新しい仕事の依頼がどんどん来ますが、ヘルパー不足でほとんど断っている状態です。山岸さんはなくてはならない存在で、できるだけ長く働き続けてほしいと願っています」と話していました。
その人手不足に、新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけています。
ヘルパー自身も高齢者で、感染への不安から引退する人も出ているのです。
山岸さんも家族から心配されながらも、自身のやりがいから仕事を続けていますが、自分たちが引退した後の訪問介護の未来が気がかりだといいます。
山岸さんは「自分が介護を受ける時には、今と同じような訪問介護は受けられないかもしれないという不安があります。若い人を育てていかないといけません。ヘルパーの賃金を上げて若い人が家族を支えて生活ができる収入を得られるように国が考えてほしいです」と話していました。