自然地理
ソ連(現・ロシア)の影響を受けた日本の「自然地理先習」
今回は自然地理についてまとめたいと思います。皆さんが中学校や高校の地理の授業でやった「地形」「気候」などが自然地理と呼ばれる分野です。日本の地理教育では、自然地理分野を先に学習するのが一般的です。(自然地理先習)
自然地理分野を先に学習するのはソ連(現・ロシア)の学習論の影響で、自然科学的なものは理解しやすいので先に学び。複雑な人間活動にかかわる人文地理分野をあとで学ぶとする学習論です。
<周縁地域に眠る資源や耕作可能地の調査・開発のための「知」を得る目的だったソ連の地理学>
(ソ連の)地理学は、ロシア自然生産力検討委員会やその後継組織であるソ連邦科学アカデミー生産力検討会議(СОПС АН СССР)といった機関を通じて、周縁地域に眠る余剰資源・耕作可能地の調査・開発、ソ連全土の経済地域の区画事業において中心的な役割を果たした。このように、ソ連初期において、民族学が人間集団の分類を通じて帝国周縁「知」を獲得する学だったとするならば、 地理学は空間の分類を通じた周縁 「知」 の獲得によって、帝国の中核が周縁地域へと経済的に浸潤していくひとつの手段を提供する学だったといえる(京都大学発行「地域研究」掲載の地田徹朗氏論文「多民族領域帝国ソ連における地理学と空間・地域認識―戦後スターリン期を中心に」より)
ソ連の周縁への浸潤のための地理学。日本でも侵略に協力した地理学の歴史があります。ソ連の自然改造は結局失敗し広大な耕地を結果として損(そこ)なうことになりました。よく取り上げるアラル海の「消滅」も運河による用水の利用が原因です。人間の知恵は足らないということです。
日本の「風土」論と相通じる「生態系」という考え方、欧米では「非科学的」と言われていた
ボクは、地球環境をエコロジカル(生態学的)に学ぶように勧めていました。地球環境の要素は、「地圏(地形・地質)」「水圏(海洋・陸水)」「大気圏(気候)」「生物圏」+「人類文明」でこれらが複合して自然環境を構成しています。日本では「生態系」という考え方は、抵抗なく受容されていますが、それは日本独特の「風土」※という考え方があったからです。
※この「風土」という考え方については、Narashino Geography⑥ 人文地理学 でも触れました。
Narashino Geography⑥ 人文地理学 - 住みたい習志野
しかし、欧米ではデカルトの「二元論」が近代の科学の基礎となっているため、人間を自然とは別のものとして考えてきました。
そのため、人間を自然の一部としてとらえる生態学は非科学的と言われていました。
千葉県立中央博物館は日本最初の生態系の考え方を軸にした博物館。初代館長は生態学の草分け「沼田眞」さん
千葉県立中央博物館(千葉市中央区)は日本最初の生態系の考え方を軸にした博物館でした。
http://www2.chiba-muse.or.jp/NATURAL/index.html
初代館長の沼田眞(植物学)は日本の生態学者の草分けです。「千葉県の生態系は垂直に圧縮されている」(低平な山地に氷河期の名残の高山植物が見られる)という30年ほど前の講演が印象に残っています。千葉県は標高が全国最低(最高峰「愛宕山あたごやま:南房総市」でも408m)の県です。
【千葉県で一番高い山は愛宕山】標高408m!最も登頂しにくいという理由とは?
習志野市の標高は低いが、海岸付近以外津波の心配はなさそう
習志野市の平均標高は14・5m。山はなく、東習志野7丁目付近の標高30mが最高標高で低平な市ですが、最低ではありません。30mというと10階建てのビルに相当する高さです。東京湾の最大津波は数メートルですから、海岸付近の地域は津波が心配ですが、習志野市のほとんどの地域は心配はないでしょう。埋立地は法律で定められ、3m以上の標高があります。皆さんハザードマップなどで、居住地の標高を調べ、避難のシミュレーションをしておくことが大切です。
金星や火星は地面がある「地球型惑星」、土星や木星はガスでできた「木星型惑星」で地面がない
地理で扱う自然の基盤になるのは知表面の凹凸・傾斜、つまり地形です。地球は46億年前にできた地表面をもつ惑星です。金星や火星には地表面(地面)がありますが、これらは「地球型惑星」と呼ばれます。土星や木星などはガスでできた惑星で、「木星型惑星」と呼ばれ、「地面」はありません。星にもさまざまなスタイルがあるということです。
豊富な水の存在が地球の特徴
人類が月に始めて到達した頃、月に水はないと言われていましたが、今では月の極地方や火星など多くの星に水の存在が確認されています。しかし、地球のように豊富な水が地表面に液体として存在しているのは地球だけの特徴です。この水が地表面を浸食し、地形のバリエーションを生み出しています。
地表面を基盤として、その上のくぼみには水が溜まっています。地球洋の水の約98%は海水で、残りの水を陸水と言いますが、そのほとんどは地下水と氷河(南極などの大陸氷河)です。
私たちが利用できる水は限られている。21世紀は水争奪時代
私たちが利用できる水(真水)は、ごくごくわずかで、湖沼水や河川水など0.01%にすぎません。地球は「水の惑星」と言われますが、人類が使っている水は限られていてふんだんにあるわけではありません。しかも、人類が汚染して使えない水も多く、21世紀は、水争奪時代とも呼ばれます。
習志野市、総武線より南側は千葉県企業局の給水エリア、北側は習志野市企業局の給水エリア
(地図は習志野市ホームページより転載)
習志野市はJR総武線より南側(白い部分)は千葉県企業局の給水エリア、北側(青い部分)は習志野市企業局の給水エリア(船橋市の一部を含む)です。
北側、習志野市企業局給水エリアの水道水は、北千葉広域水道企業団(千葉県、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、習志野市及び八千代市の1県7市が、共同して事務を処理するために設けられた 一部事務組合)からの受水と、市内19本の井戸から取水した地下水のブレンド水です。
(北千葉広域水道企業団の水源:北千葉広域水道企業団ホームページより転載)
「ナラシドウォーター」というブランド水は習志野市が水道水をペットボトルに詰めたものです。
原価のほとんどはペットボトル代で、水の原価はごくごくわずかなものです。水道水の原価のほとんどは「人件費」と聞いています。
新疆(シンチャン)ウイグル自治区の「隔海度世界一」(最も海から離れている)の地点は寒暖の差が激しい
日本は海洋に囲まれ、海を見たことがないという方はいないと思いますが、大陸の内陸に暮らす人たちには「海」というものはイメージしにくいものです。世界で最も海から離れているのは、中国新疆(シンチャン)ウイグル自治区ウルムチの北方320kmほどの地点といわれています。ボクも訪ねたことがあるのですが、小さなコンクリの標柱に「隔海度世界一」という文字があっただけでした。海から遠く離れたこの地は雨もほとんど降らず、冬はマイナス40℃、夏は40℃を超える厳しい環境です。
気温の年較差が大きいのは高緯度と隔海度が大きい地域
海に面していると、冬は温暖で夏は冷涼な海洋性気候
海に面していると気候が穏やかになり、冬は温暖で夏は冷涼な海洋性気候になります。習志野は海に面していても、あまり影響は受けていないようです。
海洋性気候と紀州人の技術で発展した銚子の醤油づくり
千葉県では銚子は三方を海に囲まれ、夏は涼しく、冬は暖かい海洋性気候で、これが醤油醸造に適していると紀州人がやってきて醤油醸造業を発展させました。
紀州から銚子へ 【ヤマサ醤油株式会社】
また、「海に魚がいる」と思うのは日本周辺に大陸棚が発達して、豊かな漁場が存在するからです。大洋はまばらにしか魚がいません。陸地から遠い海にはエサが少ないからです。東京湾のような河川がいくつも流れ込む湾には、プランクトンのえさになる栄養分が流れ込み豊かな海になります。
習志野でも海苔の栽培が行なわれていた
習志野でもかつては遠浅の海で海苔の栽培が行われていた※のですが、埋め立てられて住宅団地などが造成されました。
※海苔づくりについては、Narashino Geography⑤ 習志野の地理と昔の想い出
でもご紹介しました。
Narashino Geography⑤ 習志野の地理と昔の想い出 - 住みたい習志野
(近)