隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1022.ハゲタカⅡ

2009年09月05日 | 経済
ハゲタカⅡ
読了日 2009/09/05
著 者 真山仁
出版社 講談社
形 態 文庫
ページ数 (上)412
(下)463
発行日 2007/03/15
ISBN (上) 978-4-06-275687-7
(下) 978-4-06-275689-1

 

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街・君津市の図書館で借りてきた。巨大基幹産業である新日本製鉄君津製鉄所を擁する割りに、9万1千人という人口は、我が木更津市(12万6千人)に比べ少ない感じの君津市だが、九州八幡市から大挙移動してきた人口は、大分木更津市にも流れてきているためだろう。
しかし、こと図書館に関する限り君津市の方が充実していることは否めない。わが街、木更津市より文化方面への施策が行き届いているとは考えたくないが、僕は割り切って時々君津市の図書館を利用している。

7月末に読んだ「ハゲタカ」の下巻の最後に記された "to be continued..." が気になって、さらにはドラマ「ハゲタカ」の原作が本書にも及んでいる、ということもあって、わざわざ隣街にまで行って借りてきた次第。
僕は何を求めて本書を読もうと思ったのか?
などと哲学的なことを言うつもりはない。もちろん7月末に読んだ「ハゲタカ」に続くドラマを見るためであることは確かなのだが、読み始めてその目的が、鷲津政彦に会うためだとわかった。
彼が登場することに依る胸の高鳴りがそれを教えてくれる。
だが、続編とは言いながら今回の鷲津は前作にも増して、ハードでクールな印象だ。

 

さて今回は、ハゲタカと呼ばれる外資ファンドが大暴れをした前作からおよそ1年後の世界。
ターン・アラウンド・マネジャーとして企業再生に活躍して、今はアルコール依存症となった妻を救うために引退した芝野健夫の元に、またもや因縁の飯島からの呼び出しがかかる。三葉銀行は合併によりUTBとなり、飯島亮介はいまやその頭取に納まっている。
芝野へのミッションは、かつては基幹産業とまで言われ、戦後の日本を背負ってきた紡績会社、鈴紡の再生だった。

一方、海外を放浪していた鷲津政彦は、友人の誘いで訪れたチベットでの鳥葬を見た後、二度と帰ることがないと思っていた日本に向かっていた。

そして、ホライズン・キャピタルの社長、アラン・ウォードが泥酔の状態で、地下鉄のホームからの転落死するという惨事が発生する。

こうした幾つかのエピソードで第2幕は開く・・・。

 

開き早々の悲劇は、松平貴子の率いるホテルグループ「ミカド・ホールディングズ」に襲い掛かる危機。

かつてホライズン・キャピタルの後押しでふるさとファンドからの融資を得て、再生を図っていたミカドグループだったが、ふるさとファンドのトップが替わったことで、債権はゴールズバーグ・コールズ(GC)へと売却されるという。
GCのバックには、フランスのリゾート会社、リゾルテ・ドゥ・ビーナスがいた。

 

帰国した鷲津政彦はアラン・ウォードの死を始めとする環境の激変に驚く。アランの死には絶望的な思いを抱くが、新しく社長になったピーター・マイスキーの勝手な行動には厳しく対処する。そして彼のところに思いがけない人物からのコンタクトがあった。

 

今回中心となるのは、その後に鷲津が手がける総合家電メーカー・曙電機だが、NHKのドラマでは、本書からこのエピソードを大幅に脚色して、原作とは違った形にして取り入れている。
その辺から、ドラマのクレジットでは原作が「ハゲタカ」と「バイアウト(文庫化に伴いハゲタカⅡに改題した)」になっているのだろう。前作とはそれほど間が無く発表されたにもかかわらず、前述のごとく鷲津の言動は上巻においてもその迫力に圧倒されるが、下巻に進んでは、その傾向が益々強くなりゾクゾクするほどに胸が騒ぐ。
まるで実在の人物であるかのような錯覚を起こさせるほどのストーリーの展開に興奮する。予想させる先行きと、予想を覆す展開が入り混じって、さらには涙を誘うような感動的なシーンも織り交ぜて、終盤に近づくに連れて、早く結末を知りたい気持ちと、読み終えたくない心とがせめぎあうような・・・。

前作同様、下巻の最後には再び「to be continued」の記述があり、次作「レッドゾーン」へと続くことが判る。
今年(2009年)映画化されたのは、「レッドゾーン」を主体としたようだが、NHKドラマのスタッフ、キャスト共にそっくりこの映画に臨んでいる、ということはそれだけドラマの反響が大きかったということか?
いずれDVD化されるのを待って観ようと思うが、それより前に原作の「レッドゾーン」を、近いうちに読みたいと思っているのだが・・・タイミング良く図書館で借りることができるかが問題だ。

 

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