水産北海道ブログ

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見えてきた「漁業の成長産業化」路線による漁業権の開放

2018-04-03 22:58:11 | 今月のフォーカス

 規制改革推進会議や自民党の会合など、様々な場面で、「漁業の成長産業化」路線とそれによる漁業権の開放、透明化のイメージが語られており、ここに来て水産庁や全漁連がどのような腹づもりなのかがある程度見えてきた。

 端的に言って現在の漁場を有効に利用している漁業者の権利は守ることを基本に、未利用の漁場をいかに企業と地元のマッチングを図りながら、漁場の高度利用による成長産業化を進めるというような物言いに集約されそうだ。しかし、十分な実績のある漁業を優先することはいいとしても、それが組合管理による現行の漁業権制度をそのまま温存することになるかどうかは、不透明さがつきまとう。

 現行の組合管理の漁業権が持つ調整機能を堅持することが、複雑な沿岸の増養殖を振興する基本となるとは思うが、組合員でない企業が空いている漁場で養殖を営む経営者免許を知事許可で出す。漁業権行使料など漁場利用を企業向けに透明化してしても、なおそんな手続きやお金は払いたくないという要求をどうするか。さらに組合経営の産地市場を経由する販売手数料などは、隣接する漁場で養殖業を営む経営体で格差が出てくるのは避けられそうもない。

 規制改革を唱える人々が現状の漁場利用関係を包含した制度を設計できるとはとても思えないし、結局、漁業の許認可や漁場計画、漁業権行使について長年の蓄積を持つ水産庁や都道府県、漁業調整委員会、漁協がそのベースをつくることで、「漁業の成長産業化」路線とそれによる漁業権の開放、透明化という改革が実現していくことになろう。

 常識的なたたき台をつくっても「それでは手ぬるい」「既得権者を守るだけ」と様々な注文をつけられ、それに応える事実と論理を示しながら「防戦」を強いられることは避けられない。この夏までに水産行政、漁協系統は苦しい戦いを強いられそうだ。もちろん、空いている漁場を「入札」で開放しろ、といった乱暴な議論は全漁連が絶対に許さないことは信じている。全漁連が果たす漁業権の調整機能も同様だが、やはり個別具体的な案件における現場の調整はやはり都道府県の水産行政と漁協が担わざるを得ないだろう。

 どこまで民主的な漁場の利用、その体系である漁業権の法制度に筋を通すことができるのか。漁業者をはじめ多くの関係者が注目している。そこで全く足りないのは下からの合意形成、全国の地方、現場、浜における議論、意見集約に他ならない。結果として漁業制度の刷新が組合を「中抜き」にした漁場利用となることは避け得たとしても、現に漁業で生計を営んでいる人たちが納得できる合意形成がないと持続的に漁場の有効利用を図ることは難しい。


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