水産北海道ブログ

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2023年秋サケ来遊予想(道総研さけます・内水面水試) 前年比4%増の3,483万尾と2年連続で3千万尾台に えりも以東が193万尾・22%増、根室も440万尾・14%増

2023-06-26 20:52:53 | 系統通信

 道総研さけます・内水面水試は、2023年の本道沿岸における秋サケ来遊を前年比4%増の3,483万尾と予想し、2年連続の3千万尾台が期待される。26日に開かれた道連合海区漁業調整委員会で卜部浩一道総研さけます・内水面水試研究主幹が説明した。
 来遊予測は、従来のシブリング法を基本とするが、近年、急速な成熟年齢の若齢化が進んでいることから、令和3年以降は若齢年級のデータだけを使って予測値を算出している。
 令和4(2022)年の全道への秋サケ来遊数(沿岸での漁獲数と河川での捕獲数の合計)は 3,347万尾と前年比180%と大幅に増加し、7年ぶりに3千万尾を超えた。予測に対する実績の値は 163%と全道では予測を大きく上回った。
年齢別来遊数は、4年魚(平成30年生)が2,393万尾と平成以降の平均値並みとなる一方、5年魚(平成 29 年生)は275万尾で平成以降 2番目に少なかった。これに対し3年魚(令和元年生)は653万尾と平成以降で最も高い値となった。
 時期別では、前期が1,361万尾(前年対比124%)、中期が1,778万尾(同217%)、後期が208万尾(同207%)と前年に比べ中後期の来遊が大幅に増加した。
 平均目廻りは2.83kgと前年の3.19kgから大きく減少し、近年では最も小型だった平成30年の3.04kgをも下回った。
 各海区への来遊数は全ての海区で昨年を上回ったが、根室、えりも以東・以西ではいぜん低水準の来遊にとどまった。年齢別にみると主群である4年魚は全ての海区で前年を大きく上回ったが、逆に5年魚は全ての海区で前年を大きく下回り、各海区とも平成以降で最低かそれに近い水準となった。3年魚はオホーツク、根室、えりも以東海区で前年を上回ったが、えりも以西と日本海区では前年を下回った。
 こうした来遊結果を踏まえ、令和5(2023)年の全道への秋サケ来遊数は3,483万尾と予測した。多くの海区・地区で前年を上回る予想だが、えりも以西は前年並み、日本海は1割程度下回る。オホーツク海区は2,143万尾で6%増。東部が892万尾と10%増、西部も522万尾と7%増、中部は729万尾で前年並み。根室は441万尾で15%増。北部が344万尾で10%増、南部も97万尾で33%増。えりも以東は194万尾で22%増。東部が70万尾で44%増、西部が124万尾で13%増。えりも以西は164万尾で2%減。日高が66万尾で5%減、胆振が38万尾で4%減、噴火湾が25万尾で10%増、道南が35万尾で前年並み。日本海は542万尾で11%減。北部が169万尾で5%減、中部が261万尾で6%減、南部が113万尾で27%減。
 令和5年度秋サケ漁獲見込量は、全道で上限値が4,723万尾、通常値2,890万尾で、前期(〜9月末)が上限値2,528万尾、通常値1,602万尾、中後期(10月1日〜)は上限値2,196万尾、通常値1,288万尾。
 河川におけるサケ推定そ上数は、全道で429万尾。親魚捕獲計画は119万尾となっており、計画に対する過不足をみると、えりも以東東部は全期間で不足し、同西部が中後期、えりも以西が日高、胆振、噴火湾の後期、道南が前期、根室南部が後期に計画に対し不足する見込み。
 連合海区の質疑では、昨年操業始期を10日間遅らせる自主規制を行った根室海区の福原正純会長が今年の推定そ上数42万尾に対する根拠と、規制をかけない状態での推定を出すよう求めた。これに対し、卜部主幹は「過去3年間のそ上数を平均化して推定している。昨年の自主規制がなければ根室で親魚の不足も想定された。これまでとは違う異常な条件が出てくれば、推定も動くが、自主規制を除いた推定は難しく、自主規制も含めたデータを平均化した」と答えた。

2023年(令和5年)6月23日(金)発行/北海道漁協系統通信第6724号

2023-06-23 13:58:48 | 系統通信
北海道信漁業連 第75年度通常総会
今年度はR6年4月、内部統制調査開始の準備進める
理事に利尻白鳥組合長、監事に稚内岡田組合長を選任

北海道漁業共済組合 第105回通常総会
共済金支払額 4期ぶりに100億円を下回る
岩内郡漁協の太田組合長を新監事に選任

北海道JF共済推進本部 第28回通常総会
チョコー295億円・くらし245億円でともに計画達成
新3か年計画スタート 推進保証金額を数量目標に

道議会でオオズワイガニの大量発生で質疑
今後3年間で調査、やっかいものから有効資源に化けるか

第2回定例道議会が開会
7月14日までの会期で道予算をめぐり論戦交わす

全漁連が北朝鮮ミサイルに抗議声明
漁船が操業中の日本EEZ内に落下、生命の安全求める

第五種共同漁業権の増殖指針を道が示す

森海域産マボヤを出荷規制(6月14日)

落部海域産マボヤを出荷規制(6.16日)

増毛漁協 新代表理事組合長に石田和夫氏(6月10日)

北海道水産ビル 代表取締役社長に松永顕氏

道議会オオズワイガニの大量発生で質疑 今後3年間で調査、やっかいものから有効資源に化けるか

2023-06-22 10:44:02 | ニュース
 日高東部沿岸で大量発生しているオオズワイガニについて、原因究明や有効活用の方策を今後3年間かけて道が道総研、地元漁協と協力して調査することになった。21日に開かれた道議会水産林務委員会(桐木茂雄委員長)で、地元選出の小林雄志委員(自民党・道民会議)が質問した。
 水産林務部の高橋研司漁業管理課長によると、日高管内を中心に今年1月から毛ガニかご漁に混獲され、3月にはカレイ刺し網にも大量にかかった。そこで漁業関係者から有効活用の要望が出て、道総研などと検討を進め、5月下旬に現地の調査体制が整ったのを受け、細かな採捕の要領をつくり、6月初めに特別採捕の許可を出した。
 浜では、カレイ刺し網が食いちぎられる、絡まるといった問題が起き、適正な漁法や資源利用の方法が課題となっている。道によると水深200m以上の深海に分布するオオズワイガニが沿岸で混獲され、漁獲量は年間200㌧と推定される。近年では昭和58〜63年に胆振管内で大量に獲れ、61年には年間2,300㌧、7億円の水揚げがあったという。しかし、沿岸に大量発生した原因はいぜん不明。オオズワイと言っても甲長6〜7㎝の小型が大半で、10㎝以上の商品価値のあるものは少ない。
 近藤将基水産局長は「小型とはいえ、越前ガニ、松葉ガニの高級品と食味が近い。道内になかった資源なので、有効利用を検討したい。今後、かご漁業を用いて分布などの資源調査、加工原料としての活用などを3年間調査する」と有効利用に取り組む方針を示した。
 テレビなどで連日オオズワイの話題が取り上げられ、美味しいことから、地元の直売場で1尾150円で売ったところ、人気となり500円に値上がりしている。
 また、札幌駅前のセンチュリーロイヤルホテルは、スカイレストラン「ロンド」でオオズワイガニを使用した魚料理をメニューに取り入れ、提供したところ、好評を得た。同レストランでは浦河・様似・えりも・広尾の4町と連携した「とんがりロードフェア」を企画し、オオズワイガニもソースとほぐし身にして調理した。古川料理長は「料理として提供するのは初めてだが、本ズワイと比べても遜色ない。甘みがあり美味しい。数量限定となるが、多くの人に味わっていただき、北海道の漁業を考えるきっかけになれば」とコメント。

センチュリーロイヤルホテルでオオズワイのメニュー提供
スカイレストラン「ロンド」古川料理長

2023年(令和5年)6月20日(火)発行/北海道漁協系統通信第6723号

2023-06-22 10:43:33 | 系統通信
第61回北海道漁業協同組合長会議
アルプス処理水海洋放出対策など全4議案を可決
「環境の変化に打ち克つ持続的な北海道漁業の確立」を
令和5年度 北海道系統運動功労者表彰
川崎・福原・池守・森・野上の5名を表彰

第61回道漁協組合長会議決議実行
西村経産大臣にアルプス処理水対策を要請
道、道議会、農水省に資源管理、経営基盤、環境保全を

道の令和5年度補正予算案(水産関係)
新たな養殖、秋サケ資源回復、廃漁網処理、ブルーカーボン

道と道議会が令和6年度予算要求の中央要請
変化に対応した水産業の体質強化と漁村の活力向上
赤潮、秋サケ、経営安定、基盤整備、ALPS処理水

道漁連 第74回通常総会
令和4年度取扱高は7期ぶりの3千億円超え
新3ヵ年計画(中期的事業方向)を軸に環境変化への対応図る

ミニシンポ『内水面における漁場管理の展望と課題』 漁場管理と多面的機能、経済持続性をめぐり活発に議論

2023-06-17 14:36:07 | ニュース
 

 6月11日(日)午後2時からは、ミニシンポ『内水面における漁場管理の展望と課題』を開かれ、水産庁・櫻井政和防災漁村課長(前栽培養殖課長)が司会・コーディネーターとなって研究、現場調整、行政の専門家3人による報告を受け、議論を交わした。その中で内水面の漁場管理における課題と対応方策の提示を受け、提示された課題を共通認識として今後の漁場管理の展望や管理の主体となる内水面漁協の対応策について認識を深めた。漁業経済学会として内水面漁業を取り上げる初のシンポとあって大勢の関係者が参加した。
 内水面(河川、湖沼)においては漁業法に基づき第五種共同漁業権の免許を受けた内水面漁協が、増殖事業や遊漁者サービス等の漁場管理を行なっている。今秋には共同漁業権の一斉切替が行われ、多くの内水面漁協が今後10年間にわたり漁場の管理を続けている。現状は組合員の減少や高齢化が進展していることに加え、従来から問題とされてきた資源の不安定化、食害などの事態の深刻化が進行している。
 第1報告は、中村智幸氏(水産研究・教育機構)は「日本における内水面の漁場管理の現状」として組合員も減少、高齢化する組合員、赤字経営、漁業者ゼロといった現状を踏まえ、内水面漁協が資源増殖を含む漁場管理によって多面的機能、行政代行機能を担っているとした。第2報告の瀬川貴之氏(クリアウォータープロジェクト代表)が「内水面漁業・遊漁の構造的課題と再活性化提言」としてアンケート調査の結果を踏まえ、内水面漁協が10年後には消滅の危機にある状況を示し、職員の給与負担と増殖・遊漁料徴収による経営を分離するよう提言した。第3報告の鈴木聖子氏(水産庁)は「内水面漁協が果たす多面的機能維持活動への社会的意義・評価に対する一考察」として内水面の多面的機能の定量化に基づく河川税の創設など、持続可能な内水面漁協のあり方を提起した。
 コメントでは、大森正之氏(明治大学)が「内水面による食料供給、文化保存的な価値の可能性」を問うた。また、工藤貴史氏(東京海洋大)が「内水面の望ましい姿がこれまで追求されて来なかったが、内水面振興法では自然環境の保存が求められる」と提起した。
 総合討論では、櫻井氏が論点を整理し、第5種共同漁業権として増殖が義務付けられている内水面漁協に特有な課題、特に環境保全を内容とする多面的機能の評価、方向性などをめぐり、会場を交えて議論を深めた。
 櫻井課長は「多面的機能をどう捉えるかが内水面を考える鍵になる」と提起し、工藤氏は「現場に対する政策支援を考える上で出てきた」と述べ、中村氏は「一般国民からみれば漁場管理は内水面漁協の役割であり、多面的機能への支援は当然あるべき」とした。文化の継承など多面的機能の評価について様々な意見が出る中で、佐野会長は「遊漁料の徴収は完全に経済事業であり、一方多面的機能は漁業生産と一体で外部経済性(市場外)に発生する価値であり、内水面漁協に河川の環境保全まで追わせるわけにはいかない」と陸域の環境行政との区別を明確にするよう助言した。
 多くの内水面漁協が事務、運営の費用(人件費)を賄えない状況を受け、櫻井課長は「漁協による委託可能性には線引きがない。今後どう委託していくかが経済的持続性との関係で課題になる。しかし、営利ではない漁場管理を委託することはできない。主体性がなくなった場合は、組合の存立条件を失う」と述べ、市町村、漁協系統の現場からの意見を求める姿勢を示した。