水産北海道ブログ

北の漁業と漁協がわかる情報満載です

2015年2月 今月のフォーカス 農協改革が決着 次に何が来るのか?

2015-02-18 23:59:35 | 今月のフォーカス
  全中と自民党は、2月9日午後、農協改革の骨格で合意した。1月20日から20日間にわたる攻防に決着がついたが、勝者も敗者もいないという奇妙な風景が広がっている。
 安倍首相が「岩盤規制」にドリルで穴を開けると意気込み「改革断行国会」と名付けた第186回通常国会で農協はどう変わるのか、変わらないのか。
 首相は12日の施政初心表明で「戦後以来の改革」と述べ、60年ぶりの農協改革の意義を強調し、断固たる実現をぶち上げた。
 それから数日経って道庁のエレベーターで地方から出てきた農協関係者の会話が耳に入ってきた。
「あれ法案が出たら通るのか?」
「いやあ、通るさ」
「大変だな。どうなるんだ」
「今までと同じだよ。監査機関が選択になるったって同じの選ぶしょ。何か特別の問題でもなきゃ」
「へぇそうかい」
「そうだよ」
 3月に国会に提出され、4月の統一地方選挙後に審議される法案自体は、現状を大きく変えることにはならないかもしれない。
 当面の改革は、全文が明らかにされているように、政府・自民党とJAグループが合意した内容に沿ったもの以上には踏み込まないだろう。
 しかし、JAグループの反発が強かったため「痛み分け」の印象が強い半面、安倍首相が手にした「改革を断行するリーダー」という称号がもたらす影響を過小評価できないとの意見もある(東洋経済オンライン)。今回の農協法改正が突破口になって TPPに対応した農業の競争力アップを名目にした農業改革が進むことは目に見えている。特区などを設定して企業の参入を促す手法が農業の構造改革にも使われるのではないか。
 具体的な法改正の内容は、首相の施政方針演説の翌日、2月13日に開かれた農林水産業・地域の活力創造本部で「農協改革の法制度等の骨格」が示され、細かい改正の項目が検討されている。
たとえば、単位農協の理事は過半数を「認定農業者や農産物販売・経営のプロとする」ことを求める規定とか、「農協・連合会は、組合員・単位農協に事業利用を強制してはならない」あるいは地域農協の選択により、組織の一部を「株式会社や生協等に組織変更できる」といった規定が法文化される。いずれも「責任ある経営体制」とか「農業者に選ばれる農協」「地域住民へのサービス提供」などの美名が掲げられているが、協同組合の民主的な運営にお上が法律で介入する以外の何者でもない。農協の自立的発展にとって百害あって一利なしである。
 こうした協同組合への批判的かつ無理解な流れが漁業生産を基盤によって立つ沿岸地区出資漁協、業種別組合とその上部組織である都道府県や全国の連合会が集合する 漁協系統、 JFグループの行く末にどう影響するのか大変心配が募る。

月刊水産北海道 平成2015年2月号 主要記事

2015-02-18 23:50:01 | 月刊水産北海道
・平成26年 北海道漁業生産状況(速報)
ホタテ・ナマコの好調が牽引 平成11年以来の漁獲金額に
サケ・スケソウ・イカが大幅減 数量は過去最低の見込み

 道は平成26年の北海道漁業生産状況(速報値)を発表し、昨年の本道の漁業生産は、数量が対前年比5%減の約118万トン、金額は同3%増の2983億円だったことを明らかにした。
 数量は平成15年をピークに漸減傾向が続いており、26年はサケやスケソウなどの漁獲低迷の影響により過去最低となる見込み。金額は逆に上昇傾向にあり、26年はホタテ・ナマコなどの産地価格が好調を維持したことなどから、11年(3010億円)以来の好実績となりそうだ。


・26補正・27当初予算のポイント
人口減少対策・地方創生を前面に掲げた予算編成
緊急経済対策(補正)と大型当初予算で一次産業の競争力アップを

水産予算は補正と合わせ2,375億円、前年度比2割増
資源管理の推進、漁業経営安定対策に重点

 師走選挙によって予算編成の時期がズレ込み、政府は新年に入り、緊急経済対策を実施するための26年度補正予算案、27年度当初予算案を相次いで閣議決定し、1月26日召集の通常国会に提出した。
 27年度予算は96兆3千億円規模と過去最大。逆に26年度補正は3兆1千億円規模と景気対策としてはやや小ぶり。予算のテーマは、一次産業の競争力アップに重点を置いた地方経済の活性化で、アベノミクス効果の浸透、消費増税に対する景気浮揚、人口減少問題対策などをめざす。公共事業は防災・減災対策が中心で、一般公共は抑え気味の編成となっている。
 水産予算は、26補正と27当初を合わせ2375億円。前年度当初と比べ2割増。しかし、25補正+26当初(2495億円)に比べ5%減となった。水産基盤整備など公共事業も実質1割削減されている。
 非公共の目玉は、「資源管理の推進」で27当初と26補正を合わせ50億円を投じて「もうかる漁業」などを推進する。この中には、スケソウのTAC削減で窮状が予想される日本海の漁業者への経営支援も含まれ、内容が注目される。省エネ機器等導入推進事業40億円が補正で盛り込まれた。


・進むアサリの採苗・養殖技術 第2回北海道あさり勉強会
本州先進地の天然採苗、養殖技術の事例を報告
道内は浜中町、根室湾、函館湾、北斗市の取り組み紹介

 全国的に減産しているアサリの天然採苗と養殖技術をテーマにした報告会が1月15日午前10時から札幌市かでる2・7で開催され、約100人が出席して本州、北海道の取り組み事例が発表され、活発に議論を交わした。この催しは「第2回あさり勉強会」で、全国豊かな海づくり推進協会と道総研が共催した。


・平成26年度北海道磯焼け対策連絡会議
各方面で磯焼け対策研究が進行中 課題多くも着実に前進
「更なる知見の積み重ねが必要」 会議継続へ専門委員が呼びかけ

 平成26年度の北海道磯焼け対策連絡会議が1月16日午後1時30分から札幌第二水産ビル8階大会議室で開催され、道内外で磯焼け対策に取り組む試験研究者や行政関係者、水産土木関係者ら220名が参加し、「持続可能な藻場の再生」をテーマに意見を交わした。これまでの取り組みに対し着実に成果が出ている部分があると評価された一方、残された課題も多く、専門委員からは「情報共有と議論の場の存在は重要」と同会議の継続を求める声が複数あげられた。


・道漁業士称号授与式 全道青年・女性漁業者交流大会
枝幸漁協なまこ部会、広尾漁協エゾバイツブ篭漁部会、紋別漁協女性部が全国大会に
新漁業士(指導6名、青年4名)に知事から称号授与

 平成26年度北海道漁業士称号授与式と第60回全道青年・女性漁業者交流大会が1月15日午前9時30分から、札幌市の第2水産ビル8階大会議場で開催され、約250名が出席する中、新たに10名の青年・指導漁業士が認定を受けた。交流大会では9グループが活動報告を行い、資源管理資源増殖部門で「ナマコ資源を後世にー世界一のブランド「枝幸産北海キンコ」を守るためにー」を発表した枝幸漁業協同組合なまこ部会、「育て!エゾバイツブーエゾバイ増殖にかけた漁師ー」を発表した広尾漁業協同組合エゾバイツブ篭漁業部会。流通・消費拡大部門で「未来へつなぐ、オホーツクの恵みー料理って面白いー」を発表した紋別漁業協同組合女性部の3グループを2月末に東京で開催される全国大会に推薦した。

月刊水産北海道 平成2015年2月号 もくじ

2015-02-18 23:42:39 | 月刊水産北海道

今月の表紙(写真)は、「2月のイベントから」です。
1.根室市内4漁協女性部がタラ料理を提供 2.マリンちゃん定期抽選会 3.旬のニシンをさばく(お母さん料理教室) 4.春札幌中央市場初セリ(戸井の本マグロ) 5.桧山漁青連 成田直広会長(漁師さんの出前授業) 6.小樽漁青連 成田学会長(漁師さんの出前授業) 7.新成人の誓いの言葉を述べる沙留漁協の山田熙寿さん(全道漁協青年部交流大会) 8.新年の集い(三本締め大漁祈願) 9.スケソウのスープカレーを贈呈

[プロフィール]
・ A4判変型・60ページ(カラー4ページ、モノクロ56ページ)、平成27年2月15日発行

〔カラーページ〕
・ 第24回全道「JF共済」推進委員長会議
(全道キャンペーンでチョコーの純新規が着実に伸長) 27~28
・ 中国市場に道産水産物を
(道漁連が上海で「北海道の海の幸」レセプション) 33
・ スケソウのスープカレー300食を無料提供
「さっぽろ雪まつり」雪像づくりの自衛隊、市民を激励 34


〔モノクロページ〕
・ 平成26年 北海道漁業生産状況(速報)
ホタテ・ナマコの好調が牽引 平成11年以来の漁獲金額に 3
・ 平成27年度国費水産関係予算
(1,918億6千万円(98.6%)、公共840億円) 6
・ スケソウ 日本海TAC激減、窮状緩和が焦点に 10
・ 道水産会「2015新年の集い」に80人
(どんなに環境が変化しても壁を破って進もう) 13
・ 平成26年度北海道漁業士研修大会
(全道各地で活躍する漁業士121名が参加 研鑽・交流深める) 14
・ 第2回北海道あさり勉強会が盛況
(本州先進地の天然採苗、養殖技術の事例を報告) 16
・ 平成26年度北海道磯焼け対策連絡会議
(磯焼け対策研究は進行中 課題多くも着実に前進) 18
・ 平成26年度北海道ナマコ増殖研究会
(港内で稚ナマコ飼育、静穏域での養殖など新たな取り組み) 20
・ 平成26年度北海道水産土木技術研修会
(魚礁沈設時の海流の影響を学ぶ) 21
・ 全道青年・女性漁業者交流大会
(枝幸漁協なまこ部会、広尾漁協エゾバイツブ篭漁部会、紋別漁協女性部が全国大会に) 22
・ 第52回全道漁協青年部大交流会
(水産庁上田氏が講演 「魚食普及活動は実施後が大事」) 25
・ マリンちゃん定期が過去最高
(全管内で目標突破、前年上回る168億円) 26
・ イエローページ ぎょさい(道漁業共済組合) 29
・ 行政だより 35
・ 第24回全道「JF共済」推進委員長会議
全道JF共済推進協議会(3か年の初年度、目標達成でチョコー保有維持を) 36
・ 第19回「漁師さんの出前授業」
(桧山の成田直広さん・小樽の成田学さんが講師務める) 44
・ オホーツク海毛がに漁業協議会全体会議
(27年漁期は許容漁獲量1,300トンと前年と同量) 46
・ 手軽さが好評 (株)兼由のレトルトパックサンマ
(販売開始から8年 年間200万パックを出荷する定番商品に) 47
・ 連載 コンブ漁の現場から 宗谷漁協 山川憲治組合長(3) 48
・ トピックス 49
・ 知ってますか水産普及情報 55
・ 『11階の窓』 ダイヤモンド 中村慎一 56
・ 編集室から 58
・ 札幌市中央卸売市場で初セリ
(本マグロやカレイ類、ホッケ、ヤリイカなど初荷で賑わう) 59
・ あかりみらい
(省エネ設備導入に26年度補正予算、冷凍冷蔵庫・空調設備も対象) 60


〔カラー広告〕
・ 表2 チョコー全道キャンペーン(共水連)
・ 表3 まだLEDに変えてないんですか?(あかりみらい)
・ 表4 マリンマネージャー北海道(日本事務器)

[モノクロ広告]
・ 「あうんの呼吸」で暮らしを保障 JF共済 1
・ 年金の受け取りはマリンバンク 2
・ 漁業用ライフジャケット エスパーダ 東洋物産 4
・ クラストップクラスの大排気量エンジン ヤンマー舶用システム 5
・ 留萌管内漁協組合長会 45
・ 道漁業信用基金協会 49

2015年『水産北海道』2月号が出ました 輸出の勢い衰えず

2015-02-18 09:05:17 | 月刊水産北海道

 今月の表紙は、1月中に開催された催しや会合などイベント風景です。
 そこには根室のタラ販促、お母さん料理教室、マリンちゃん定期抽選会、札幌中央市場初セリ、漁師の出前授業、青年の全道交流、新年を祝う集い、スケソウPRなど、様々なシーンを飾る元気な人々が登場しています。1月は全道的に会合の多い時期で、中心の札幌をめざし浜から大勢の人々が集まってきます。年に一度の交流が春から始まる本格操業に向け、よいリフレッシュを与えてくれるのかなと思います。地域を超える交流がずっと続いているという話もよく聞きます。
 もくじで主な記事を拾ってみると、道が発表した26年の北海道漁業生産状況(速報)は、輸出商材のホタテ・ナマコが好調で、平成11年以来の漁獲金額2,983億円と前年を上回り3,000億円の大台に達する勢いです。ただし、主要魚種のサケ・スケソウ・イカは大幅減で、数量は過去最低の118万トンと120万トンの大台を割る状況に沈んでいます。
 27年度の水産関係予算は1,919億円で前年比98.6%とややマイナス。公共事業は840円で99.4%。水産庁の資料では26年度補正予算の457億円と合わせ、2,375億円を確保し、前年度比22.5%増という数字をアピールしています。しかし、これは当初予算との比較で、前年も25年度補正予算を措置しており、今や当初+補正というのが予算規模を考える時の常識になりつつあります。切れ間のない景気対策を打つために「15か月予算」で対応すると言えば格好いいが、26当初+25補正の合計2,495億円に比べ5%減、公共事業も実質1割削減というのが実情のようです。
 魚種的には、昨年の「資源管理のあり方検討会」でTACとABCの乖離是正が指摘された日本海北部スケソウが、27年度シーズンのTACを7,400トン、前年比57%に激減するという話題になっています。今シーズンは日高管内以外に沿岸のスケソウ漁は不調で、焦点となった桧山の延縄漁は1,000トンにも到達しないで、史上最低のうちに終漁しています。さて、日本海のスケソウに携わる漁業者をどう助けるか。道や業界が国に緊急対策を働きかけています。漁船漁業に対する国の構造改革事業は、沖合の大臣許可漁業は乗りやすいが、零細な沿岸漁業には使えないという状況が続いており、大胆な改善が必要な局面になっています。
 そのほか、アサリ、ナマコ、磯焼け対策、土木など栽培漁業や漁場整備の研究発表、研修会が開かれ、結構、注目すべき知見が明らかになったようです。浜の将来を支える青年・女性、漁業士たちが結集し、交流を深め、恒例の「JF共済」の全道会議なども活発に開かれました。
 そろそろ2015年の具体的なイメージを創造していく時期に来ています。輸出主導のイケイケ路線でいいのか。農協改革に代表される「協同組合」に対するマイナス評価は漁協系統に無関係なのか。そしてTPPなど貿易自由化の雪崩現象の中、一次産業は生き残っていけるのか。
 グローバル化し激変する状況に翻弄され、国内市場、消費者への対応をおろそかにすれば、墓穴を掘る恐れもあります。変化と言えば、海の環境変化に対応した漁業を構築するための構造改革は必要でしょうが、「選択と集中」の果てに誰もいなくなったという事態は絶対避けるべきでしょう。