降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★降版時間を過ぎたぞ!=活版新聞編集は楽しかったよ(12)

2013年08月09日 | 新聞

【鉛活字で組んでいた「活版」新聞編集時代のことを、後世に書き残しておこうかな、の第12回。
8月6日付の続きです。写真はイメージです】

【前回までのあらすじ】
ときは、昭和。
とある新聞社整理部は、最終版に直結するB版の降版時間だった。
24時10分。地域面と中面は降りたが、本版3ページが残り、赤字処理中。
製作局と工程委員会・印刷局は時計を睨み、怒声を上げる寸前だった。
だが、整理部は余裕のユウちゃん(←古い)。2桁10分以上の降版遅延で
「降版遅れ=厳重注意」
とする社内取り決めの間隙を突く「ロスタイム9分」を使っていた(小ずるい作戦だなあ)。
24時19分までに降版すればいいーーでも、急げっ急げっ読者が待ってるぞ整理部!(←カッコいい書き方だなあ、笑 )

▼ 24時12分。B版降版時間ロスタイムあと7分。
製作局で大ゲラを受け取った校閲担当者(面担)は、専用台で小ゲラ照合後【注・下段】必死に素読み中。
「アッ、直しもれ。温度の温の字くださいっ」
赤字を拾うため待機していた文選デスクが鉛活字棚から「温」のベタ活字を拾い、すぐに大組みに渡す。
大組み担当は校閲から出た大ゲラ赤字を見て、ピンセットで活字を差し替えた。
「あいよっ、急いで確認してくれ」
ハンコ【注・下段】の直した活字部分に黒インクでローラーをかけ、直し確認ゲラを校閲面担に素早く渡した。
赤字を確認した校閲面担は「はいっ、3面オーケー!」。

▼ 24時14分。B版降版時間ロスタイムあと5分。
校閲面担からOKが出た。
が、別階の出稿部チェックは、どうなった?
降版時間は過ぎて、既にロスタイムに入っている。
整理の僕を睨む製作局の田島デスク( ←重ねて仮称、笑)と製作工程の面々。
どうする整理部。(続く)

【小ゲラ照合後、素読み=こげらしょうごうご、すよみ】
大ゲラは、凸版広告が入った新聞1ページ大の刷り。
校閲面担は、異なるデータが流れていないか、前後はおかしくないかなど記事の流れ、エトキや見出しの確認などを、小ゲラを大刷りに重ね合わせ(照合)ながらチェックしていく。
さらに、見出しにとった個所を赤鉛筆を走らせながら再度読むのが、素読み。校閲マンは記事を3回は読んでいる(はず)。

【ハンコ=はんこ】
鉛活字と凸版で組み上げられた紙面を、こう呼んだ。「印鑑」押捺と同じだからだろうか。
紙型どり直前になると、大組み担当者は大ゲラ刷り時にのせられた黒インクを、溶解液で落としていた。



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