降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★整理部は遅れない=活版新聞編集は面白かった(11)

2013年08月06日 | 新聞

【鉛活字で組んでいた「活版」新聞編集時代のことを、後世に書き残しておこうかなシリーズ第11回。
8月3日付の続きです。写真は本文と関係ありません】

【前回までのあらすじ】
ときは、昭和。
とある新聞社整理部は、最終版に直結するB版編集のピークだった。
地域面は既に降りていたが、出稿の遅れから本版5ページがようやく組み上がり、製作局と工程委員会が大時計【注・下段】を睨んでいた。
降版時間は24時10分(←仮に、です。実際は面ごとに数分差の降版時間が設定されています)
急げっ急げっ急げっ、読者が待ってるぞ整理部!(←なんかカッコいい書き方、笑)

▼ 23時59分。B版降版時間まで、11分。
僕をはじめ5ページが大刷り機(新聞1ページ大のわら半紙ゲラを刷る器械)に並んだ。
既に、庶務さん(←学生バイトくんたち)は校閲部に電話していたので校閲面担は製作局校閲台【注・下段 】に待機していた。
大刷りゲラ10枚を刷ると同時に、校閲担当者に1枚渡し、編集局出稿部・局長・局次長らに配るため駆け上がっていった。
ーー偉いぞ、バイトくん。ここで数分稼げた!

▼ 24時06分。降版時間まで4分。
印刷局で事故る原因ともなる、5ページなだれ込み降版は避けなければならない。
出稿部チェックに2分、校閲チェックに2分と換算しても、まだ大刷りを刷っている面があるので、数ページの降版遅れは必至じゃん。
イライラする製作局デスクと、工程委員。
........ここで、整理部長が耳打ちしてくれた「アレ」を使うときが来た。

▼ 24時08分。降版時間まで、2分。
製作局・製作工程委員会との取り決めで、降版遅れとは
「2桁以上遅延したとき」
としている。
つまり、10分以上が「降版遅れ」と見なされ、翌日怒られちゃうし(笑)、後日問題になる。
整理部長自らが耳打ちしたアレとは
「ロスタイム9分を活用せよ!」
ということで、よほどのことがない限り使われなかった整理部の秘技だった(爆笑)。
早い話、解釈の間隙を突いた小ずるい作戦。だははははははははははははは。

ロスタイムを使うことで、降版時間まで11分だぜ!
いけるっ、降版遅れなしだ、整理部スペシャル。
ーーーー長くなったので、続く。

【大時計=おおどけい】
駅ホームにあるような、直径80cmほどの大きなアナログ時計。
白地に黒文字盤で、製作局、編集局の天井から複数吊り下げられていた。
ある整理部出身のミステリー作家の小説に
「新聞社の大時計は、編集局どこからでも時間が分かるよう絶妙な位置に配置されていた」
とあったので、僕は編集局をあちこち見て回って調べた。本当だった(笑)。

【校閲台=こうえつだい】
製作局フロア、大刷り機の近くに設置された、新聞1ページ大ゲラが読めるよう斜めに傾けられた紙面チェック用の台。
降版直前になると、校閲担当者は小ゲラを持ち、大刷りゲラと直しの確認、記事の流れを照合した。
直しもれなど赤字があったときは、文選デスクが待機していた簡単な文選棚で字を拾い、大組み担当者が即座に直した。


(≧∇≦)