降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★活版新聞編集は面白かった(8)....いま思えば。

2013年07月26日 | 新聞

【7月23日付の続きです。写真は本文と直接関係ありません 】

【 前回までのあらすじ】
ときは、昭和。
とある新聞社の編集局整理部、23時30分。
立ち上げ早版(仮称=A版)を終え、ケズリ【注・下段】も発生せず、地下の輪転は無事に印刷→配送に入った( と思う)。
ところがどっこい、最終版(同=C版)のベースとなるB版編集が「遅いサン」と呼ばれる出稿デスクのせいで大幅に遅れていた。
怒鳴る、われらが整理部メーンデスクとの一触即発危機を、報道部長の機転により回避し、ようやく出稿が始まった。
だが、B版降版時間まで40分を切っているーー間に合うのか、整理部!(←おおっ、思わせぶりな書き方、笑)

▼ 製作局が呼びに来たっ、こりゃ非常事態だ。
降版時間まで、35分。
われらが整理部メーンデスクは立ち上がり、全部員に言った。
「アタマだけ地紋と見出しをつけろ! 写真がつくなら2段ヨコPで出しておく! サイド・流し記事は3段6行見出しで、コッチ(デスク)で出稿する! 記事が足りなきゃ早版を使え! 降版時間が最優先だ! 分かったなっ 」
全部「!」アマダレ付き。いかに緊急事態かが分かる(笑)。

降版時間まで、30分。
「おーい、庶務さーん(←学生バイトくん)、これ出してぇ」
「おーい、こっちもだぁ」
「モニターくれぇ」
地紋、活字見出し、エトキ伝票が各面担から一斉に出され、庶務さんが走り回った。
同時に、A版社内刷り【注・下段】が数部ずつ各部に配られているが、誰も見る余裕はない。

降版時間まで、25分。
整理部メーンデスク上の、製作局とのホットライン(直通電話)が鳴った。
『製作の田島(仮名)だ。B版の大組み時間だけど、どうなってんだ? 時間分かってんのかっ』
さすがに製作局も焦ったのか、整理部へ大組み催促が来た。非常事態共有である(笑)。
どうなる整理部、製作局がお呼びだぞーー長くなったので、続く(かも )。

【ケズリ=削り】
降版後、紙型から鉛版にとり輪転に回ったら、もう赤字直しはできない。だが、誤字を見つけたら直さないと、読者に間違い紙面を出すことになる。こりゃ、まずい。
そこで、整理部の指示(上から何段目、右から何行目のナントカを3文字消せ、という伝票)に従い、印刷局スタッフが鉛版をゴシゴシ部分的に「削る」こと。
活版印刷時代の新聞で、ある部分が白くなっていたのは、読者に見られてはならない不都合があったところ(←オフセット印刷となった現在も同じ)。

【社内刷り=しゃないずり】
地下の輪転印刷工場で、インク調整用に数十部試し刷りしたもの。輪転機をガラーンと数回回すので「ガラ刷り」とも。
製作局は広告チェック、編集局は記事チェックする試し刷り新聞だが、実際は見ている時間も余裕はありません(笑)。ほとんど、早帰り製作局スタッフが持ち帰っていた。
ただし、スクープ記事組み込みのときは
「持ち禁( 持ち出し禁止)!」
の赤いハンコがドーンと大きく押され、社外持ち出しは禁じられた。
現在はサテライト印刷になり、バイク便で配達されている。


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