Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「天山の巫女ソニン 3 朱烏の星」菅野雪虫著(講談社)

2009-01-26 | 児童書・ヤングアダルト
「天山の巫女ソニン 3 朱烏(あけがらす)の星」菅野雪虫著(講談社)を読みました。
江南(かんなむ)につづき、ソニンがイウォル王子の供として向かうのは北の国・巨山(こざん)。それは国境付近で捕らえられた森の民を救うためでした。
一方、自分の将来を考え始めている親友ミンや、兄王の傍らで着実に仕事をこなすイウォル王子を見ているソニンは、自分が取り残されていくように思えてしまいます。
やがてソニンは巨山で孤独で賢明な十五歳の王女・イェラに出会います。

華やかな海沿いの南国・江南と対照的に、凍てつく空気の森の国・巨山。
発達した天文学、あたたかな室内の装い、進んだ技術。
そして暴君と思っていた「狼殺しの王」に実際に会ったときの印象の違い。
今までいろいろな経験を積み、書物でつちかってきた知識があるからこそ、ソニンもイウォル王子も冷静に公平に巨山の実力を推し量ることができたのでしょう。
実際に自分の目で見るというのは、本当に大事なことですね。

今巻では言葉をもたない森の民という少数民族が登場。
動物と言葉を話せる能力をもつ女性がいるなど、最近読んだル・グウィンの「ギフト」の高地の民をなんとなく思い出したりしました。

そして今回新登場の魅力的な人物・王女イェラ。
美しく勉強熱心で冷静で・・・そして友のいない孤独な王女。
これからどうやって成長し、女王になる道を歩んでいくのか楽しみです。

最後に、印象的だったソニンの言葉より。

「理由もなく授かった力など、同じように理由もなく失ってしまうものなのだとソニンは思いました。イルギの剣の技や、ミンや絵師の妻の商才のように、鍛錬して苦労して磨き上げた力ならば、体の一部のように身について離れないでしょう。けれど生まれついての力は、雪が消えるように、花が散るように、いつか消えてゆくのです。残るのはむしろ、<朱烏の星>の記憶のように、学んで覚えたことなのだと思いました。」

「才能がなくたって、見ることと考えることはできるのにね。人に聞くことも勉強することも。」
「そうだ、才能なんかなくたっていいんだ。もし、自分の持って生まれた、天から与えられた才能をすべてなくしたとしても、わたしは生きていける。こうして友達に相談して、自分のできることを探して。しゃべることのできない王子が、それでも人と関わって生きていけるように」

大人である私はもちろんのこと、「自分には特になんの取り柄もないけどどうしよう・・・」と、これから進学し、何の仕事に就くかを悩み考えている若い世代の人たちには、もっとこの言葉が温かく力強く感じられるのではないかと思いました。

装丁も前二巻につづいてとても素敵。今巻は雪原の景色。
第四巻も読むのが待ち遠しい~。

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