Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「九年目の魔法(上・下)」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著(浅羽莢子訳)東京創元社

2009-04-25 | 児童書・ヤングアダルト
「九年目の魔法(上・下)」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著(浅羽莢子訳)東京創元社を読みました。
何か、おかしい。
壁にかかった懐かしい「火と毒人参」という写真も、愛読したベッドの上のこの本も、おぼえてるのとはちがってる。まるで記憶が二重になってるよう。
ことの起こりはポーリィが十歳のとき。ハロウィーンの日に近くのお屋敷で葬式があり、そこに迷い込んだ彼女は、リンさんという背の高い男の人に出会います。ずっと年上なのになぜか仲良くなるふたり。
それからふたりは英雄の空想ごっこの文通をはじめますが、そのおとぎ話がどんどん現実になります。

英雄が乗る馬が欲しいといえば、ロンドンの街中で脱走した馬に出会う。
空想のなかの英雄タン・クールが仕事をしている雑貨やストウ・オン・ザ・ウォーターが実在する。
英雄に3人の友がいるといえば、リンさんがちょうどカルテットを始めようとした時期で、そのメンバーをポーリィが写真を見ただけで当てる。
そしてリンさんが前妻ローレルの母から遺贈された絵(実はポーリィが遺贈の指示がなかった絵も混ぜ込んだもの)もおとぎ話にからんできます。
中国の馬、ピエロ、遊園地。

偶然なのか?
それとも、本当にふたりが作ったお話が現実世界に影響を及ぼしたのか・・・?

そしてあることをきっかけにポーリィはリンさんのことを忘れてしまいます。
おばあちゃんも、親友だったニーナも、だれも彼をおぼえていない。
母アイビーと父が別居しおばあちゃんの家に預けられ、現実世界に居場所を感じられないポーリィ。
彼女は自分の記憶を追い求めます。
自分は孤独から話をでっちあげたのだろうか?自分の頭はおかしいのではないだろうか?ポーリィの不安。
童話仕立てになっているのに、・・・こわいです!

「now here(いま、ここ)」と「no where(どこでもないところ)」。

ここからラストのネタバレ(考察)ありますので、未読の方はご遠慮ください。

ラストが・・・私にはどうもよくわからず・・・。

「でっち上げた話が真実になり、あとで我が身にはね返る」ローレルの呪い。
でもリンさん自身は真実(モートンの生餌であること)を語ることができない。
だからポーリィに同じような内容の本を贈って、ほのめかそうとした。
でもなぜ「つくり話が真実になる」力があるのに、モートンを倒したり、自分が自由になるという物語はつくれなかったのでしょう?
「わが身にはね返る」とは、自分に都合のいいような物語を作っても、必ず自分に都合が悪くなるような要因となって戻ってくる、という意味?
その呪いを、ポーリィもあの葬式の場にいたことでリンさんと共有している?
ポーリィの放った言葉。
「もう顔も見たくない!」
それが逆にはねかえって、「ずっと顔を見れることに」なった?
・・・う~ん・・・よくわからない。もやもや。
本自体は面白かったのですが、理屈が難しかったです。

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