気候変動対策を共に――西アフリカのトーゴで森林再生プロジェクト2023年2月6日
- 創価学会とITTO、REFACOFが共同推進
気候変動の影響を強く受けている西アフリカのトーゴ共和国で、創価学会は、国際熱帯木材機関(ITTO)、「コミュニティ森林経営のためのアフリカ女性ネットワーク(REFACOF)」と共に、森林再生支援と女性のエンパワーメントのための共同プロジェクトを行っている。1月23日から25日まで創価学会の相島平和委員会議長、広報室の新井担当部長ら訪問団が、支援3年目に入って豊かな生態系が広がりつつある現地の状況を視察した。SDGs(持続可能な開発目標)に貢献する同プロジェクトの模様を紹介する。
日本からパリ経由で約28時間。トーゴで日本からの友人を迎えるあいさつは、まず「暑いでしょう!」。
「……いやあ、暑いです!」「暑いのがアフリカなんですよ!」。気候変動の影響を、じりじりと照りつける日差しで体感する。
トーゴは、他の西アフリカ諸国と同じく、多くの環境問題に直面しており、気候変動に対して最も脆弱な国の一つとされる。
世界銀行グループの気候変動に関する知識ポータルサイトによれば、2021年のトーゴの平均気温は、28・05度。1991年から1・28度も上昇している。月別にみると、2月、3月は最高気温が36度を超える。
創価学会は、国連のSDGs達成推進と気候変動対策の一環として、2020年7月、熱帯林資源の保全と持続可能な森林経営を進めるITTOと、トーゴにおける森林再生支援プロジェクトへの協力協定を締結した。
トーゴで、創価学会、ITTO、REFACOFによる森林再生支援の共同プロジェクトが始まったのは、2021年1月である。
ブリッタ県パガラガ村とラック県アグエガン村の2地域で実施されているが、今回は、アグエガン村を視察に訪れた。
首都ロメから車で東へ向かう。右手は、きらめくギニア湾。やがて左手にトーゴ湖が広がる。最後は舗装されていない赤茶色の土の道を大きく揺れながら走り続けると、約1時間半で、ようやく村にたどり着いた。
「見てください。こんなにも植生が回復しているのが、お分かりでしょう。このプロジェクトで回復した森林は、合わせて35ヘクタールにもなるんです。
共にアフリカの森を回復させ、アフリカの女性たちの生活状態を全般的に向上させたい――それが私たちの願いです」
REFACOFのセシル・ンジェベト代表が力を込める。国際会議のため訪れていたアメリカから、トーゴに駆けつけた。
農学者でもあるンジェベト代表は、森林再生およびジェンダー平等を推進するため、2009年にREFACOFを創設。現在、アフリカの20カ国で活動を展開している。
昨年、「ワンガリ・マータイ森林チャンピオン」賞を受賞。また国連で最高の環境賞とされる「チャンピオン・オブ・ジ・アース」において「インスピレーションと行動」の分野での受賞者の一人となった。
隣でほほ笑むリディア・アマ・アトゥトヌ博士は、REFACOFトーゴの中心者。プロジェクトの進展の様子を語る。
「トーゴの女性たちが、森林再生と農作物の生産を行うアグロフォレストリー(併農林業)の技術について訓練を受けることができました。創価学会のおかげで井戸も完成しました。今は、人の手で桶を引き上げますが、今後は機械で水をくみ上げる装置も設置する計画です。
私たちは、政府と地域コミュニティーの首長の支援も得て、森林再生のための土地を確保しています。そして、地域の食料安全保障とともに、農村における女性の自立や家族の生活向上を実現しているのです」
アグエガン村の森林再生地では、カヤ、タガヤサン、カマバアカシア(鎌葉アカシア)の木などの苗木を生産し、植林してきた。
この森林によって温室効果ガスを吸収することで気候変動対策になると同時に、貧困地域の女性たちの社会的地位の向上も促す。 女性たちは研修を受け、苗床生産、森林再生の技術を身につけ、生態系を傷つけないよう留意して、苗木をアグロフォレストリーの手法で植えていく。
従来のように、森を切り開いて畑をつくる手法ではなく、材木樹や果樹、農作物など多様な植物を混植することで、森林の保護・再生を支えながら商品作物を得られるようにするのが特色だ。
食用作物としては、タピオカの原料ともなりアフリカの伝統的な食用作物であるキャッサバをはじめ、トウモロコシ、落花生などを栽培。家庭の食料として、また余剰分は販売用として貢献している。
この共同プロジェクトは、気候変動による天候不順等に加え、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)や、ウクライナ危機による食料不足など、さまざまな困難な状況を乗り越え、続けられてきた。
1月23日午前、訪問団は環境・森林資源省を表敬。午後、プロジェクトを支援しているアグエガン村の首長を訪ね、感謝を伝えた。
この日、村で市場が開かれていた。日頃は人が少ないであろう広場や村の辻々も、この日ばかりはにぎやかに露店が軒を連ね、鍋など日常の生活用品や色とりどりの野菜や燻製の魚などの食品、さらに伝統の工芸品などが所狭しと並ぶ。
案内役のアマ・アトゥトヌ博士が、歩きながら、露天の快活な女性店員たちと言葉を交わす。
「あの店の女性たちの中にも、森林再生プロジェクトの参加者がいるんです」
地域コミュニティーとの協働で豊かな成果をもたらす。環境を保全すると同時に、村に生きる女性が力を得て、家族の暮らしも向上させていける――プロジェクトの意義が雄弁に示されていた。
今、気候変動対策において、大きな焦点の一つとなっているアフリカ。
池田大作先生は1960年10月、ニューヨークの国連本部を視察し、独立間もないアフリカ諸国の若き代表たちの活力あふれる姿を目の当たりにした。
トーゴの独立は、まさに、この年の4月27日であった。
先生は「21世紀はアフリカの世紀」と、輝く未来を展望した。後に、こう述べている。
「『アフリカの世紀』とは、一番苦しんだ人が、一番幸せになる世紀である」
気候変動という人類的課題を前に、アフリカの女性たちと共に踏み出した一歩は、いまだ小さいかもしれない。しかし、その一歩一歩が積み重なって、希望の大道は開かれていく。それは、持続可能な地球の未来を照らす光源となるに違いない。
私は、アフリカの森林経営のためのネットワーク「REFACOF」の創設者であり、代表を務めています。
この分野で、アフリカにおける創価学会の最初の取り組みが行われているトーゴで、皆さんとご一緒できることを大変うれしく思います。創価学会の支援のおかげで、150人の女性が恩恵を受け、今では35ヘクタールの森林を回復させることができました。女性たちは4万8000本の植林木の苗木を生産し、2万5000本を植えました。この2年間だけで、非常によく植生が回復しつつあります。
重要な点として、女性たちがアグロフォレストリー方式を選択したので、植林といくつかの農産物を組み合わせたということがあります。ここアグエガン村では、植林とともに、キャッサバやトウモロコシ、ピーナツなどを栽培しています。これは女性たちが家族の食料安全保障を向上させるのに役立ちました。キャッサバは、皆が食べますし、「ガリ」と呼ばれる粉末に加工し、余剰分を売ることで、ある程度の収入が得られるのです。
私たちREFACOFの目的は、女性の生活環境を改善すること、そして環境を改善することです。つまり、アフリカの森を、生態系を回復させ、アフリカ大陸を復興させること、そしてアフリカの女性とその家族、全ての人の生活の質を向上させること。この二つの目標があります。
これらは、全て能力開発とともに行われます。私たちは優秀な技術者を抱えており、女性たちを訓練しています。また、女性たち自身によるトレーニングも企画・実施しています。具体的には、プロジェクトが実施されている二つの村同士で、女性たちが交流し、互いの経験を交換できるように努めています。
創価学会からの継続的な協働に御礼を申し上げたい。私たちはアフリカの稀有な女性協会、女性ネットワークの一つであり、女性と共に働き、100%女性で構成されております。
重ねてご支援に感謝いたします。