ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

野毛、急な坂、黄金町、そして「朱霊たち」

2007-04-21 21:07:57 | アーツマネジメント
今日明日、21・22日は、横浜近辺は盛りだくさんの行事が行われる。

今日は、昼近くに横浜方面に向かい、まずは、桜木町の駅を下りて、野毛の大道芸。今度で33回目になるという(はじめは年1回だったが、途中から春秋2回の開催になっている)。

今回、大道芸自体はあまりゆっくり見る時間はなかったが、途中で、本日から上映開始の映画「朱霊たち」のキャンペーンを行っている舞踏ダンサーたちに遭遇。この映画の広報隊長(?)を買ってでている羽月雅人氏や同映画の監督(今回が初監督作品)の岩名雅記氏の姿を横目で見ながら野毛坂の途中にある急な坂スタジオへ。

ここでは、近所の野毛山動物園などと連動して今日明日と「坂の春まつり」という催しを行っている。急な坂スタジオのレジデントアーティストのひとりである岡田利規氏(チェルフィッチュ)の「三月の5日間」の公開リハーサルや、動物園と連携したアート・ワークショップ、フリーマーケット、夜には定例のマンスリー・アートカフェと盛りだくさん。

そのあと、京急の日の出町から歩いて黄金町の映画館「シネマ ジャック&ベティ」へ。
途中、道順がよくわからなくて少し迷ったりしたのだが、初めて訪れたこの界隈の一種独特な雰囲気にスリリングな気持ちを味わう。
まだ昼間の時間帯だったこともあってか、男女のカップルも普通に歩いているし、女の人が自転車に乗って通り過ぎたりするのだが、それでも、街のたたずまいは、のほほんと歩いていられる雰囲気とはちょっと違う。日本にいながら、どこか外国に来たような感覚がある。

シネマ ジャック&ベティは、一ヶ月ほど前から、「黄金町プロジェクト」の若者たちが映画館の運営をまかされて奮闘している。

私は「朱霊たち」の上映があるのでそれを見るために初めてここを訪れて、シネマ・ジャックとシネマ・ベティの2つのシネマ(スクリーン)があるのも今日になって知ったくらいなのだが、上映ラインナップを見るとなかなか面白そうな映画を上映している。

黄金町プロジェクトの彼らはもともと映画館の運営とは何の関わりも持っていなかったそうだ。他に仕事を持っていたのだが、映画館の運営は片手間ではできないので、仕事をやめてこれに専念しているとのこと。その覚悟があるかぎり、熱意が次第に周りの人たちに伝わり、応援してくれる人も増えるだろう。いろいろ苦労も多いとは思うががんばってほしいと思う。

映画「朱霊たち」は、今年の初めに東京・中野のポレポレ坐(私はまだ訪ねたことがない)で上映されて大いに好評を博したものという。

この映画は、フランスの南ノルマンディーに20年このかた住んでいる岩名氏が、その地の農家にセットを何杯も組んで戦後の日本の情景や風物を描くという、なんとも大胆な撮影方法を取っている。

俳優はほとんど舞踏の人たちだというが、フランス人舞踏家が日本人の役を演じていて、映画の中でもフランス語をしゃべる(そして日本人の劇中人物はそれを日本語として理解しているように演出されている)。

そこに描かれているのは、現実にはない、奇妙な日本であり、奇妙な戦後であるが、逆にこのような世界が舞踏を通した日本のイメージであろうこともまたすんなりと納得される。

この映画は、第二次世界大戦後7年後の東京(麻布)が舞台。陽光にあたることができない難病(ポリフィリン症)の人たちがとある屋敷に幽閉されるように暮らしている。そこに紛れ込んでしまった少年の目を通して、死ぬことを願いながら死ぬことを許されていないそれぞれの登場人物たちが、死ぬために生きなければならないという逆説を生きる様が、モノクロームの美しい映像で描かれる。
この映画は、舞踏にあっては、死と生は相反するものではなく同一線上にあるものであるという感覚を私たちに思い起こさせる。
あえて気取って言えば、存在していながら存在していない映画と言うものの特質と、舞踏というものの存在のあり方が、美しく、静かに共鳴している映画であると言ってよいのだろう。


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