ときどき、ドキドキ。ときどき、ふとどき。

曽田修司の備忘録&日々の発見報告集

地域総合整備事業債

2005-06-28 22:49:50 | アーツマネジメント
日曜午後のTBSテレビ「噂の東京マガジン」を何の気なしに見ていたら、「噂の現場」というコーナーで、こんな豪華施設が必要なのか、というレポートをやっていた。
ところは、群馬県新里村。つい先日(6月13日)に桐生市に合併された人口16000人ほどの村である。
その村に「ぐんま昆虫の森」という施設が全部で73億円かけて整備されたというところから始まり、そのうちの55億円が「地域総合整備事業債」による借金で建てられたものだ、ということが報告された。
この「地域総合整備事業債」というのは、総務省が指定するいろいろな事業プログラム(言わば総務省が用意したメニュー)に該当する政策を地方自治体から申請を出してそれがそのプログラムに適合する事業として認められると、自治体の起債が認められるものである。財力のない小さな地方自治体にとっては、言わば元手いらずで(注:元手はゼロではないが)ハコモノを建てることができる便利な打出の小槌だったわけである。
新里村だけでも、これまでに適用された事業が14件あり、総額は100億円を優に超えているそうだ。「昆虫の森」の他にも、「海のない群馬県に海を」というテーマで(これって「テーマ」なの?)「カリビアンビーチ」なる娯楽施設(「遊泳施設」といっているようだ)を30億円をかけてつくっている。このカリビアンビーチは、事業収支だけを見ると単年度ではなんとか黒字になっているようだが、毎年の借金返済の利息分にはとても追いつかず、年々赤字が累積している状況だとのことであった。

TBS「噂の情報マガジン」6月26日 「噂の現場」

この地方総合整備事業債(地総債)が、地方財政の巨額の赤字の元凶となったこと(正確を期せば、すべてがそうだとは言えないかもしれないが、少なくともそういう事例があること)ははっきりしている。実は、先々週と先週の授業(跡見と玉川)で、地総債を使って建てられた山形県南陽市の「ハイジアパーク」という健康保養施設の惨状について取り上げたばかりだった。(出典は河北新報の1998年の特集記事)

河北新報 検証・地域から問う公共事業 〈54〉 「危機」 理想郷の転落(Ⅱ)

地総債の申請(審査)自体は平成13年度までで終了したとのことだが、その年までに駆け込みで申請されたものは平成19年度まで支出が続く、と同番組では報告されていたように思う(細かいところまで覚えていないので正確さに欠けるかもしれない)。

ところで、同番組のレギュラー出演者である清水国明氏(もと「あのねのね」)は、自分で自然体験型施設を作って事業をやっているそうだ。その自然体験スクールのための施設は一億円ほどでできたそうで、「(ぐんま昆虫の森は)それとどこが違うの?」という疑問が他の出演者から出されていた。

もうひとつ、番組の中で、「清水さんのやっているのは、民間事業だから営利事業(=かねもうけ)、『ぐんま昆虫の森』は国のお金をつかって県がやっている事業だから非営利事業」という茶々が入っていた(悪意ではなかったが)。それに対して、清水氏が「そういう言い方はないだろう」と(ギャグっぽいしぐさではあったが)泣きそうな顔をしていた。

当然だが、営利=悪、非営利=善と図式化して考えるのは適切ではない。
まず、非営利活動を民間で事業化するという社会のしくみづくりが必要である。同じことを営利事業として提供する民間会社があればそれもよい。優れたサービスを提供する民間会社があって、それに対する需要があれば、それは民間による公益サービスである(銀行も鉄道会社も電力・ガス会社も株式会社だ)。それを行政機関にまかせきりにして、そこに税金がじゃぶじゃぶ投入される(それも多くは住民が望んだものではないのに)のを住民(納税者)がこれまでずっとほうっておいた、ということが問題だったのだ。問題は、税金の使い方を行政機関や議会にまかせておいてよいのか、ということでもある。

今回の番組の作り方は、入門編としては非常によかったと思うが、やや及び腰&ステレオタイプの印象があったので、もっと核心に迫るところまでやってほしい、という気がした。今回だけの単発で終わらせることなく、今後さらなる展開が用意されていることを期待したい。
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1 コメント

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懐かしい起債名 (小暮宣雄)
2005-07-01 06:43:00
自治省に入っていらい、この起債もいつもいらっていましたね。なくなったのか(ぼくが役人をやめるときでした。2001年はじめに自治省がなくなり総務大臣から辞職辞令をもらったのですが)。そうでしたか。
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