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「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

微分方程式論を治療に用いる

2016-09-27 23:35:20 | 心身宇宙論

ポントリャーギンの『常微分方程式』は、読んでる途中、図書館で本が盗まれたりしつつも、約1年半格闘して、どうにかこうにか読み終わるところまで来たので、それを記念してこの記事を書くことにした。



以前、微分積分学を治療に用いるという趣旨の「体の連続性と滑らかさを調べる 1」「同2」という記事を書いたが、今回はその続編のような話。なお、微分方程式は大きく分けて、常微分方程式と偏微分方程式の2種類があるが、私は偏微分方程式については知識がないので、以下この文章で微分方程式という場合、もっぱら常微分方程式のことだと思っていただきたい。

さて、微分方程式とは、ある(物理)現象が時間の経過とともにどのように変化するかを調べるのに用いられる、文字通り微分を含んだ
dx/dt=f(t,x)
のような形の方程式のことをいう。この式でtは時間、xは(時間によって変化する)現象、dx/dtはxのtによる微分(つまり、ある瞬間の現象の状態)を表している。時間で変化する現象xは時間tの関数と考えられるから、この微分方程式を解くとx=φ(t)という形の解が得られることになる。そして、この解によって未来のある時点における現象の状態を非常に正確に求めることができる。

(注)上の1文を読んで「それはおかしい。未来は確率的にしか予測できないはずだ」と思ってしまったとしたら、それは半端に量子論をかじった証。量子論が成り立つのはミクロの世界での話であり、我々の身近で局所的な範囲で働く、秩序だった物理現象の多くはニュートンの古典力学に従う。

ここで、この記事のタイトルが「微分方程式を治療に用いる」ではなく「微分方程式論を治療に用いる」となっているのに注意されたい。

微分方程式は科学の分野で広く使われていて、薬や医療機器などの開発でも恐らく何らかの形で微分方程式は用いられているはず。従って「微分方程式を治療に用いる」ことはもう既になされていているし、用いられる微分方程式もポントリャーギンの『常微分方程式』に記述されているより遥かに進んだ複雑なものだろうから、到底私などが出る幕ではない。

けれども「微分方程式“論”を治療に用いる」ことは多分、私以外の誰もやっていないだろう。だからそれを私がブログに書く意味があるのだ。

実は微分方程式論には、その基本定理と言うべきものが存在する。それが「解の存在と一意性の定理」で、微分方程式論はこの定理の上に構築されているといっていい。この定理についてザッと述べると、「ある微分方程式に対して1つの初期値を指定すると、その初期値を持つ解が必ず、そしてただ1つ存在する」というもの。

一応、「解の存在と一意性の定理」の正確な条文は以下のようになる。この条文の中の1)が「解の存在」、2)が「解の一意性」に相当する部分である。

微分方程式
dx/dt=f(t,x) (1)
において、関数f(t,x)は(t,x)-空間Rのある開集合Δ(デルタ)で定義され、関数fは導関数df/dxとともに開集合Δ全体で連続であると仮定すると、以下が成り立つ。
1)Δの任意の点(t0,x0)に対して条件φ(t0)=x0を満たす方程式(1)の解x=φ(t)が存在する。
2)もし(1)の2つの解x=φ(t)とx=ψ(t)とが少なくとも1つの値t=t0において一致すれば(すなわちφ(t0)=ψ(t0)ならば)、この2つの解は双方の定義域の共通部分において恒等的に等しい。
(注)上の条文は、正しくはをn次元のベクトル(より正確には、tをパラメータに持つn次元ベクトル関数)、n次元ベクトル関数として「微分方程式dx/dt=f(t,x)において、関数は偏導関数∂fi/∂xj(i,j=1,2,…,n)とともに開集合Δ全体で連続である」という仮定になり、それに合わせて解xφ(t)もn次元ベクトル関数の形になるが、わかりやすさのためxとfは1次元の関数の形で書いている


宇宙論にはさまざまなものがあるが、その1つに

「宇宙とはそれ自体が巨大な量子コンピュータであり、我々が現実として認識しているものは、その量子コンピュータの演算結果の1つに過ぎない」

というものがある。だとすると、この世界の現象は多かれ少なかれ微分方程式の形で記述されていると考えられる。
更に、脳という器官が宇宙の投影、あるいは擬似的な宇宙であるとすると、脳は身体の制御に微分方程式を用いているとは考えられないだろうか。

であるとするなら、身体の制御システムに何らかの異常が生じている時、そこでは微分方程式における「解の存在と一意性の定理」が成り立たなくなっている可能性がある。定理が成り立たなくなるのは、何らかの原因で

「微分方程式dx/dt=f(t,x)において、関数f(t,x)は(t,x)-空間Rのある開集合Δで定義され、関数fは導関数df/dxとともに開集合Δ全体で連続である」

という前提条件が満たされなくなるためだ。

よって、それをキネシオロジー的に調べ、その前提条件が満たされていない場合は、それが満たされるようにしなければならない。

やり方はいろいろある。一般的には通常の解剖・生理・生化学的なアプローチによって原因を探り、そこにアプローチしていく方法が用いられるだろうが、数学的にアプローチするなら、まずは以前の記事に書いたように身体の連続性、1回微分可能性、無限回微分可能性などを調べて、それを回復させる。が、それで状態が改善しない場合は微分方程式の「解の存在と一意性の定理」が成り立つように持って行くことを考える。

定理の条文をスタックの中に加えたり、それを水に波動転写して飲ませるなどの方法がスマートだが、そういうことができないなら、定理の条文を患者の体に書いてしまえ、というのも1つの手だ(一般にこの定理が成り立たなくなると影響はほぼ全身に及ぶから、書く場所はあまり気にしなくていいと思う)。


さて、ここまでの話がすんなり理解できて、これだけじゃあちょっと物足りないなーと思っている人は、更に1歩進んで解の安定性についても調べてみてはどうだろう。

これは上の一般的な微分方程式と違って、未知関数xの変化が時間経過に対して不変であるため方程式の中に時間tがあらわに含まれていない自律系(あるいは自励系)の微分方程式から求まる、解がある1点であるような平衡点や周期的に変化するような周期解を主な対象としたものである。

もともと微分方程式は初期値に対する連続性があるため、1つの初期値の十分近くに初期値を持つ解は、最初の初期値に対する解と小さな差しか持たないが、ここで言う安定性とは、初期値の差が小さければ無限に近い時間にわたって解の差も小さいままの状態が保持されることで、これを「リアプノフ(あるいはリャプーノフ)の意味で安定」という。

詳しくはポントリャーギンの『常微分方程式』第5章「安定性」などを参照されたい。


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1 コメント

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マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-06-13 04:13:34
「材料物理数学再武装」というものが最近のAIブームとあいまって注目されているようだ。もっとも微分方程式そのものではなく、それによって求まったトレードオフ関係にある関数同士を接合して極大値を作ろうというたとえると経済学でいう国富論のような問題から発展させて、今の生成AIなんかのメガトレンドのアルゴリズムであるニューラルネットワークを説明しようとするものだ。
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